知能は専門ではないのですが,とりあえず手持ちの資料を調べてみました.
「一般に知的能力は青年期でピークを迎え,それ以降は下がる一方」と考えられてきましたが,これは「知的能力」いわゆる知能をどう捉えているかの定義によって必ずしも,そう単純なものではないことが知能研究の間では常識となっています.
それまでの知能とは「記憶の能力や空間的な能力」簡単に言えば,知能検査で測定される知能のことを指していました.
しかし,知能検査で測定されない(測定が非常に難しい)知能というものが厳然としてあり,これは実務場面で活用される知能のことです.知能研究者のキャッテルとホーンは,知能を「流動性的知能」と「結晶的知能」の二つに分けました.
・流動性知能:基礎的な情報処理能力としての知能
例)単純な記憶,問題解決,概念形成,複雑な関係性の知覚,瞬発力が求められる学習,コンピュータのプログラミング
→ 乱暴に言えば,既存の知能検査が特に測定している知能
・結晶性知能:文化的知識としての知能
例)語彙,算術能力,社会的規範の理解,文化遺産の能力,政治的判断力,対人関係能力
このように知能には種類があり,このような区分をすれば,確かに流動性知能,つまり,一般に知能検査で測定される知能は青年期から徐々に低下していきます.
流動性知能は,青年期まで急激に上昇し,青年期をピークとし,その後緩やかに低下します.(その意味で,質問の「若い」といっても,何歳頃の若い人を指すのかによって異なると思います)
一方の結晶性知能については,同様に青年期まで急激に上昇します.その後は大きく異なり,こちらの知能の場合は,【低下しない★】といわれています.寧ろ,後者の知能は,いわゆる「経験がものをいう」知能なので,もしかすると青年期よりも上がっているかもしれません(これは自信なし).
現在では,知能を一つの指標で,つまりは一次元の物差しで測定するということは一般的ではありません.確かにビネ式知能検査は,一つのIQが算出されますが,検査者はこのたった一つのIQだけで単純に診断することの危険性を熟知しており,「○○を診断するにおいて」という条件付きで使用しています.
いまでは知能は複数の下位種類があり,総合的な・一般的な知能を論じる場合には複数の観点から知能を捉える必要があるとして,知能多次元・構造説が圧倒的優勢
となっています.今回は比較的わかりやすい,二次元説を紹介しましたが,現在ではより洗練された理論が検証されています
お礼
ご丁寧な回答有難うございます。 「40の手習い」という言葉がありますが、流動性知能が関係してくるケースが多いと捉えるなら、その言葉にはそれなりに信憑性があるということでしょうか。 またエンジニアとしての設計能力・問題解決能力なども、結晶性知能よりは流動性知能が関わってくる割合が大きいということでしょうか。