こんにちは。
>地球は、太陽熱エネルギーが出入りしているので、
>開放系だとよく言われますが、
そうですね、そのエネルギーの出し入れを「散逸構造」と言います。ですから、地球は外とのエネルギーのやり取りが開放されている「散逸系」ということになります。
>1.地球全体では、エントロピーは減少しているのでしょうか?
>2.自然界ではどうでしょうか?
形あるものは壊れる、と言うと正確さを欠きますが、全ての系で、あらゆるもののエントロピーは減少するというのが原理です。ですが、地球では、それと同時にエントロピーの増大も起こっています。これは、地球がエネルギーの出し入れに対して開放された散逸系であるからです。
エントロピーを増大させているのは、太陽から地球に供給されるエネルギーです。エントロピーの法則に逆行するということはあり得ないので、地球に供給されたエネルギーは全て熱に変わってしまい、二度と光エネルギーに戻すことはできません。ですが、太陽からは次々と光エネルギーが供給されます。そして、地球は消費した熱エネルギーをゴミとして宇宙に捨てます。つまり、これによって地球全体のエントロピーの総量はバランスが保たれているということになります。これが「散逸構造」ですね。そして、このエネルギーがエントロピーを増大させるメカニズムが「自己組織化」です。
自然界での太陽エネルギーの使われ方をふたつほど例に挙げます。
水は低きに流れ、元には戻りません。これは、エントロピーの法則に従って位置エネルギーを失ったということです。ですが、海に流れ込んだ水を蒸発させ、再び山の上に雨や雪を降らせるのが太陽エネルギーです。
また、生物界では、太陽エネルギーの受け入れ窓口は植物の光合成です。植物は、水を分解し、生物に必要な炭水化物を作ります。これは、水素の燃え滓であるH2Oを、太陽のエネルギーを用いて再び燃やすことのできる燃料に変えるということです。
地球の気象が太陽エネルギーと密接に関係していることは言うまでもありません。そして、それは雲を作り、雨を降らせるシステムを維持しています。このように、誰の手を借りるでもなく、自発的にこのシステムを作り、維持しているのが「自己組織化」です。
生体の主原料である水素、酸素、炭素、窒素が単独で動けるはずはありません。ですが、無数のそれらが複雑に結合し合い、終いには生命を持って動き出すというのが生物です。生物とは、散逸構造を持った複雑系に於ける究極の自己組織化現象です。そして、このような様々な自己組織化現象が地球のエントロピーを増大させています。
>3.宇宙全体ではどうでしょうか?
そうですね、まず、太陽系は閉鎖系でしょうか。
如何に自己組織化といえども、太陽が燃え尽きてしまえば地球も死んでしまいますよね。
地球と違って、太陽には新たなエネルギーを供給してくれるものはありません。ですから、太陽はやがて燃え尽きてしまいます。ですが、これは太陽系が閉鎖系であるこということではありません。太陽に隕石が衝突するならば、如何に僅かといえどもエネルギーの元が供給されたということになります。何よりも、太陽は外に向かってエネルギーを放出しています。つまり、太陽はエントロピーの収支が圧倒的に減少である為に燃え尽きるのであって、閉鎖系ではないということになります。
さて、宇宙は太陽のように外にエネルギーを放出することはできません。もちろん、流入もありません。宇宙は完全に閉鎖系です。従って、宇宙全体ではエントロピーは減少の一途ということになります。
ところで、宇宙では減少しているということなのですが、宇宙は、そのエントロピーをいったい何処に捨てているのでしょうか。外に捨てているなんて言ったらぶん殴られますよね。
現在、宇宙は物凄い速さで膨張しているのだと言われています。これは、エントロピーの法則に従うものだと思います。かたや、宇宙の質量如何では、収縮に転ずるという考えもあります。
宇宙が収縮に転ずるならば、それは拡散したエネルギーが再び濃縮されるということです。当然、エントロピーは増大します。宇宙は閉鎖系なのですから、エントロピーが増大するわけがありません。
この現象に言葉を宛がうのであれば、「相転移」と考えられると思います。物質がその状態を維持できなくなったとき、構造は変化しなければなりません。その境界が「臨界」です。そして、宇宙の重力はその鍵を握っています。
ですが、このエントロピーの増大は一時的なものです。一時的といっても、宇宙の時間のスケールは何百億年ですが、やがてはそれもエントロピーの減少に転じます。そして、再び臨界が訪れるならば相転移するかも知れません。「脈動」というのは、臨界と相転移の刳り返しによって起こります。ですから、これは「宇宙の脈動」ということになります。
重力が不十分であれば、宇宙は永遠に膨張をし続けます。ですが、エントロピーがゼロになることはありません。だから、永遠に膨張し続けるわけです。同様に、脈動も永遠に続きます。何故ならば、宇宙には外というものがなく、完全な閉鎖系で、エントロピーの総量には絶対に変化が起きないからです。
大変長くなって済みません。
後半、やや主観が混じり、不正確な部分もあるかも知れませんが、何かの参考にしていただければ有り難く思います。
お礼
>生物とは、散逸構造を持った複雑系に於ける究極の自己組 >織化現象です。そして、このような様々な自己組織化現象 >が地球のエントロピーを増大させています。 生物をこういうふうに定義してくれると とてもいろんな意味で議論しやすいです。 どうも貴重なヒントを有難うございました。 大変丁寧にお答えいただきまして、感謝です。 詳しすぎて、理解できていないところも 在るかも知れませんが、時間を掛けて、いろいろ 勉強しようと思います。