私たちが「和製英語」だと思っている言葉が実は英語でさえない、ということがあります。その右代表が「アルバイト」という言葉です。アルバイトって、英語ではありません。アメリカ人に「アルバイトを始めたよ」といっても理解してもらえないのです。英語では一般的に「パートタイム」になると思います。
ではアルバイトって何語かというと、ドイツ語です。他に「イクラ」があります。「イクラ」って日本語だと思ってたでしょ?実はロシア語で「卵」を意味するのです。「天ぷら」はポルトガル語あるいはスペイン語からきているといわれます。
アメリカ人に「コップをとって」というと、マグカップみたいなのを渡されます。「そっちじゃない。ガラスのコップだよ」というと「これはコップじゃなくてグラスだよ」と逆に怒られます。え?じゃあガラスのコップをなんでコップというのだろうかと思うと、オランダ語ではグラスのことをコップというそうですよ。つまりオランダ語からきているんですね。
戦国時代にポルトガルやスペインとの交易があって、彼らの料理をヒントに天ぷらが生まれたので天ぷらはそっちの言葉が語源となりました。江戸時代に唯一接していた西洋国がオランダだったので、グラスのことをコップと呼ぶことが広まりました。なんでアルバイトはドイツ語かというと、戦後の大学生の間ではドイツ語を使うのがなんかカッコ良かった時代があったのです。学生運動の学生が武器として使う角材を「ゲバ棒」と呼ぶのも、ドイツ語で「暴力」を意味するゲバルトが語源なのです。
現在の日本語に和製英語が多いのは、日本にとってアメリカが最も身近な外国だからです。最近じゃ「ディスる」という言葉がほぼ日本語化しましたね。元々は英語のスラングからですが、当のアメリカでは「だっちゅ~の」くらいの感じみたいです。
そして逆に日本語が他の国の言葉になっているということもあります。その右代表が「大統領」という言葉です。今は中国でも「大統領」という字を使いますが、元々は幕末に「プレジデント」の訳語として作られた言葉です。アメリカのプレジデントは日本の将軍やヨーロッパの王と違って身分で選ばれるものではありません。だから王とか帝みたいな言葉は合わない。しかも入れ札(選挙)で選ばれるのでそれまでのアジア史ではありえない国家代表なので既存の言葉では合う言葉がなかったのです。
そこで白羽の矢が立ったのが、大工や職人のリーダーを指す「頭領(棟梁)」でした。その頭領の極みだから大頭領で、それだとちょっと漢字的にカッコ悪いので「大統領」となったのです。これ本当。そしてこの表現が元祖漢字文化圏の中国人でもなんかしっくりきたので逆輸入されることになったのです。