大変すばらしい志をお持ちですね。でも、ちょっと待ってください。
日本に「サイエンスライター」という枠がどの程度あるのでしょうか。
日頃テレビを見ていても、まともな科学番組はほぼ壊滅的な状況と言えます。NHKの2、3年に一度の大型シリーズがまあ唯一と言ってもいいでしょう。他の科学番組は研究室紹介に成り果てていますし、民放に至っては妙な血液型だの健康番組だのと言った疑似科学がはびこっているという状況です。新聞も似たり寄ったりで、ほとんど研究室紹介かプレスリリースの中途半端な受け売りです。疑似科学がないだけまだましと言ったところです。
雑誌はどうでしょうか。科学雑誌の部数は年々減り続け、クォークなど有名雑誌も廃刊になりました。日経サイエンスという新顔が出ましたが、中身はScientific Americanの日本語版です。パリティあたりが頑張っていますが、マイナーすぎです。全体的に見ればほとんど壊滅的と言ってもいいでしょう。
はっきり言えば、日本にまともな「サイエンスライター」なる枠はないのです。あえていえば、柳澤桂子、中村桂子両氏がそれに該当するでしょうか。科学を扱うライターといっても、基本的には社会系ジャーナリスト畑の人間であって、例えば立花隆などは科学ジャーナリストとしても大物ですが、彼の代表作は「田中角栄研究」ですし、科学本での代表作「脳を究める」で脳を究めたと思っている脳研究者はいません。
はっきり言いましょう。日本にまともな「サイエンスライター」が住める枠などないのです。
しかし、今その枠がないからといって、それが不要であるとは思いません。むしろ、あるべきです。誰かが作るべきだと思っています。欧米では研究者がスピンオフしたサイエンスライターという枠があります。日本でもまれかが作るべきなのでしょうが、枠がない。つまり、コネがない。金がない。ノウハウがない。夢があるとか今の仕事が肌に合わないとかいう程度の理由で始めるには困難が多い道だと思います。もっとも、現状の枠で我慢できるなら別でしょうが……。
実のところ私としても、現状の科学ジャーナリズムのあまりの低質さに我慢がならず、しばらく前にgooの事務局にそういった話を持ちかけた経緯があります。まあ結局、日本的「前向きに検討する」という回答をいただき、予算などもつかず、結果として教えてgooで回答などつけてみたらどうだと勧められてみた訳ですが。私は研究者兼業でやろうと思っているのですが、しかし海外学会やら卒論指導の忙しい時期などにぶちあたると1ヶ月は身動きが取れなくなります。goo事務局ともしばらく連絡を取っていない状況です。
しかし難しいですね。単に「簡単に書く」というのと、「わかりやすく書く」、「面白く書く」というのはそれぞれ別のことです。トピックを理解し、関連研究との関係を明らかにし、科学的まともさを維持した上で面白いと思える点を抜き出し、それを十分な文筆力でもって表現するというのは、普通に論文一本書くのと同程度のスキルと労力を要します。総説的なことを書くならレビュー論文一本分、トピック一本にしぼっても普通の論文を書く半分くらいの労力はいります。論文やお売れ善に関する専門の訓練を受けていないと結構つらい気がします。
お礼
mydummyさま、貴重なご意見ありがとうございます。私の場合サイエンスライターと書いてはしまいましたが、実のところサイエンス雑誌の編集員などを通しても科学の魅力を伝えられるのではないかと感じています。そのためそういった会社をいくつか目星をつけ、機会があれば応募していきたいです。もちろんそれも非常に狭き門であると感じていますが・・。mydummyさまとは方向性が異なるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします。