いろいろ悩みましたが、こんな例を一つ。
水分子でなぜ二つの水素は104.5度まがって酸素に付いており、他の位置ではないのか。
酸素の原子番号8つまり原子核に陽子が8個、原子状態の酸素では電子が8個、これで釣り合っています。
この電子のうち2個は内核(1S)の電子と呼ばれ、分子を作る原子間の結合には関与しません。
さて残りは6個これらの電子は互いに区別出来ません。一方、パウリの他排律という原理があり、電子は互いに「同じスピン状態を取ることが出来ない」(白色矮星の中でなら出来る)ので「原子軌道(atomic orbital)」と呼ばれる4つの軌道(オービタル)の中に他の電子と干渉しないように存在しています。
原子状態では上記のように電子の分布に方向も何もありません。ところが水素が二つ結合したとき変化が起きます。酸素の電子のうち2つがそれぞれ水素1個との結合に関与することになります。このときに元あった4つの原子軌道に異変が起きます。酸素の原子軌道のうち二つが2つの水素の原子軌道とそれぞれ「相互作用」してそれぞれ「分子軌道」となります。これが#2様の言われたsp3の混成軌道で故ライナス・ポーリング先生提唱の「分子の形を決める源」として現在も広く使われる考え方です。
典型的なsp3型はメタン分子で4つの水素が1つの炭素の周りに、炭素を重心の位置に置く正4面体(正三角が4つ)の4つの頂点として結合しています。このときH-C-Hの角度は109.47度になります。
酸素ではもとあった電子のうち4つが2つずつペアになって、2つの軌道に入り「非結合電子対」を作ります。(このときもパウリの他排律に従い二つの電子は互いに逆向きの「スピン」を持たねばならなくなります。)結果として「非結合電子対」は二つ出来ます。結果として「結合の分子軌道」二つと「非結合電子対の軌道」二つができあがります。
水の場合H-O-Hの角度がメタンより小さいのは、この「非結合電子対」が二つの水素、あるいは「結合の分子軌道」を押しのけるからだとも言われます。細かく言うときりがありませんが、このようにして一つの原子の周りの角度が決まり、原子と原子の距離が決まり、結合していない原子の間に親和力と斥力が働いて分子全体の「かたち」が決まります。
お礼
ありがとうございました!具体的でとても役に立ちました。