ニッポンは人権立国になれるか―出生地主義と日本人
「日本政府は国籍の付与にあたり、従来の血統主義を廃し、公式に出生地主義を認めるべきか。」
急速な経済成長を経験した時代の日本社会では、労働力の確保を目的に、多くの外国出身者を受けいれた時代でした。さらには、国内の高等教育機関が、世界各国から多くの若者を受けいれた時代でもありました。
外国出身者を受けいれるにあたり、日本社会においては、おもに近隣諸国からの出身者などを中心に、不法滞在にかんする諸問題が噴出するようになりました。査証の期限が切れても、査証期限の延長を申請せずに、そのまま国内に居住する人々。さらには、国際結婚にかんして、国際的な結婚詐欺の問題など、政府はこれらの諸問題への対策を強く迫られました。
5年前、ある女性の存在が、日本社会において大きな議論となりました。彼女の両親は合法的に日本に入国したものの、査証の期限が切れたことから、長年にわたって不法滞在という状況で、国内に居住していました。両親が非合法的に日本に居住しているといった状況のなか、彼女は日本の地に生まれました。政府は彼女が日本籍を保持していない両親のあいだに生まれたものの、日本で生まれ育ったことや日本語を母語としていることなどを理由に、彼女が日本で合法的に滞在するための「特別な措置」をとりました。その一方で、彼女の両親にたいしては、長年にわたった不法滞在を理由に、外国への強制送還を命じました。
日本の法規、司法の「盲点」でもあった、彼女の事例においては、政府は事実上、出生地主義を認めたという、極めて珍しい事例となりました。彼女の事例は、外国出身者のみならず、外国につながる子供たちの法的地位、さらには、国籍の付与にたいする日本政府の姿勢を、大きく揺るがす出来事でした。