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「黄色い」「茶色い」の語源
他の人の質問に回答したのですが、疑問が残ってしまったので代わって質問いたします。 「赤い」など形容詞になるのは赤、青、白、黒、黄、茶のみのようですが、赤青白黒については日本語古来の形容詞があったためということが分かりました。 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1434071 しかし、「黄色い」「茶色い」はなぜ形容詞になるのでしょうか?またその他の色で形容詞になる色はあるでしょうか? よろしくお願いします。
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日本の古代語と色彩の問題には、わたしも非常に興味を持っています。質問者自身が別のカテゴリー(色彩)で答えていらっしゃるとおり、古代には色(というより「色合い」というべきか)を表す語は「あかし」「あおし」「しろし(しるし)」「くろし(くらし)」の4つしかなかった、というのはもはや通説とされているようです。(ここで言う古代は、漢字が入ってくる以前だというのがわたしの考えです)これらは、自然に今の「赤い」「青い」「白い」「黒い」という今の形容詞になっています。問題は「黄色」「茶色」ですね。 ところで、漢代に流行した「陰陽五行説」によれば、青・赤・(黄)・白・黒の五色が方角すなわち「東」「南」「中央」「西」「北」を意味し、また季節すなわち「春」(青春)・「夏」(赤夏)・「秋」(白秋)・「冬」(玄冬)を意味し、象徴的な動物すなわち「青龍」・「朱雀」・「白虎」・「玄武」という空想的なものを当てています。「黄」を除く4色がうまく対応しているのは、不思議といえば言えるわけです。「き」(黄)という「やまと言葉」は存在しなかったようですが、「黄」という漢字は使用されています。しかし、たとえば「記紀」では「黄泉」(よみ)、万葉では「黄葉」(もみぢ)となっていて、黄色ではないようです。しかし、「黄色」を認識していなかったかというと、そうでもない可能性があります。たとえば近年発掘された古墳時代の遺跡には、黄色い砂が敷き詰めてあったいうことです。これはあるいは、渡来人の手によって造られた可能性がありますが、その周辺の日本人も「黄」という漢字の意味するところを知った人があったでしょう。ただ、「き」(黄)という「やまと言葉」はなかったと言ったものの、万葉集の「山上憶良」の短歌「しろがねも くがねも玉も なにせむに まされる宝 子にしかめやも」という歌の「くがね」は「こがね」、「きがね」と同じと言われますから、「しろがね」「あかがね」「くろがね」と合わせ考えると「き」が金の色とされていた可能性はあります。 「黄色」に先駆けて、万葉に「むらさき」「あかね」などの色名が登場していますね。 それとは関係なく、奈良時代(「律令格式」の時代)から平安初期に掛けて官位を表すのに装束の色彩で表したようなので、色も多彩になっているようです。多分染料・顔料の発見と知識が増えたからでしょう。 ところで、「小学館 『色の手帖』」という本の中で「黄」について、 《参考》日本の色名は、古来明暗を示す語や染料・顔料または物の名による命名が多い中にあって、「黄」は例外と言える。色名に「色」をつけた形容詞「黄色い」も独特である。 とあります。また、「きいろ」が出てくるもっとも古い書物として「宇津保-吹上上『けふのかづけ物は、きいろのこうちぎかさねたる女のよそひとて』(10世紀終)他、「源氏物語」「更級日記」等が考えられます。 一方「茶色」は茶が日本に入ってきて薬湯として煎じた茶で染めた「茶染め」の色からきているわけで、出てくる古い文献は「山槐記」(1179)とあります。「茶色」という語を使っている書物は多いようですが、有名な文章には「茶色い」という言葉は使われていないように思います。有名な詩人の詩の一節に「茶色い戦争ありまして」という語句があるのを見た記憶はあるのですが、「茶色い」は近代に出来た俗っぽい言い方ではないでしょうか。 ということで、他に「~色い」というのはないかという、質問の答にはなっていませんが、「たぶん無い」というのがわたしの回答です。長々と失礼しました。
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逆に、いろいろ教えていただきありがとうございます。 >赤黒と白青は古代には色名ではなく、現代で言う「明度」と「コントラスト」なのではないかと思いました。 多分その程度のおおざっぱな分け方でしょう。ただ、わたしの考えでは、「白」「黒」のように虹の中には出てこないものは、それで済ませられますが、「赤」「青」となると「色彩」を大別したとも思えます。 なお、前にあげたように、黄を例外として色の名は染料・顔料が先行していたらしく、紅(呉藍)=紅花(末摘花)・朱=辰砂(成分は硫化水銀)・丹=水銀・茜=赤根(植物)・紫=紫草…… が早くから存在していたらしく、「茜さす」「紫の」などは万葉の歌の枕詞に使われていますね。 大野氏の説、そうかもしれませんね。白い・黒い・赤い・青いなどに習って使い始めたのでしょう。最初のご質問の意味は、これだったのですね。(^^ゞ >中部と九州の方言では「黄ない」という形容詞が存在しますが、具体的な色と言うより汚れて黄色くなったニュアンスを受けます。 「きなこ」(黄な粉)は色から来ているのでしょうが、「きな臭い」は「黄ない」と関わりがあるかも知れません。
