我が国の会社形態は商法で規定されており、
1)株式会社
2)有限会社
3)合資会社
4)合計会社
の四つです。
このうち、後2者は人的な結びつきを前提にするので人的会社と呼ばれます。
一方、前2者は、人的な要素は重要ではなく物的な結合を重視するため物的会社と呼ばれています。
ご推察のとおり、人的会社では社員の変更にいくらか要件があり難しくなっています。人的会社では家族経営の牧場や農園、小規模町工場などを想定していますから、ここに意の通じないものが会社経営に参入するのを防ぐのは至極当然の事です。
(なお社員とは会社の構成員たる社員のことです。一般用語の社員は法律用語では「従業員」で、この社員とは違うということも理解しておいてください)
しかし、株式会社・有限会社が多いのはそれが原因ではありません。
我が国の会社の9割方は小規模な会社ですから、本来人的会社として構成する方がふさわしいものです。人的会社の方が手続き上簡便でいくつかメリットがあるからです。それをわざわざ、定款で株式譲渡に制限を設けてまで、株式会社として運用しています。
では、どうしてわざわざ株式会社にしているのでしょうか。、
それは端的に「見栄」です。
あなたもおそらく合名会社、合資会社という名前を聞いて、肯定的なイメージを抱かないはずです。そのような社会的な偏見が根付いてしまったため、起業するものはみな物的会社を選択するようななってしまったというのが実情です。
もちろん、銀行のような法に明るい企業が取引する場合は、単に組織構成ではなくて財務状況などから信用力をチェックします。しかし、一般の私人や法知識のない企業と取引する場合には「株式会社」「有限会社」という組織名もしくは「代表取締役」といった肩書きが大いに影響するようです。
なお一昔前までは有限会社も今より数が少なく、ほとんどが株式会社でした。しかし、平成2年の商法改正で株式会社の最低資本金額が1千万に引き上げられたため、これを満たすことが出来ないものは有限会社へ組織変更していき、現在のような状況になっています。