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「平成の大合併」バランスシートは?

「平成の大合併」バランスシートは?  「政府主導による『平成の大合併』が今年3月末で大きな節目を迎えたと聞きました。そもそも大合併はどのような目的で推進されたのですか。また、大合併後に分かってきたメリットとデメリットについて教えてください」=仙台市太白区の無職、大塚進治さん(69)

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  • SANKEI1
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 ■11年間で市町村半減  3月31日、総務省内に掲げられた「市町村合併支援本部」の看板が下ろされ、平成11年から11年間に及んだ大合併は幕を閉じた。  大合併は明治、昭和、平成と3回あり、明治の大合併(明治21~22年)では7万超もあった市町村が約1万5000に減少。昭和の大合併(昭和28~36年)では約1万から3分の1程度に再編され、平成の大合併でも3000以上あった市町村が1727(3月末)となった=図参照。  なぜ今回、大合併が必要だったのか。総務省は「経済成長が期待できない中、国も地方も財政が悪化した。今後の人口減と少子高齢化を前に、合併で行財政基盤を確立することが強く求められた」と説明する。  メリットは何か。総務省によると、多くの自治体がプラス効果として「財政支出の削減」や「職員の能力向上」を挙げた。平成11~18年に合併で生まれた558市町村で推計したところ、市町村長や助役、収入役、市町村議会議員が約2万1000人減り、年間約1200億円の歳出削減が図られた。また合併から10年後以降は人件費の削減などにより、年間1・8兆円の効率化が図られる見込みという。全国の市町村職員数も、ピークだった8年の155万人が2年には131万人にまで減っている。  デメリットはどうか。全国町村会が20年にまとめた調査では、自治体から「行政と住民相互の連帯が弱まった」「周辺部が衰退した」などの指摘があった。  調査に答えた自治体の幹部職員は「本庁舎がある中心部から遠い旧村では役場職員が減り、交流人口も減って活気がなくなった。過疎地の中の過疎が生じてきている」。別の自治体の幹部職員は「旧村当時、村役場は職員が39人いたが、役場が支所になると3人になってしまった。30人以上が一度に村から消えた影響は大きい」と話したという。  ■見えづらくなる農山村  大合併に参加しながら、人口減を止められない農山村の現実もある。長野県南部、中央アルプスの懐に抱かれた阿智村は、面積の9割が山林原野だ。大合併で隣接する2つの村(人口計約1400人)を相次ぎ編入したにもかかわらず、編入直後の人口約7400人が今月1日時点で6994人に減った。  岡庭一雄村長(67)によると、村は昭和31年、昭和の大合併で人口8000人となったが、過疎化で6000人に減少。42年、横浜市で自動車用マット工場を経営する村出身の男性が工場を建てた。それまでは村の男たちを出稼ぎに呼んでいたが、PTAと校長が「家庭に父親がいないと困る」と社長にかけ合い誘致した。  工場は300人を雇用、下請けを含め2000人が恩恵を受け、村の人口も長く6000人を維持したが、数年前、愛知県の大手自動車メーカーが「下請け工場の立地場所は本社から1時間圏内」との方針を打ち出したという。村は1時間半圏内だったため、工場は一部が移転していった。  岡庭村長は「主産業の温泉観光業も不況で経営が苦しい上、改装しようにも銀行は『不良産業』として融資を渋る。老舗旅館は大都市のリゾート系ファンドに買われ、格安旅館に変わっていく。周りは価格競争についていけず廃業していく」。合併で人口が一時的に増えながら、社会減が一気に進んだという。  岡庭村長は「私は昭和40年代の過疎化もこの目で見てきたが、今回の人口減は性質が異なり、先行きが全く見えない」と訴えた。  明治大学の小田切徳美教授(50)=農村政策論=によると、平成11~18年に合併で生まれた558市町村のうち、35%は阿智村のように「中山間地域」同士の合併、36%は農山村の都市への吸収合併だった。  小田切教授は「大合併の7割は農山村をめぐる合併だった。自治体の規模が大きくなり集落の数が増えた結果、集落一つ一つに目が届かず、農山村はどんどん見えづらい存在になっている」と指摘する。  5月末、大合併後に残った941町村のうち?町村長が集まり、研究会「全国小さくても輝く自治体フォーラムの会」を結成した。事務局の竹下登志成さん(61)は「国の合併推進政策が一段落したいまなお、町村は一つ一つは小さくとも全部集めるとわが国の面積の半分近くを占める。国土の環境保全に努め、小さいがゆえの住民との近さを生かした行政と地域づくりに取り組みたい」と話した。(大坪玲央)      ◇  「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。