A No.3 HALTWO 補足です。
「宣戦布告」という行為は、布告 (通告) が行われた後は「戦時国際法 (Jus In Bello)」が適用されますが、その行使には宣戦布告をして良い状態なのか否かを判断する「開戦法規 (Jus Ad Bellum)」を満たしていることが前提となります。
(1) 開戦の理由が正義に基づいていること (Just Cause)。
(2) 正当な権威が開戦の決定を下すこと (Right Authority)。
(3) 正当な目的をもって開戦を決定すること (Right Intention)。
(4) 戦争が最後の手段であること (Last Resort)。
(5) 戦争の目標が新たな平和にあること (Emergent Peace)。
(6) 目的と手段の釣合いが取れていること (Proportionality)。
……という辺りが Jus Ad Bellum の要約ですが、「宣戦布告」というのはこうした諸手続きを経て行われるものですので、実際のところ、まともに「宣戦布告」を行ってから戦争に突入した国など皆無と言って良いでしょう。……A No.4 dragon-man さんが仰るように日米太平洋戦争で宣戦布告が真珠湾攻撃開始前に間に合っていれば、戦時国際法が規定された 20 世紀初にして唯一の「合法 (国際法に則った) 戦争」となったかも知れませんでした……日本人って義理堅いですから(^_^;)。
日米太平洋戦争後の戦争は「宣戦布告」を全く行っていないわけではないのですが、先の回答で述べた通り、国家として UN に承認されていない武装勢力を相手にしていることから「宣戦布告」ができなかったものが数多くあります。
しかし、日米太平洋戦争後は国際通信網が発達して、新聞、Radio、TV 等の Media も普及した事から「○月○日までに交渉の Table に就く用意がなされなければ武力行使を開始する」という宣言を Media に公表させることで、大使館経由の正式な「宣戦布告」を行わずとも実質的な宣戦布告になっていると言えます。
「宣戦布告をしなければ必ず『侵略』とみなされる」というわけではないのですが、反撃する側は世界に「反撃 (侵略国に対する宣戦布告)」宣言を行う余裕が充分にありますので、戦後処理を承認する国際法上は宣戦布告をせずに戦争を始めた先制攻撃側に不利になりますし、宣戦布告なしに攻撃を行うと UN の制裁を受ける可能性が高くなります。
もう 1 つ「宣戦布告」が難しいのは「どの時点で戦争 (侵略) 行為と判断して宣戦布告対象とすべきか」の基準が非常に曖昧なことにあります。
国家首長級要人の暗殺や非正規武装集団による集団虐殺といった Terrorism に対する報復行動としての武力行使を「宣戦布告」によって開始して良いのか、殺人事件などないものの経済封鎖によって追い詰められた状況で「宣戦布告」して戦争を開始するのは良いのかどうか……「宣戦布告」を行ったからと言って「合法戦争」と言えるのかといった問題もあるでしょう。
先の回答で紹介した「IHL (International humanitarian law:国際人道法)」はこうした問題まで考察対象を広げて「集団暴力行使そのものが人道に対する違法行為」という考え方で提唱されるものですので既に「国家間戦争」という枠組みを超えており、「国対国の宣戦布告」とはかけ離れた領域を判断する提言ですので「国内問題に口出しするのは内政干渉だろっ!」とばかり「全てを批准するわけではない」国が多々でてくるわけです。
そもそも「戦争そのものが非人道的行為」ですので「宣戦布告」と「人道法」とは関係ありません。
お礼
ご回答ありがとうございました。