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177条の第三者に「賃借人」が含まれるかという問題についての考察
177条の第三者に「賃借人」が含まれるか?? まず、177条の第三者の定義はいくつかあるが、判例は「当事者及びその包括承継人以外で不動産に関する物権の得喪および変更の登記の不存在を主張する正当の利益を有する者」とし、一方で有力説(対抗問題限定説)は「問題となる物権変動と両立し得ない権利関係にたつ者」と定義づけている。 それでは、177条の第三者に「賃借人」が含まれるのだろうか??例えば、次のような場合である。 Aは所有する建物甲をBに賃貸していた。Aは甲をCに売却した。Cは未だ登記を備えておらず、Bに対して(1)賃料請求または(2)明け渡し請求を行った。Bは当然Cの登記の不備を理由に請求を拒んだが、さてここでCは登記なしに上記のような請求を為しうるのだろうか。 通説は「Cの所有権とBの賃借権は完全に両立するから、いわゆる対抗問題ではない」とし(内田 民法1 p446)、判例は単に「第三者に当たる」から登記が必要と説く。しかし、このような考え方はあまりに包括的で、もっと細分化して論理を組み立てる必要を看過しているといえる。 つまり、賃借権が対抗要件を備えているかどうか(登記されているか、借地借家法の対抗要件を備えているか)を度外視しているといわざるをえない。 賃借権が登記されていなければ、AからCへの売買によって当然には賃貸人たる地位は移転せず、A-B間の賃貸借契約は依然続いている(特約があれば別)。この時、譲受人Cにしてみれば自己の不動産がA-B間の賃貸借の目的物となっているだけで、何の負担も負わないのが当然である(債権には絶対効などない)。逆に、賃料請求も行えない。よって、CにとってのBは自己の不動産上に居座る不法占有者(無権利者)にずぎず、判例・通説どちらの定義を用いたとしても、177条の「第三者」に当たらず、Cは登記なくして明け渡し請求が可能である。Cに可能なのは債権侵害による不法行為責任と債務不履行責任の追及だけである。 賃借権が登記されていたならば、AからCへの売買によって当然に賃貸人たる地位の移転が生じる。結果、B-C間で賃貸借契約が結ばれたことになり、賃借権を否定することなど出来なくなる。では、登記なしに賃料請求は可能であろうか。この点、判例は上記のように対抗関係にたつとし、通説は本来の対抗関係ではない(「Cの所有権とBの賃借権は完全に両立するから、いわゆる対抗問題ではない」)が、賃料の二重払いを避けるために権利保護要件としての登記が必要と解す。確かに、賃料請求の場面においては「Cの所有権とBの賃借権は完全に両立するから、いわゆる対抗問題ではない」ということは可能であろうから、結果的に登記が必要だという点では共通する。 それでは、明け渡し請求の場合はどうか。この場合、明け渡しといっても新賃貸人たるCが賃借人たるBに対して明け渡せなどということは賃貸借契約によりできないはずだから(合意解除は別)、Bに出て行ってもらうには契約が期間満了かつ不更新で終了するまで待つか、Bの賃料不払いによる債務不履行を原因とした解除をするしかないであろう。そして、賃料不払いという状態が生じるには上記のように登記を備えて賃料請求できる立場にある必要にあるから、結局明け渡してもらう(債務不履行解除)には登記が必要となろう。 余談だが、178条の第三者に賃借人が含まれるかどうかについて少し述べる。 動産の賃貸借の場合、対抗要件は備えられないから、動産が第三者に譲渡された場合、賃借人は譲受人にしてみれば無権利者であり、何の負担も負わない。この結論は不動産の賃借権が対抗要件を備えていないのと結論は同じである。 畢竟、やはり賃借権が対抗要件を備えているかどうかというのは重要であると解する。 このように私は考えるのですが、どこかおかしいところがあるでしょうか。多くの基本書を読みましたが、このように分析しているものはなかったので不安におもっています。とんでもない思い込みのような気もしないではないのです。 皆様のご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします
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お礼
回答ありがとうございます。 登記の共同申請主義を看過していました。 実際問題、BがAに賃借権の登記をかけあっても、Aが了解しなければ登記は不可能。登記を請求できる判決があれば別ですが、そうでなければ所有者が進んで賃借権をつける事はまずありえない。よって、つまるところ耕作用に土地を賃借した場合などでは、登記を備えることなどできず、所有権登記のないCの明け渡し請求に甘んじる。 解決策としては、賃借権ではなく初めから永小作権を設定しておくことが考えられる。 という理解でよろしいでしょうか?? なるほど、永小作権は物権ですので大抵の場合初めに設定契約をなした場合に登記をそなえることが多いでしょうから、問題ないですね。 いやはや、考えれば考えるほど先がみえないですね。 我妻先生が「物権変動は民法の迷路」とおっしゃっていたそうですが、まさにその通りですね。 もう、この問題は切り上げたいと思います。他にもっと勉強しなければならないところが山ほどありますし。 本当に「机上の空論」だなと思います。このような疑問に長々とお付き合いいただきありがとうございました。 またよろしくお願いします。