「上陸」「通過」の定義は,jimjimさんの回答のとおりです。
なぜ中心の位置で決めるかというと,おそらく「明確だから」でしょう。
確かに,「台風の影響圏」が陸地にかかり,強い風雨が観測されるようになることを「上陸」と呼ぶのも一理あると思いますが,実際の台風圏内の風や雨の分布は非常に複雑で,どこまでが「台風の影響圏」と呼ぶのか難しいのです。
便宜上,風速(これは10分間の平均風速です)25メートル毎秒の範囲を「暴風域」(以前は「暴風圏」といった)と名づけて,円で表示していますが,その内側であっても風が穏やかな場所があることもあります。(逆は少ない。防災上,暴風域の半径を広めにとっているのだろうと思われます。)
また,強い雨の降っている範囲となるとさらに複雑で,渦巻上の雲の帯の真下では激しい雨,帯と帯の間では青空が見える…などということもあります。
しかし,「中心」すなわち「気圧の最も低い場所」は,雲がきれいな渦を巻いていて台風の目がはっきりしている時期なら気象衛星からの写真で明確に分かりますし,だんだん形が崩れてきても,気圧の最も低い場所は各地点の観測データなどからわりと正しく決めることができます。
また,たとえば暴風域が陸にかかった時を「上陸」と定義したとしましょう。ところが,台風は一般に,陸地に近づくと,陸地との摩擦など,地形の影響を受けて,勢力が弱まることが多いのです(弱まらないものもあるので,あなどれないのですが)。となると,「上陸」したあとに暴風圏が縮んだりして,一ヶ所に二度三度と「上陸」ということもありえます。しかし,実際に台風が行きつ戻りつしているわけではなく,全体としては一方向に進んでいるわけですから,このような「上陸」の定義は誤解を招きやすいといえましょう。
統計で「代表値」という言葉があります。ある集団全体の傾向を一つ(でなくてもいいが,少ない数)の数値で表現することです。たとえば,クラス全体の生徒の点数に対して,「最高点」とか「平均値」などはいずれも代表値です。
上に述べてきたような事情を考えると,「ある時刻の台風の位置を示す一つの代表値」としては,やはり中心の位置のほうが扱いやすいといえるでしょう。
なお,台風の正確な定義は「熱帯低気圧が,東経180度より西の北太平洋上で発達し,中心付近の最大風速が17.2メートル毎秒以上になったもの」です。前述のとおり,風速25メートル以上の範囲が「暴風域」,また15メートル以上の範囲は「強風域」といいます。したがって,暴風域のない台風もありますので念のため。
お礼
皆さん回答ありがとうございました。 たしかに「台風の端っこ」というのがはっきりしないとは思っていましたが、 中心が「上陸」することが特別な意味を持つのかと、疑問に思っていました。 puni2さんの挙げられた、「二度三度「上陸」してしまう」という例をみて、 端をもって上陸とすると、ここまで扱いにくいものかと気づきました。 ありがとうございました。