まず,HPLC では検出器出力を時間に対して記録する必要があります.むかしのアナログのペンレコの時代はともかく,今のようにコンピュータで記録するようになると真の意味では連続記録はできず,適当な時間間隔ごとにデータを取得することになります.これをどのくらいの頻度で行うかがサンプリングレートです.たとえば1秒に1回でサンプリングしている場合は,ピーク幅が2秒くらいしかないような場合には正確なピーク形状を記録できないのは明らかです.一方,ピーク幅が分オーダになるような場合には,数秒に1回というようなサンプリングレートでも十分だったりもします.
一方,PDA のスキャンレートは意味が違います.
PDA はいくつかの波長での吸光度を同時測定できるというようにふつうは考えていますが,実際にはそうではありません.PDAはその名の通り,光検出器であるフォトダイオードが多数並んでいます.これらの出力を同時に読み出すことは,数チャンネルくらいならともかく,現在の512chとか1024chとかの場合は,現実的ではありません.なぜなら,読み出し回路等もすべてこのチャンネル数用意しなくてはならないからです.実際には,各ダイオードの出力を順番にスイッチで切り替えて,ひとつの回路系統で時分割の形で多チャンネルデータを得ています.この,スイッチで切り替えていってすべてのダイオードの出力を読んでいくというのが「スキャン」というプロセスです.したがって,スキャンの最初と最後では読み出しのタイミングがそれなりにずれていますので,スキャン速度はサンプリングレートより十分に速くないとPDAの意味がありません.また,1回のスキャンのあと,次のスキャンをする間には,なにがしかの処理時間が挟まるのが普通です.
スキャンレートを上げるということは,1回のフォトダイオードの読み取り時間を短くすることになります.これは感度,SN比の点から不利になります.一方,スキャンレートを下げると感度やSN比の点では有利になりますが,必然的にサンプリングレートを下げざるをえないので,高速な事象に追随できなくなります.
補足
なるほど、大変よく分かりました。 ありがとうございました。 すいません、もう一点… 20Hzや80Hzの周波数は、数字が大きければ早いという事は 分かるのですが、どの様な意味の数字なのでしょうか? (1秒間の走査回数?) よろしくお願いいたします。