こんにちは。大学で資料組織法を教えています。
確かに,記入例の多い本はあまり見かけなくなりましたね。
昔は,日本図書館協会が自ら,標題紙や奥付のコピーとカードの実例が抱負に載った本を出したりしていたのですが。
(NCR87に従って書誌事項を書いておきます。)
日本目録規則1965年版実例集 : 岩淵泰郎編さん
東京 : 日本図書館協会, 1971
179p ; 27cm
¥2000
(標目指示は省略)
大学図書館などではもしかしたら所蔵しているかも知れません(NACSIS Webcatでみたら所蔵館数117と出ました)。
ただし,NCRの1965年版は基本記入方式ですので,現在の目録規則とは根本的な発想が違いますし,ISBD区切り記号も使われていません。
勤務予定の図書館(おめでとうございます)が,今日でも1965年版に従っているというのなら別ですが,そうでなければ,初心者は下手に見てしまうと混乱するかも知れません。
おそらく,いま学習中の目録規則は,1987年版改訂2版ですよね? だとすると,少なくとも1987年版改訂版に準拠したテキストを見るのがよいでしょう。
(改訂版と改訂2版との大きな違いは,第9章・電子資料の扱いですので,図書などに関してはほぼ同じと考えてかまいません。)
その条件を満たす本で,記入例が多いものをいくつか挙げてみましょう。
いわゆる司書課程に準拠したテキストシリーズのなかでは,
資料組織演習 : 吉田憲一編
東京 : 日本図書館協会, 1998
(JLA図書館情報学テキストシリーズ : 10)
ISBN4-8204-9725-1 : ¥1800
が比較的説明が丁寧です。しかし,標題紙や奥付のコピーは演習問題としてはたくさん出てくるのですが,解説文のところにはあまり出てきませんね。
それ以外では,
資料組織法 / 志保田務,高鷲忠美著. - 第4版
東京 : 第一法規, 2000
ISBN4-474-00603-8 : ¥2524
があります。
この本は,説明の文章についてはいささか簡潔すぎて自学自習にはあまり向かず(教室で先生が説明を補う,という使い方をするのにちょうど良い),また時には専門的だったり妙に細かいこともありますが,別冊の目録実例集が便利です。
これには,目録の実例が実際の図書の標題紙や奥付などと共に掲載されており,これがなかなか便利で現場の人に愛好者が多いようです。
(ただ,それぞれの実例について,「なぜこういう書き方をするのか」という説明はありません。)
また,
和書目録法入門 : 柴田正美編
東京 : 日本図書館協会, 1995
(図書館員選書 ; 8)
ISBN4-8204-9427-9 : 1900円
は,B6判とコンパクトな大きさながら,実際の標題紙や奥付もかなり載っており,シリーズ名の通り,現場の図書館員向けの実践的な内容が詰まっています。
これをさらに発展させ,実例を豊富にして説明も詳しくしたのが,
目録作成の技法 : 植田喜久次著
東京 : 日本図書館協会, 1992
ISBN4-8204-9209-8 : ¥2524
です。これはおすすめです!
実際に目録をとる作業をやっていて,これは悩むだろうなあ,というような例がたくさん載っており,それに対して,答えをポンと載せるだけでなく,そんなときに「どういうふうに考えて記述するか」という根拠が丁寧に説明されています。
巻末の練習問題も,すべてに回答と説明がついています。
なお,
>J-BISCは個人で買って手元に置ける値段ですか?
置けるものなら置きたいなあ。(笑)
1948-68年版が241,500円。(48年版,49年版…と分かれているわけではなく,48-68年版で一つの商品です。)
1969-83年版が378,000円。
1984-91年版が241,500円。
カレント版(1992年以降のデータを収録)はリース制で,年間契約147,000円。契約すると,年6回,新しいデータを収めたCD-ROMが届き,古いものは返します。
発売は日本図書館協会です。
なお,このほかに「J-BISC 教材版」というものもあります。
これは,J-BISCのデータのうち,1994~96年の3年分をそっくりそのまま収録したものです。
お値段は31,500円と,本物に比べるとかなり安いですが,それでも個人で買うには…
また,目録規則は「日本目録規則 新版予備版」(1977年)に準拠しているので,ISBD区切り記号は使われていません。
現在のJ-BISCでは,原則として「1987年版改訂版」を使用していますが,完全にその通りではありません。
国会図書館には「日本目録規則 1987年版 改訂版」適用細則,という独自のルールがあるのです。
たとえば,図書に関してはこちら。
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/ncr1.html
この規定をじっくり読んでいると,NCRの規定では曖昧だったり,判断に困るような事柄について,ルールを補充してあったり,注が付いていたりして,「さすがは日本中の本の目録をとっている国会図書館ならではだ」と感心させられたりします。多少専門的かも知れませんが,なかなか参考になりますので,一度ご覧下さい。
説明が長くなってしまいました。
No.3の回答者の方もおっしゃっているように,「なぜこう書くのか」と考えることが大事です。
そのためには,NCRを手元に置いて,規則本文をきちんと読んで考えるようにしましょう。
また,わからなければ,どんどん先生に(ただし目録規則に詳しそうな人に。先生によって得手不得手もありますので…)聞いてみて下さい。
勉強がんばって下さいね。
お礼
ありがとうございます。 たくさん挙げていただいて助かります。 わたしが使っているのは 資料組織演習 : 吉田憲一編 だと思います。今、手元にないので確認できませんが。 演習問題がたくさん載っているのに、解答や解説がついてないんですよね。 ひょっとして、元はついいたのに、販売の前に先生が取ってしまったんでしょうか? ところで、ご紹介いただいた本の、書名と著者名の間が:だったり/だったりしていますが、何がちがうのですか? わたしはずっと/を使うと思っていたのですが。