No11です。質問にお答えして。
<外国人が地方参政権を持つことについて最高裁は憲法違反ではないという説を採用しています。ということは、現時点の判断は憲法に抵触しないという事ですよね。>
基本的には、その通りです。
ただし、最高裁が住民として扱いうる外国人について、判決に述べているように、その地域社会に住民とみなせる状況で暮らしていることが前提となります。
ですから、永住許可を持っていないような短期滞在者外国人に対して、納税しているからと言って、地方参政権を与えるのは違憲となるでしょう。
尚、
一般永住許可の審査基準は
(1) 素行が善良であること
(2) 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
(3) その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
となっており、外国人犯罪が増えるとか、日本の利益を害するなどの危険性を持つ外国人は排除されています。
また、『許可』である以上、永住権取得後に犯罪を起こしたり、日本の利益を害する行動を取れば、許可を取り消して国外退去させることも可能です。
ですから、ネット上で多くみられる外国人の起こす不利益は、短期滞在の外国人に多くみられるものであって、一般永住許可を持つ外国人にはほとんどありえません。(一般永住許可を持つ外国人は、一般的に言って、平均的日本人よりも、善良な市民生活を送っていると考えていいでしょう。)
日本の土地を外国人が所有することは、海外に居住している外国人にも認められており、土地所有の問題と、外国人地方参政権とは全く関係がありません。
特別永住者は、上記条件に当てはまりませんが、日本への帰化申請を出しても、なかなか認められてこなかった経緯もあり(そのため、特別永住権を持つものが60万人に増えてしまった。)、その後犯罪等の反社会的行為がない限り、日本への帰化が基本的に認められるようになったため、急激に帰化者が増えている状況にあります。
若い世代である三世・四世は、帰化していく人が多く、特別永住者の主体は帰化申請を出さないでいる一世・二世世代が中心となっていますが、高齢化で死亡数も増加しています。
ですから、特別永住者特有の問題発生は、段々と矮小化していきますし、これらの人の多い地域の関心事は、高齢化・福祉問題(特別永住者は日本人以上に高齢化が進んでいます。)で、外国人地方参政権が付与された場合、高齢化しつつある日本人と同様に、その方面での社会的要求が中心になると思われます。
<< 法務省の資料から編集したデーターが、ウィキに載っていますが、
平成08年(1996年) 55万4032人
平成09年(1997年) 54万3464人
平成10年(1998年) 53万3396人
平成11年(1999年) 52万2677人
平成12年(2000年) 51万2269人
平成13年(2001年) 50万0782人
平成14年(2002年) 48万9900人
平成15年(2003年) 47万5952人
平成16年(2004年) 46万5619人
平成17年(2005年) 45万1909人
平成18年(2006年) 44万3044人
平成19年(2007年) 43万0229人
現在の特別永住者の人口は、ピークだった1991年(約69万人)と比べ38%減の約43万人。
<地方参政権と国政参政権を同じものだとのご回答を頂いております。>
現在、憲法学者の少数意見として(割合と最近までは、多数意見でした。)、地方参政権と国政参政権を同じものだとする見解があります。
学問上は、「ありうる考え方」としてとらえていいと思います。
しかし、司法行政上は、最高裁第三小法廷平成7年2月28日の判決で、最高裁は地方参政権と国政参政権は同じではないという、現在の多数派の見解を取っていることを明らかにしていますので、それに従って運用されていくことになるでしょう。
対立する学説があったとしても、現実に問題が生じた場合、裁判所はどちらかを選択しなければ、司法判断を下せなくなります。
尚、この判決を引用して、「外国人地方参政権付与が違憲である」と言う人がいますが、判決に示されているのは「外国人に地方参政権を付与しないのは、違憲ではない。」ということです。
