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コウモリの超音波による環境認識の仕組みとその情報処理
- コウモリは超音波を利用して周囲の環境を認識しています。
- 超音波の反響によってコウモリは位置を特定することができます。
- コウモリは複数の超音波を使い、全方向の情報を正しく認識しています。
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こんにちは。 我々動物の脳には「空間認知」という機能があります。これは、自分の身体の状態や身の周りの位置関係などを頭の中に描いた「空間地図」で把握するというものです。哺乳動物では、この処理は「大脳皮質体性感覚連合野」というところで行われています。 体性感覚野には全身の体性感覚が入力されており、自分の手足の状態から身体の向きや姿勢などが常に把握されています。そして、視覚や聴覚によって得られた身の周りの情報はそれぞれの感覚野で処理されたあと、最終的にはここに送られ、それが自分の身体を中心とした三次元座標に書き込まれます。そして、我々はこの脳内地図を保持することによって身の周り360度の状況を把握し、物の距離や位置など空間認知します。 自分の耳は見えませんが、触れと言われれば触れますし、背中と壁との距離がどのくらいなのかといったことは後ろを見なくともだいたい分かります。これは何れも脳内に保持された三次元情報に基づく空間認知によるものです。身の周りの状況の変化は視覚や聴覚から得られた情報によって無意識のうちに書き換えられますし、動くものはその速度や方向によって予測補正されます。また、自分が移動したり身体の向きが変わるならば、空間座標はこれに応じて自動的に修正されます。 ですから、如何に暗闇の中を飛び回るコウモリといえども、この空間地図が一定の状態で更新、保持されるならば、常に360度に音波を出しまくって注意を払う必要はないわけです。そして、このためにコウモリが発する断続的な音波を「パルス」と言います。 目の見えないコウモリにとって聴くというのは即ち見るという行為であります。音のするものでしたら黙っていてもそれを捉えることはできますが、音のしないものを見ようとするならば、そのためには何らかの音波を発生させ、その反響を捉えるしかありません。このように、自らが音波を発することによって行われる能動的な情報の獲得を「反響定位」と言います。そして、この反響定位こそコウモリの十八番というわけです。 コウモリは断続的にパスルを発し、一定の間隔で空間情報を更新していると思われます。複数の対象物を把握する場合は交互にパルスを送ります。そして、これにより射程距離に獲物を捉えますと、今度はそれに近付きながらパルスの間隔を短くします。これは、移動する獲物の距離や速さをより細かく分析するためです。そして、いざ捕獲のときにはパルスの間隔は更に細かくなります。 このように、コウモリは反響定位のみで障害物を回避し獲物を捕らえています。では、同じように超音波を発する何万匹の群れの中で、いったいどうやって他者との情報混雑を防いでいるのでしょうか。周波数を変えるというのもできるらしいのですが、どうやら周波数ではなく、コウモリは状況に応じてパルスの長さや間隔の方を変えているらしいということです。コウモリは自分の発するパルスの組み合わせ意図的に変更することによって他者との混雑を回避しているわけですね。 超音波を使っているのは身体が小さいからかも知れませんが、周波数が高いのはそれだけ細かい情報分析ができるということですら、結果的には超音波は反響定位に適しているわけです。コウモリは器用に動く大きな耳と効率良くパルスを発するための鼻腔と口を持ち、超音波を自在に操っています。そして、やはりこの超音波を処理するコウモリの聴覚器官には他の動物には見られないような特殊な機能が幾つも発達しています。 例えば、たいへん細かい周波数を処理する機能や反響の遅れに鋭く反応する神経核。また、音源が移動しますとその速度に応じて周波数は変調します。ドップラー効果と言いますが、コウモリの聴覚野はこのドップラー効果も情報として処理しているそうです。こんな機能は恐らく他の動物にはありません。 最初に述べましたように、コウモリが暗闇の中を飛行できるのは空間認知によるものです。ですが、これに用いられる聴覚情報は決してハンパなものではありません。そこでは恐らく、正に反響定位に特化して発達した極めて巧妙な情報処理が成されているものと思います。 追:反響定位を使うのは主に小型のコウモリであり、大型のコウモリにはちゃんと視力があります。小型のコウモリは視力が弱く、目が見えないというよりは、夜行性ではほとんど役に立たないということです。
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- dsdna
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>全方向の情報を取るためにはいろんな方向に複数の超音波を出していると思うのですが、複数の超音波から得られた情報をどうやって同時に処理しているのでしょうか? 複数の超音波を出す必要がありません。ひとつで十分です。音波なので、音源から全方位に向けて発しているのでしょう。 また、返ってくるタイムラグと波長(P波とS波,縦波と横波)を処理することで、対象物までの距離と対象物の性質が分かります。 しかし、処理の仕組み、となると不明です。全てを同時に処理するのは、脳に非常に負荷がかかるため、受けた情報を選抜して、モデル化し、簡略化して、処理しているのではないでしょうか。選抜する基準は動きが早いもの(敵とか物にぶつかるとか、身にふりかかる危機レベルが高い)とか、エサになりそうなもの(食べないと死んでしまう)とか、動かないもの(休みたいときに休める)順とか。
お礼
どうもありがとうございます。効率が良い仕組みですね。
お礼
詳しい説明をありがとうございました。