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イスラムの法学者
こんにちは テレビで「イスラム教の法学者」とさかんに言っていますが、 イスラムの法学者は、日本の内田貴さんや前田雅英さんのような法学者とは全く違うものなのでしょうか? イスラム法は英米法・大陸法や日本の法律などと違って直接的に宗教と密接不可分なものだと思うのですが、イスラムの法学者=聖職者という意味なのでしょうか? イスラムについては全く無知な私ですが、 仏教やキリスト教と違ってイスラム教には僧侶がいないんだと思っていました。 どなたか御教授頂ければ幸いです。
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ホメイニ師やサドル師はいずれもイスラム教の少数派であるシーア派の指導者です。シーア派のイスラム法学者には、特別な意味があります。 シーア派には主流派(スンニー派)と多少異なる点がありますが、その一つが「イマーム」という宗教指導者の存在です。 イマームはシーア派の指導者ですが、神でも預言者でもなく、本来、単なる信者の指導者という位置付けです。イスラムの教義によれば、預言者(神の言葉を預って人間に伝える使徒であり、モーゼやキリストは代表的な預言者です)は開祖ムハンマド(マホメット)をもって打ち止めとされているからです。しかし、神聖視される傾向があることは否定できず、事実上の預言者扱いされていた、と言って差支えないと思います。 イマームの地位は、第12代までは開祖ムハンマドの子孫によって継承されていましたが、当時まだ子供だった第12代イマームは、突然、人々の前から姿を消しました。誘拐され殺されたものと考えるのが自然ですが、シーア派はこれを「ガイバ」(雲隠れ)と解釈し、時がくればお隠れになったイマームが再臨するとされています。そして、指導者であるイマームの不在間は、イマームの代理として優れたイスラム法学者が信者を指導できる、としているのです。 つまり、シーア派におけるイスラム法学者は、(事実上の)預言者の代理であり、イマーム不在の時代が長く続くにつれ、今度は優れたイスラム法学者に権威が認められるようになってきたのです。ホメイニ師はシーア派の最大勢力である12イマーム派の最高位のイスラム法学者(大アヤトラ)だったので、シーア派における最高権威だったわけです。サドル師の位階は知りませんが、年齢から見ても大アヤトラやアヤトラといった高位の法学者ではないはずです。 最初に記したようにシーア派はイスラムの少数派であり、イスラム法学者の特別な地位もシーア派独特の教義に基くものです。大多数(約90%)のイスラム教徒にとっては、イスラム法学者は普通の導師・教義の研究者(学者)であって、特別な地位や権威をもつものとは考えられていません。 次にコーラン焼却の問題です。 コーランはイスラム教の聖典であり、キリスト教のバイブル、ユダヤ教のタルムードなどと同じような存在です。しかし、イスラムの教義によればムハンマドをもって預言者の系譜は途絶えたわけですから、人類は、二度と再び神の言葉を聞くことはできません。これは極めて重要な認識です。 これまで人類は度々神の教えに背いて堕落しましたが、神はそのたびに預言者を遣わして正しい道を示してくれました。しかし、もう二度と預言者は現れないのです。最後の預言者であるムハンマドの教えは、人類の最後の希望なのです。 また、ムハンマドによれば、神は美しいアラビア語でムハンマドに語りかけてきた、とされています。よって、ムハンマドの時代のアラビア語で書かれたコーランを、一字一句改変することなく、そのままの姿で後世に伝えることが極めて重要になってきます。 更に、「焼く」という行為の宗教的意味に注目する必要があります。イスラムの常識によれば、焼くことは殺すことよりも悪いことです(日本人を拘束した武装組織が、自衛隊を撤退させなければ3人を「生きたまま焼く」と宣言したことは、3人を悪魔同然の存在として、宗教上、最悪の方法で葬ると言っているのです)。 よって、ムハンマドの教えを記したコーランを破るのならまだ許せても、焼くことは絶対に許せない最大の冒涜行為と受取られるのです。
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- been
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イスラム教の特徴の一つは政教一致であり、信仰・政治・軍事・公私の生活などの全てをイスラムの教えの実践として行う宗教共同体(ウンマ)が理想の社会とされています。ここでは、生活の全てに宗教的意味を与えられ、政治も軍事も経済活動さえも、全てが宗教活動として行われるタテマエになっています。よって、イスラム社界では、聖俗の区別をする必要がありません。 また、イスラム教には、神と人間との間を取り持つ役割を担う「聖職者」は存在しません。全知全能の神に比べれば人間などは取るに足らない存在であり、多少の学識や信仰心から神と平信徒の間に立つなど、とんでもない思い上がりとされているからです。大きなモスクには専属の「導師」がいますが、これは本来、集団礼拝の動作を揃えるためのリーダーであって特別な資格は必要なく、信仰心があり、礼拝の作法を心得ていればだれでもいいのです。 ただ、この導師は信徒に教義を説明したり冠婚葬祭の司会もするので、他の宗教の聖職者と似た部分も多々あります。しかし、神と平信徒の仲立ちをしないという大原則は厳重に守られています。 イスラム法学者とは、文字通りイスラム法を研究する学者です。イスラム法は、コーラン以下のイスラムの聖典の記述なので、聖典の研究=イスラム法の研究です。よって、職務がら聖典=イスラム法の研究をしている導師はイスラム法学者でもある、ということになります。ただし、大学でイスラムを講ずる研究者など、導師でないイスラム法学者も多数存在しています。 イスラム法は、それ自体とても興味深い存在です。イスラム社会の法は全てがコーラン以下の聖典の記述に根拠を求めなければならないわけですから、例えば、道路交通法のような決まりも聖典から導き出されているわけです。聖典の記述に実生活の役に立つ部分を発見し、そこから道交法のような技術的な決まりをも導き出す「理屈」を考えるのがイスラム法学者の役割の一つというわけです。同じ「法学者」という名称で呼ばれてはいますが、その研究方法は牽強付会というか、奇想天外というか、私たちが馴染んでいる科学的な「法律学」とは全く異なる摩訶不思議な学問なのです。
お礼
早速の御回答ありがとうございます! 丁寧に書いて頂いて大変分かりやすいです。 もう一つ質問なのですが、今話題になっているサドル師(とその父親)やイランのホメイニ師という方も法学者(導師?)なのでしょうか? 政教一致という事で世俗的権威を有しているのですね。 以前北陸で、イスラム教徒が経営する中古車店に切り裂いたコーランが投げ捨てられ、イスラム教徒が激昂していましたが、彼らにとってコーランはキリスト教徒における聖書などとは比較にならないほど大切なものなんでしょうね…
- SCNK
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イスラムの法学者のことをウラマーと言います。 イスラムではシャリーアというイスラム法があります。これが社会の法秩序を形成しています。これはクルアーンを基本にしたものです。
お礼
早速の御回答ありがとうございます! ウラマー、高校の世界史か大学の講義で習ったような気がしてきました。 クルアーンというのはコーランの事でしょうか。
お礼
詳細な御回答ありがとうございます! 大変勉強になります。 大変申し訳ないのですが、最後にもう一つだけ御教授頂けますでしょうか? 世界史で「カリフ」という地位を習ったのですが、確かはじめの頃はムハンマドの縁者(正統カリフ時代?)が就いていた気がします。 (間違っていたらごめんなさい) イマームとカリフは同じ(ような)存在なのでしょうか? あと大アヤトラ・アヤトラという位階はキリスト教の聖人・福者のような存在でしょうか? 何度もすみませんが、お暇な際にでも御教授頂ければ幸いです。