Q1.
例えば原子力潜水艦の場合、原子炉の排熱を利用して海水を沸騰させた際の水蒸気を冷却する事で得られる蒸留水を、やはり原子炉の熱を使った蒸気タービンによる発電で得られた豊富な電力を使って電気分解する事で、酸素と水素に分解し、その内の酸素の方を艦内に供給しています。
因みに、真水にする事無く、海水を直接電気分解しますと、酸素よりも先に猛毒な塩素ガスが発生してしまいますので、海水を直接電気分解している訳ではありません。
尚、原子力潜水艦とは違ってエネルギーの余裕の無い通常動力型の潜水艦の場合は、海面上の空気を取り入れる必要があり、浮上して空気を取り入れる場合もありますが、主に海面のすぐ下に潜航したままの状態で、シュノーケルという管の先端だけを海面上に突き出して、シュノーケルを通して吸い込んだ空気で(発電機に繋がっている)エンジンを駆動させて電池の充電を行うついでに、「潜航の際の重しとして使用する水タンク」の中の水を排水する際に使用する空気や、艦内の呼吸用の空気を取り入れて、空気ボンベに圧縮して貯蔵しています。
それから、血液中で酸素を運搬する役割を果たしている赤血球は、二酸化炭素濃度の高い所で酸素を放出するという性質があります。
そのため、例え空気中の酸素濃度が十分に高くても、その空気の中に二酸化炭素濃度がある程度以上高い濃度で含まれていると、赤血球が酸素と結びつく事が出来なくなるため、人間は二酸化炭素濃度が高い空気を呼吸する事が出来ません。
そのため、潜水艦内に酸素を供給するだけでは駄目で、艦内空気の中から(人間が呼気として吐きだした)二酸化炭素を取り除かなければなりません。
二酸化炭素はアルカリ性の水溶液に良く溶ける性質があるため、この事を利用して、有機アミンという化学物質のグループに分類される物質の水溶液に艦内空気の中の二酸化炭素を溶け込ませる事で、二酸化炭素を除去しています。
水酸化ナトリウム水溶液などもアルカリ性で二酸化炭素を良く溶かす事が出来るのですが、水酸化ナトリウム水溶液に溶け込んだ二酸化炭素は水酸化ナトリウムと化学反応を起こして炭酸ナトリウムとなってしまいますので、使う事が出来る水酸化ナトリウムが減ってしまいます。
これに対して有機アミンの水溶液の場合は、化学反応で生じる有機アミン炭酸塩の水溶液を加熱すると、炭酸塩が分解して水溶液中から二酸化炭素が分離するため、その二酸化炭素だけを取り出して海中に廃棄する事で、有機アミンを繰り返し使用する事が出来ます。
又その他にも、おならや汗などにはアンモニアや硫化水素、インドール、スカトール等々の悪臭物質が含まれており、これらの臭いが艦内の空気中に蓄積すると乗員の健康に悪影響を及ぼす恐れが高いため、活性炭に吸着させるなどといった方法で、艦内の空気中から除去しています。
Q2.
人間を始めとする哺乳類の目では、網膜で光を感知しています。
網膜が光を感じる際の感度は、明るい光を見ている場合と、暗い所を見ている場合では感度が大きく異なっており、明るい光を見る際には眩しくない様に感度を低くし、暗い所を見る際には暗くても見る事が出来る様に感度を高くするという事が自動的に行われています。
ところが、明るい光に目が慣れている状態から暗い所に目が慣れる様になる場合や、逆に暗い所に目が慣れている状態から明るい光に目が慣れる様になる場合には、目が慣れるまでにはある程度時間が掛ります。
夜間において潜望鏡で敵の様子を見る場合には、暗い所を見る訳ですから、目を暗さに慣らしておく必要があります。(夜間でなくとも、潜望鏡の様な望遠レンズ付きの光学機器を通して見た場合、裸眼で見るよりも見える景色が暗くなります)
艦内が明るいままでは潜望鏡から目を放している間に、目に明かりが入って暗い所が見え難くなってしまいます。
しかし艦内を真っ暗にしたのでは艦内の機器の位置も判らなくなりますから、艦の操船等の作業を行う上で支障があります。
ところで、網膜には光を感じる視細胞という細胞があるのですが、視細胞には色を識別するために使用する細胞で光に対する感度がやや悪い錐体細胞と、色を識別する事に使う事は出来ないものの光に対する感度が高い桿体細胞という2種類の細胞があります。
暗い所を見る時に使うのは桿体細胞の方ですので、桿体細胞だけを明るさに慣らさせない様にする事が出来れば、艦内を明るくしたまま、潜望鏡で敵を見る事も出来る事になります。
桿体細胞は赤い光に対しては感度が悪く、赤い光が桿体細胞に当たっても桿体細胞はあまり明るさに慣れてしまう事が少なく、暗い所に慣れたままでいます。
そこで、艦内の通常の照明を消す事で桿体細胞を暗さに慣らす様にするとともに、赤い光で艦内を照らす事で、桿体細胞が明るさに慣れてしまう事を防いだ上で、錐体細胞を使って艦内を見る事も出来る様にしている訳です。
お礼
回答ありがとうございます。