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宮本輝「避暑地の猫」について教えてください
- 宮本輝の「避暑地の猫」について質問です。主人公の父親が母親を殺す理由について明かされますが、それには矛盾があります。どうして父親は母親を殺してしまったのでしょうか?
- 宮本輝の「避暑地の猫」について質問です。最後に絹巻刑事が明かすところによると、主人公の父親は修平をかばって母親を殺したとされています。しかし、修平がいなくても父親は母親を殺す意図があったと推測されます。そのため、父親の行動にはどうしても疑問が残ります。
- 宮本輝の「避暑地の猫」について質問です。主人公の父親はなぜ母親を殺してしまったのでしょうか?最初は怨恨からだと思っていましたが、絹巻刑事の言葉によると、父親は修平をかばって母親を殺したとされています。しかし、この説明には矛盾があります。父親が母親を殺す意図があったのであれば、修平がいなくても殺す可能性があるからです。そのため、この点について教えていただけないでしょうか?
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こんにちは。 難しいご質問ですね(^^;。本当の理由は、著者の宮本輝さんでないと分らないところですし、読み手側としては様々に想像してみることしかできないのですが。。。正しいかどうかは別として、私なりの考えを書かせていただきます。 なぜ修平の父親は母親を殺してしまったか。ご質問者様の挙げられた理由ももちろんあるかと思いますが、「怨恨」もしくは「修平をかばう」といった、一つの理由ではないように思います。以下、父親目線で書いてみます。 まず、「怨恨」。これは、もちろんあると思います。14年間、自分をさげすみ、裏切り続けた妻への恨み。妻のみでなく、娘とまで関係を続けていた金次郎への恨み。(最初から金次郎も一緒に殺すつもりだったのでしょう。)自分たち家族をさげすみ続けた金次郎一家への恨み。また、こんな屈辱的な状況にも、お金のために耐えなければならない自分へのふがいなさ。こういった複雑な心境がベースにあったのではないかと思います。 次に「子供をかばうため」。これも、もちろんあるでしょう。修平に人殺しの肩書を負わせたくない、ということに加え、美保も守りたかったのかもしれません。娘が金次郎と関係を持ち続けていることは、父親としては耐えがたいはずで、一刻も早く金次郎との関係をやめさせたかったが、美保の将来のためにはお金は必要だった。そこで、美保にお金が渡ったことを確認してから…と考えていたのではないかと思います。 そして、これは本文中にも書かれていることですが、「底無しの虚無」。妻のことはもちろん、地下室で「蛇」となる美保に対する思い。これだけで、父親としては救いようのない気持ちになったことでしょう。そこに、希望を残していた息子まで、金次郎の夫人を殺しておきながら、毎朝平然と恋人と(表現が古いですが)逢引きしているという、薄気味悪さと理解しがたさ。息子だけは「人間」だと信じていたのに、その息子までが「畜生」であったことが分って、唯一の希望の灯が消えてしまったことに対する虚無。これが加わって、家族がみな畜生と化してしまった元凶である3人(自分・妻・金次郎)をこの世から消してしまいたかったのではないかと思います。 最後に、これは穿った見方かもしれませんが。。。お腹の子供は司法解剖の結果で分かったことですので、父親は知らなかった可能性が高いのですが、もし知っていたとして。「これ以上、畜生を増やしてはいけない。」という思いも、心の片隅にあったのかなぁ、と。(すいません。これは、完全に勝手な想像です。) 以上、長々と書いてまいりましたが、こういった理由が複雑に絡み合って、想いがくすぶり続けていたところに、修平が母親と金次郎を殺そうとしたので、最後の手を下したのではないかと思います。と言いましても、あくまでも「私はこう思った」というだけの話でして、これが正しいかどうかは分りません。もし、これを読んで「それもちょっと違うんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、その場合はご容赦ください。 しかし「避暑地の猫」は、いろいろな読み方ができておもしろいですよね。私も10年くらい前に買って、何度か読み直して上のように思っているのですが、もしかしたらまだ理解できていないのかもしれません。また読み直してみようかな、と思いました。 ご参考になれば幸いです。
お礼
ご回答ありがとうございました。 かなり突っ込んだ内容の質問だったのにもかかわらず、 丁寧に答えて下さり感謝します。 結局複雑な理由が絡み合っていたのでしょうかねぇ お腹の中の子どもや殺した真相は依然として謎のままですが、本文を 読む限りこの謎が解決することはないのかなぁと思いました。 「底無しの虚無」これも理由として成立しているでしょうね。 ああそうだった、と頷いちゃいました。 宮本輝の文学作品は、肝心な部分はわざと曖昧にしている感じがします。 それによって読み手に様々な想像を抱かせる手法を取っていると。 だから何度読んでも面白いのでしょうね。 「初めのうち熱心に医者として聞き耳を立て、やがてひとりの人間と して、久保修平の嘘か誠か判別しかねる、 告白でも懺悔でもなく、 ある種の郷愁に包まれた回想でもない、 不思議なひと夏の出来事 に、時を忘れ空腹さえも感じず、一心に 耳を傾けた」 と本文の最初の方に書かれていますが、まさにこの作品を象徴している 内容だと思いました。