“夫は何か罪”に該当する罪状は見当たらないようです。
窃盗罪としても、処分行為は元妻が行っているし、離婚後の元妻の口座を元夫がコントロールできるわけでもないので、成立しないでしょう。横領にしても同様です。
しかし、民法の規定において
第七百三条 (不当利得の返還義務) 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
通常、“電気代、水道費”はそれらのサービスを利用した人が支払うと考えられるので、その支払いに特別の約束があれば別ですが、今回の場合元夫に支払い義務があると考えられます。
よってその部分を元妻が支払っているのは“法律上の原因”なく”財産によって利益”を受けているので、その“利益”の存在する限度での返還義務を負うでしょう。その“限度”については、離婚後の元夫の支払い義務分全額とか、時効にかかっていない支払い義務分など幾つかの考えかたがあるように思われます。
“引き落とされていることを知って”の場合は、
第七百四条 (悪意の受益者の返還義務等) 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
により、利息及び損害賠償を行う必要があるでしょう。
また、一方、元妻については
第七百五条 (債務の不存在を知ってした弁済) 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
により、自分の口座から支払われていることを認識していたら、その分について請求できないように思われます。