結論から先に申し上げますと、最速は4WDです。
今日の乗用車に使われている4WDの考え方は、'81年にフェルディナント・ピエヒ(ポルシェ家4代目にして現・VWアウディグループ会長)が送り出したアウディ・クーペ・クワトロをその発祥としておりますが、これはオフロードでの発進性だけを考えたモノでは無く、理論的に高速走行時の操縦性を改善する為に設計されました。
クルマとゆぅ乗物は、流体の圧力差や慣性力を利用する航空機や船舶と違い、路面~タイヤ間のハガキ大4枚分程度の面積の摩擦力だけに頼って運動する、情けない移動体です。
よってタイヤには加減速に使う前後方向の摩擦力と旋回に使う左右方向の摩擦力が期待されますが、タイヤとゆぅモノはちょっと面白い特性を持っており、摩擦力の積分値と申しますか、その総和が決まっています(これを、グリップサークル理論と言います)。
具体的に考えましょう。
今、アクセル全開で走行しているクルマがあって、カーブにさしかかってフルブレーキングしたとしましょう。
この状態ではタイヤの摩擦力のほとんどが制動に使われており、もぅ旋回の遠心力に耐える摩擦力は残っていません。つまり、フルブレーキングからハンドルを切っても真っ直ぐコースアウトするか、或いは多少摩擦力に余裕があってちょっと向きが変わったとしても、フルブレーキングのままではすぐスピンです。
これは、加速に於いても同じです。旋回から加速する時、遠心力がギリギリまでかかった状態でちょっとでも加速しようとするとホイールスピンを起こし、悪くするとその場でスピンかドリフト・アウトですね。
速く走るためには、とにかく1mでも早く前に出る必要があります。しかし上記の様な状態では、満足にアクセルを踏めません。そこで駆動力を分散し、1輪当りの駆動力の負担を減らしてやれば、それだけ高速旋回をしながら加速出来るリクツです(4WDがルールで禁止されているF1などでは、強力な駆動力を得る為に異様に太いリヤタイヤと重たいリヤ荷重を持っており、結果的にRWDのレーシングカーは異常なまでのアンダ・ステア設計となっています。これでは逆に高速コーナーで怖くて加速出来ないので、ウイング等を用いて空気の力を利用し、マトモなハンドリングとなるようにセッティングします)。
これは低馬力のクルマでも同様です。駆動力を4輪に配分すれば、その分各タイヤが大きい遠心力に耐えられる様になります。
この話は純粋な物理の理論によるモノなので、サスペンションのセッティングなどでは越えられない壁です。
4WDによる重量増とゆぅ問題は確かにありますが、ウマく設計すれば100kgf未満の増加で済みます。走行時の重量が700kgf程度のF1ではこの重量増は命取りですが、元々軽くても1000kgfほどの重量がある市販車ではガソリン残量、乗員数、トランクの荷物、エアロやドレスUPパーツ(結構重いです)、オーディオやカーナビやエアコンやサンルーフなどの『軟弱』装備の有無などによってこの程度の重量の増減はありますので、それほど問題となるとも思えません。GT-Rなどがクジラの様に巨大で重いのは4WDシステムばかりではなくその大トルクの為で、同じエンジンの2WD車を作っても、ライトウエイト・スポーツとゆぅワケにはいかないでしょう。
さて、速い/遅いとゆぅ事とスポーツカーの性能に関してですが、現代ではスポーツカー=速いクルマ、とはなっていません(今日では超速のサルーンとゆぅモノもありますが、一般的にはこれはスポーツカーとは言いません)。強いて言うなら、スポーツカー=面白いクルマ、となると思います。
それでは、どの駆動方式が一番面白いか、と申しますと、それはヒトそれぞれですが、21世紀のスポーツカーの主流はドリフトマシンではありません(フェラーリやポルシェやロータスは、どれもRWDですが今や全くハチロクの様にドリフトを維持して旋回出来ません。しかし、だからスポーツカーではない、とは言えませんね)。
世界規模での技術的な流れを見ると、最近はカミソリの様なキレで、微妙なスリップアングルを繊細なハンドル&アクセル操作で維持する、レーシングマシンの様なハンドリングの方向に向かっています。
ビスカスカップリングやシュアトラックなどの作動感が自然なLSDを持ち、アクセルを踏んで回る限りニュートラルステアとなるFWD車では、大雑把なセッティングをするとすぐドリフトマシンとなってしまうRWD車より、遥かに繊細でインテリなハンドリングが得られると言えます。高度で複雑な駆動力配分制御機構を持つ今日の4WDでは更に限界が高くなり、そして限界ギリギリを維持するのが難しいとゆぅ、安定して速い上にコントロールが難しいチャレンジしがいのあるハンドリングとなっています。
しかし勿論、これらは先に申し上げた通り、ヒトそれぞれ、好みの問題です(元々スポーツカーは面白ければ何でもアリ、が基本です)。
ワタシ個人はセッティングの幅やハンドルの操舵フィーリングの点でスポーツカーにはFR(MRではありません)が最良だと考えていますが、例えばインテグラのRやアルファ156、古くはクーパーチューンのミニなどが面白くないとは到底思えませんし、インプレッサやランエボにはそれらとは全く別の面白さがあるのも事実です。
この点は、ま、どれにお乗りになってもそれぞれの魅力がありますよ、とゆぅ事でしょうか。
お礼
めちゃ詳しい説明たいへんありがとうございます 4駆の歴史までおしえてもらって・・ タイヤの駆動力を地面に伝える方法が2駆より4駆のほうが 優れてるということが解かりやすく説明されていて 大変参考になりました きっと物理の教授<専門家>か先生なんですよね! これからはレーシングカーのようなハンドリングが主流ですか~ 楽しみな時代になってきましたね! 面白い車の理論も具体的で面白かったです またよろしくおねがいします