直感的に、この二つは同じことを言っているように、誤解する人が結構多いのですが、法律上は全く異なっています。(誤解をなくすために、わざわざ最高裁は傍論を付けています。)
<わたくし個人的は、国政参政権は国民であることが最低条件と考えます。>
No.11に記載したように、あなたがどのように考えようが、憲法改正をしない限り、国政参政権は日本国民(=日本国籍所有者)にしか許されません。
日本は成文憲法を持った法治国家です。「法」に決められたことは、法に従い、個人の考えには左右されません。
更に付け加えると、国政参政権に対する納税額や居住地による制限も違憲で、最低条件ではなく唯一の条件です。
<最後に>
純粋に法律論として解説したいのですが、「政治」というジャンルでは、政治本来の性質上、政治・法学的な分析による回答と、回答者個人の政治的見解からの回答が混在しやすく、このサイトの運営趣旨からの逸脱が起こりやすい傾向があります。
特に、「外国人地方参政権」についての質問ではこの傾向が強く、回答者としての私の政治的見解を示すことが、法律的・政治的分析を誤解されずに理解していただく助けになると感じるに至りました。
少し長くなりますが、ご容赦ください。
<外国人地方参政権に対する個人的見解>
日本国憲法は、わざわざ1章をたてて、地方自治を規定しています。
第8章地方自治:第92条から95条まで。
その最初の92条に、「地方自治の本旨に基づく」という理念が掲げられています。
(法律の構成は、一般論を先に記載し、例外を後に記載する構成になっています。地方自治においては国権に対して、地方自治の本旨に基づく例外がありうることを示しています。)
中央集権の強い現在の日本の政治体制よりも、更に中央集権の強かった戦前には、ほとんど一般の国民には認識されていなかった「地方自治の本旨」でしたが、日本国憲法成立後60年以上が経過し、相当に確立されたものとなってきています。
その本旨に従って、「地方によって大きく差のあることに対しては、地方が主体的に決定する」ということが、日本国憲法の要請なのです。
外国人地方参政権に対しても、横浜や神戸のように戦前から外国人が居住し、多くの永住・帰化外国人と一体となった独特の地域社会を数十年以上にもわたって形成・維持している地域もあれば、外国人など一人もいない古くからの日本人社会を現在も維持し続けている地域もあります。また、外国人が急増して混乱の生じている地域もあるでしょう。
このように大きく差異のある地域社会のあり方に対して、全国一律に外国人地方参政権を実施することが国民の求めていることではない反面、地域社会に長く根を下ろした永住外国人を政治参加させることが、その地域の発展につながるという地域が存在するにもかかわらず、その要請を全国一律として無視することも妥当とはいえません。
このように地方ごとに異なる状況のもとでは、未だ中央集権の傾向が強い日本では、一般化していない発想かもしれませんが、
『地方自治体自らが定めるところの条例に従って、永住外国人に地方参政権を与えることができる。』という形の外国人地方参政権法案を国会で制定するのが妥当と考えています。
このような形の規定こそが「地方自治の本旨」を規定した憲法の精神にかなうものと考えます。
そうすれば各地方自治体は、その地域住民の総意として、条例を定めずに外国人地方参政権実施を保留することも可能ですし、地方参政権を与えるにあたって、永住権を持ちかつ○○年以上継続して居住する外国人というような規定を条例に盛り込むことも可能です。
当然ながら、その地方で不都合が生じれば、条例改正も可能です。
こういう考えですから、現在ネット上で想定されているような、外国人地方参政権を全国一律に認めることも、認めないということも、それぞれの地域社会の実情を反映していないので『反対』です。
お礼
再びのご回答をありがとうございます。 sudacyu様の回答を頂き、この質問も締切ることができそうです。 法律と条例。。。ですね。。。 >地域社会の実情を反映していないので『反対』です。 というご意見に同感です。 今回、質問させて頂き、皆様からのご意見を頂き、勉強させて頂きました。 この場をお借りいたしまして、皆様方に改めてお礼を申しあげます。 ありがとうございました。 (この投稿を政治家さんが見てくれれば・・・と 思いますね!^^)