営業テクじゃなく、スタンスが問題なんです。
あなたは何かの商品なりサービスを売ることだけ考えているでしょう。
これは将棋でいうと、次の手だけを考えているということです。どこかの歩を出すか、ここが空いているから金を進めるか、みたいに考えているんです。
それ、勝てる将棋じゃないでしょう。
そうじゃなくて、ここに歩を売ったら相手は香車をとばしてくるだろう、そうしたら角でふさいで、その角は相手の銀の餌にしてくれてやろう、というように考えるのが普通の将棋です。
営業というのはそういうことだと思ってください。いま何かを売ることだけを考えていたら、だれも興味は示しません。
これが売れたらこういうことを提案しよう、売れなければこういう話にしよう、というシナリオを自分で作っていませんよね。だったら、売れない、ああだめだ、でおしまいになり、その相手との関係はそこで切れるのです。
売れなければどうする、というのは、相手が買わない理由をいくつも想像しないと対策なんか立てられません。ああ値段で言っているんだな、か、性能が不足なんだな、とか、鮮度の問題だな、というのはすべて全然違うことです。その考察をしているかどうかです。
仮に値段で問題視しているなら値引きとか、おまけをつけるとか手はいくつも考えられます。また、性能の問題なら、類似の製品の別物を提案するなり、今後の発展計画を話すなりできるはずなんです。
鮮度の問題というのは、「新しい」と「なくなってしまう」の2方面の提示があります。それが現在の最新であって他社はまだおいついていないことを説明するとか、もう在庫いくつかで売り切れるので今買わないとなくなりますよ、という話とかになるのです。
いいですか、いま私はだらだらしゃべっていますけど、こういう考察なしに営業はあり得ないのですよ。話すのが得意不得意ではなく、相手の立場で発想して自分を否定したらどうなるのか、どう出たら相手は動きやすくなるのか、を想像するのは最低必要なんです。
ぺらぺら雄弁なひとばかりが将棋の達人じゃないでしょう。
前の米長さんみたいな、ド素人でもわかる説明ができ、共感を呼べるたとえ話ができる人だけが将棋の名人じゃないんです。むっつりしていて攻撃的な中原さんなんていうのもいたのです。
営業テクなんていうくだらないことじゃなく、スタンスをはっきりさせて盤面をみるような訓練を付ける必要があるのです。