まず日本はこのランキングにおいて、180ヶ国中20位以内とかなり上位にいることを前提においておく必要があります。その上での分析でないと、まったく意味を成しません。
そして「腐敗」というのがどういうもので、どういうメカニズムで起こるのかを認識しておく必要があります。
政治的な腐敗というのは
主に官僚や政治家による汚職
・政治的な闇献金
・権力による利益誘導
・立場による情報取得または操作(インサイダー情報など)
・立場を利用した賄賂要求やサボタージュ
法的機能の未整備または人為的な操作
・警察、裁判所などへの汚職
・法律自体の不平等や未整備
・法執行時の不平等やサボタージュ
監視機能の不備
・民主的な政治体系の未整備
・報道・言論機関への圧力
・政府内情報の未開示
などがあります。
そもそも権力の腐敗はそれに関わる人数によって組織自体の機能不全も該当しますので、小さな政府(小さな組織)よりも大きな政府のほうがより腐敗しやすくなります。
腐敗認識指数ランキングにおいて10位以内に入っている上位国は
・オーストラリア、カナダを除いて小さな国がほとんどであり、人口5百万人前後が多い
これは比較的政府の人数が少なく、同時に報道機関などによる監視が行き届くということを示しています。
・オーストラリア、カナダは人口は多いが人口密度が少ない、これも大きな国土の一定の場所(都市)に集中して人が住んでいるため、政府は少人数で運営し、地方自治は地方政府が担うことで人口5百万人規模の国と同じような体制を敷いているためといえます。
ですので人口1億以上ある日本と上位国の違いはまず「人口の大きさによる人数の違い」をあげることができるでしょう。そして人口が多く経済規模(GDP)が大きいいわゆる先進国の中で日本はドイツと並んで上位に入っています。
逆に日本は「なぜ順位がそれほど高くないか」について見てみます。日本の順位を上げるために必要なのは、情報の公開(政府機密などの事後公開など)、行政判断の基準の公表、監視組織の監視強化(公正取引委員会や検察などの政府系監視組織、マスコミ、NGOなどの民間監視組織)などです。
特に日本の場合、国土開発などの意思決定と予算権限が国家政府に集中している中央官僚主義の国であるといえますので、情報の開示と権力監視の強化は喫緊の課題であり、それが不可能ならドイツのように州政府に予算権限と執行権限を移して、お金が使われる現場のより近いところでの執行と監視(沖縄や北海道の開発を大手町でやっていたら、監視側も目が行き届かないし、国民も判断できない)が必要になるでしょう。
しかし日本の場合、いわゆる汚職といわれる政治家や官僚の現金授受や利益誘導は少なく、この点についてはシンクタンクと一帯になって政権交代するアメリカ合衆国のほうが汚職が深刻だといわれています。
基本的に日本がこれ以上上位に行くには、情報公開の徹底・意思決定の透明化ぐらいしかなく、それ以上を求めるなら、日本国政府を州政府単位に分解すること、国民がより身近なレベルで監視を強化することぐらいしかないのが実情といえます。
何度も書きますが5千万とか1億とかの人口がある国の政府と数百万の規模の国の政府では、様々な過程での透明性の実現のハードルの高さがまったく違うからです。
逆に小さな国でも発展途上国は汚職が深刻です。これは民度が低い(民主主義の歴史が浅い)上に、民主主義を実行できるほど教育も行き渡っておらず、さらに自国のGDPよりも大きなお金が諸外国から資金援助という形で入ってくるため、それを分け合っておいしい思いをしようというする人々が多くいるからです。
国民も自国内で産み出されるお金については注意深くなりますが、政府が受け皿となって援助を貰う方式では国民に情報開示をしなければ監視することは難しくなります。
また国民自体が生きていけるかどうかという心配をする状態では政府の監視など夢でしかないでしょう。そういう国は既得権益(階級差が大きかったり、軍事政権だったり)が大きく腐敗の温床となっています。
上位の国は、国の規模も含めて「安定的な経済活動」「税の収拾と福祉などを含めた再分配の適正化」「それを実行する政府等の情報開示」「国民の政治参加」「それを支えるマスコミなどの能力」が上手く機能しているので、汚職が少ないのです。
お礼
なるほど。ありがとうございました。