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核酸増幅検査におけるウイルスのコピー数について教えてください
こんにちは。 核酸増幅検査の検出感度を示す方法としてコピー数が用いられていますが、例えば10コピーとはウイルスが10個という意味でしょうか。あるいはウイルスの種類によって異なるので一概に言えないのでしょうか。 宜しくお願いいたします。
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A-Q1:そうはいえません。ウイルスの1粒子の中に同じ遺伝子は複数入っているかどうかはウイルスによって異なるのかもしれません。インフルエンザの場合は8本の遺伝子が選ばれて粒子内に入るという説が有力のようです。なので、そういうウイルスの場合で、もしもウイルス粒子のみを精製して検査したのであれば10コピー=10粒子といえるかもしれません。 A-Q2:検査対象物の中には感染細胞内のmRNA等が含まれているものもあります。また、ウイルス粒子が壊れた所謂「残骸」もあります。したがって、ウイルスがたとえ存在しなくても、壊れた後の「残骸」に含まれるDNAまたはRNA等を拾ってきた場合にコンタミ以外での陽性がでることが起こり得ます。 稚拙な説明ですみません。詳しく知っていらっしゃる先輩方が分かりやすい説明をしてくださると思いますので、こんなところで・・・。
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このサイトに出入りしている人で一番詳しいのはtunertuneさんだと思うのですが・・・ 私も原理までそれほど詳しいわけではないのですが、ちょっと回答してみます。 基本的には私もtunertuneさんと同じく、「遺伝子コピー数=ウイルス数」ではないと思います。ただ、近似的にはだいたいこんなもん、という認識はしても別に差し支えないとは思いますが。 基本的には1つのウイルス粒子の中にゲノムは1つだろうとは認識しています。また、1つのゲノムに同じ遺伝子が複数乗っているという話も聞かないですし(そのあたりをあまり気にしたことがないので知らないだけかもしれませんが)、従ってリアルタイムPCRの定量などで、あるウイルス遺伝子を1コピー検出した場合は、その遺伝子は1つのゲノムに含まれていて、そのゲノムは1つのウイルス粒子を構成している、すなわち「1コピー=1粒子」と考えるのは大まかには間違ってはいないのでは、という認識です。 ただ、現実問題として検体の細胞の中にはウイルス粒子を形成していないウイルスゲノムの断片が多量に含まれているはずですし、ウイルス粒子だけを精製しても感染性を持たない不完全な粒子が多く含まれ、その中にはPCRで検出できてしまうゲノムの断片だってたくさんあるでしょう。 ということを考慮に入れると、「1コピー=1粒子」とは言えない、と思うわけです。 それに単位の問題、つまりその1コピーなり1粒子が「どれだけあたり?」ということも考えなくてはなりません。 例えば私は今、とあるレトロウイルスをやっているのですが、血液300uLからDNAを抽出し、それをテンプレートとしてリアルタイムPCRを行ってそのウイルス遺伝子のコピー数を調べていたりするわけです。 対象はプロウイルス(感染した白血球のゲノムに組み込まれたウイルス遺伝子)なので、それこそ基本的に1感染細胞に1コピーと考えて良いはずなのですが、それでも「どれだけあたり?」と考えると話が複雑になってきます。 血液300uLからDNAを抽出して遺伝子量を定量したら100コピーという結果が出たのなら、「血液300uLあたり100個の感染白血球」と考えて良いように思われるでしょうが(私もそう思っていました)、実は血液の白血球数とDNA量(分光光度計を使って調べます)を調べると、見事に相関性がないのです。 普通に考えると血液中のDNAなんてほとんどが白血球のDNAでしょうから(DNAウイルスや細菌でウイルス血症や敗血症を起こしていない限り)、血中の白血球数とDNA量は比例するはずだと思うのですが、プロットしてグラフを描いた瞬間に相関係数を求める気にもならないくらいバラバラでした。 まあ、DNA抽出に使うキットや腕などで多少事情は異なってくるでしょうけど、本質的にDNAの抽出は含まれるDNAを一定の率で抽出できているわけではない、ということなのでしょう。 ですから、PCRの定量成績が100コピーといってもそれは「血液300uLあたり」ではないのです。 では何かというと、PCRのテンプレートにする抽出したDNAの量を分光光度計で測定して、「DNA100ngあたり100コピー」とかいう定量成績になるわけです。少なくともここまでやらないと論文をアクセプトしてもらえない雑誌が多いです。 長々と描きましたが、つまり、単位が「DNAどれだけあたり」という話になっているものを、「ウイルス粒子何個」という考え方をすること自体、もはやあまり意味がないことのように思われてしまいます。 なので例えば素人さんに説明するときに、「ここで遺伝子量を調べてみると100コピーあって、つまりこれは100個くらいのウイルスがある、ということなんですよ」と言うくらいは良いかな、と思うのですが、例えば「このウイルスは遺伝子定量成績が100コピーの試料では感染させることはできず、1000コピーの試料は感染が成立しました。従ってこのウイルスの感染限界はおよそウイルス粒子1000個だと考えられる」という論文を投稿しても突っ返されるだけかということです。 ・・・我ながらあまり判りやすい説明とも思えませんが・・・
お礼
「血液の白血球数とDNA量(分光光度計を使って調べます)を調べると、見事に相関性がないのです」の部分は特に興味を惹かれました。基本的なウイルス学を飛ばしていきなり実地(現場)で苦労しているものですから、こういったお話はとても面白く思いました。ありがとうございました。
- tunertune
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違います。 10コピーはウイルスの特定の遺伝子が10あるということだけです。 10個(単位としては変ですが。)のウイルスに必ず10コピーの遺伝子があるとは限りません。また、検査対象物のなかに検査時にウイルスが存在しないのにコピーが検出される、ということも起こりえます。
補足
アドバイスありがとうございました。追加で教えてください。 Q1.10コピーはウイルスの特定の遺伝子が10あるということであれば、以下のように理解しても良いのでしょうか。 ・特定の遺伝子を10持っているウイルスであれば、1個のウイルスが存在する。 ・特定の遺伝子を1持っているウイルスであれば、10個のウイルスが存在する。 Q2.検査対象物のなかに検査時にウイルスが存在しないのにコピーが検出されるとは、コンタミネーション以外でも発生するのでしょうか。 宜しくお願いいたします。
お礼
やはりウイルスによって遺伝子が一つとは限らない場合もあるのですね。ありがとうございました。