マキアベリの政治思想・革新性
マキアベリの政治思想・革新性について書くとしたら、以下の程度で十分ですか?
マキアベリは徹底したリアリズムと目的合埋主義の立場に立ち,政治学を神学や倫理学から解放し,政治学の自立化と世俗化をはかった。アリストテレスに 典型的に見られるように,それまでの政治学は,倫理的な徳についての考察や「如何にして善く生きるか」という問題,あるいは「理想的な政体はどのようなものか」といった問題の考察と不可分だったが,『君主論』において、政治的な判断や行為を宗教や道徳の世界から切断し,現実主義的態度を表明した。
マキャヴェリにとって、変転つねなき現世を支配しているのは気まぐれな運命の女神であり,この運命の女神フォルトゥナ(fortuna)に対抗する 人間の自由意思が強調される。この人間の自由意思に基づく徳性こそヴィルトゥ(virtu)とよばれるもので,フォルトゥーナとは人間をとりまく状況,あるいは時勢などを意味し,ヴィルトゥとは,フォルトゥナに対抗する人間の有能さあるいは意志力を意味する。マキャヴェリのこの用法においてヴィルトゥは, 本来の「倫理的徳性」という意味は薄れ,「力」あるいは「有能さ」という意味が前面に出てくる。それを端的に示すのが「(支配者は)ライオンの力と狐の狡 知を持て」という言葉。政治においては美徳の行使は役に立たないばかりか時には有害でさえあり、逆に,目的達成のためには道徳的に悪とされる手段であって も正当化される。
マキアヴェリは、戦術論の勉強を通じて鍛えた思惟で政治を論じた。このことによって、伝統的にそれまでの戦術論において基本的価値とされてきた、
(1)古代的徳性の重視
(2)反道徳性や暴力にも訴える行動技術の重視
(3)これら道徳性と反道徳性の共存
(4)機能的・動態的・多元的なリアルな認識の重視
が、政治の世界でも生かされるようになった。