お礼
話が脱線してしまってすみません。いろいろと考察することが出来て興味深かったです。ありがとうございました。
- UKY
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発音のこともあるでしょうが、使用頻度の方も影響が大きいと思います。例えば灰色・藍色・紺色・緋色などは日常会話でそれほど良く使うという色ではないので、形容詞化する動機が弱いと思います。 緑色・金色・銀色はメジャーな色ですが、「緑い」「金い」「銀い」では発音しづらいし、かといってわざわざ「緑色い」「金色い」「銀色い」と言わなくても単に「緑の」「金の」「銀の」といえば済んでしまうので、やはり動機が弱いです。 逆に、「黄色い」「茶色い」に関しては「黄の」「茶の」が連体修飾語として使いづらいので「黄色」「茶色」のように「色」をつけて言うようになったともいえそうです。 水色は使用頻度が高く、「水い」「水色い」のどちらも発音のしやすさ・聞き心地があまり悪くなく、しかも「水の」が「水色の」という意味の連体修飾語にならないので、形容詞化する動機は一応満たしていると思います。なぜまだ形容詞化していないかは私には分かりません。 さて、黄・茶は「黄色の」「茶色の」でも十分なのになぜ形容詞化したかというと、それは発音のしやすさ・聞き心地の問題だと思います。「しろい」「くろい」とくれば、やはり「……いろい」という形容詞を作りたくなるものではないでしょうか。「黄色い」「茶色い」は「緑色い」のように長すぎないので、さらに形容詞化しやすかったのだと思います。
補足
No.3に対するコメントで書きましたが、「黄色い」「茶色い」がもし江戸時代に江戸で作られたとするなら、江戸っ子は語感に敏感で、言いにくい言葉はしゃべらなさそうな気がしますので、使用頻度と発音のしやすさで「黄色い」「茶色い」が言われるようになったというのも、頷づけるような気がしてきました。
- patek-p
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これ、私も気になってました。 メジャーな「緑」でさえ、「みどりい」「みどりいろい」とは言わないからなあ。 だから、色のメジャーさではなく、語感で言い方が決まるのかなと思います。2音なら「い」、1音なら「色い」となり、3音以上なら「○○色の」と表現するんじゃないでしょうか。 ただ、それにしても、「なぜあの6色だけが、短い色名になったのか?」という、疑問が浮かびますが。
補足
回答ありがとうございます。せっかく答えていただいたのですが、語感で決まるという説の反例として、2音の紅(べに)色、金色、銀色、灰色、水色、藍色、紺色、1音の緋(ひ)色などがあります。いずれも形容詞にならないと思います。
補足
歴史的な考察をしたいただき、ありがとうございます。 「茶色い戦争…」は中原中也の「ブランコ」のようですね。 http://www5b.biglobe.ne.jp/~aiida/gimon9.htmlのページによると(大野晋氏の説)、「黄色い」が現れたのが江戸末から明治にかけて、「茶色い」が現れたのが江戸時代らしいです。 以下、私の推測ですが… いろいろ調べていて、赤黒と白青は古代には色名ではなく、現代で言う「明度」と「コントラスト」なのではないかと思いました。jun102さんのおっしゃった宇津保-吹上上の「きいろの」は色名(名詞)として使われていますが、ひょっとすると平安時代には「あかし」「しろし」とは言っても「あかの」「しろの」とは言わなかったのではないでしょうか?つまり、「あか」は色を表す名詞ではなく「あかさ」という程度を表す名詞で、redは紅と言っていたのでは?(「あか」が「あかさ」であるなら「あかの」では「あかさの」となり意味が違ってくる)そして、中国人が色としての「赤黒白青」という漢字を輸入してきたときに、日本人が感じた印象が「あかし」「くらし」「しるし」「あはし」だったので対応づけられたのではないでしょうか?「黄」はその概念ごと輸入したのかもしれません。「き」が金だとしても「きん」は音読みですし。 あと、関係ないかもしれませんが、中部と九州の方言では「黄ない」という形容詞が存在しますが、具体的な色と言うより汚れて黄色くなったニュアンスを受けます。 「丸い」、「四角い」とは言っても「三角い」と言わない、というのも同じような問題かもしれません。