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脳は複雑な情報をどのように処理するのですか?
脳神経(ニューロン)はどのように複雑な情報を処理するのでしょうか? やはり単純化しているのでしょうか?なかなか分かりやすい資料がないので、簡単に説明していただければ幸いです。
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- ruehas
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こんにちは。 質問者さんのお知りになりたいことは、現在までに解明されている「視覚情報の処理」に就いて簡単にご説明を差し上げますならば、その幾つかに整理が付けられると思います。 視覚処理のメカニズムといいますのは多くの哺乳動物に共通の生得的な機能でありまして、このため、動物実験などによって早くから解剖学的にも比較的詳細な解明が成されています。そして、我々の脳内におけるこの視覚情報の処理システムといいますのは、質問者さんの仰る、正に「情報の単純化」のモデルのようなものです。 視覚情報といいますのは視覚受容器から視覚神経、一次視覚野、二次視覚野といった順で階層的に処理されてゆきます。この大脳皮質の入り口に当たります「視覚野」には、色や形といった特定の視覚情報に対して「選択的反応特性」を持つコラム(細胞集団)が無数に配列されています。「選択的反応特性」といいますのは、そのコラムは自分の受け持ち以外の色や図形パターンには反応しないということです。 例えば一次視覚野には「縦線」「横線」「斜め30度」「斜め45度」といった、特定の図形パターンに対応する様々なコラムがたいへん細かく並んでおり、これらは入力された視覚情報の中に自分の受け持ちの図形があれば反応しますが、それ以外のコラムは信号を受け取っても全く反応はしません。これがどういうことかと申しますと、それ以外のコラムは入力があっても反応しないということは、その先の大脳皮質には反応したコラムの信号しか送られないということです。 我々の目が捉える視覚情報といいますのは光受容細胞の数からいって最初は片目で二億画素に及ぶ膨大なドット・データです。ですが、仮にそれが真っ白な紙に書かれた「×印」であったとしますならば(飽くまで仮にですよ)、反応するのは「右45度」と「左45度」のコラムだけですから、極端な話、大脳皮質に送られるのはこのふたつの図形が存在するという情報だけということになります。このように、視覚情報が視覚野を介して大脳皮質に送られる過程で、無数とも呼べるコラム集団の反応特性によって水も漏らさぬ篩に掛けられ、膨大な二次元並列データが単純なパーツ・リストとして整然と分類・整理されることを「知覚処理」といいます。 そして、この「右45度」と「左45度」のパーツは、視覚情報の認知機関であります「視覚連合野」において再び「×」という形に組み立てられます。すると、今度は脳内からこの「×」と類似する「視覚記憶」が情報として引き出され、言語記憶からは「バツじるし」という名称が想起されるわけですが、視覚情報と言語情報では、それを扱う連合野の場所が違います。果たして、視覚情報と視覚記憶が同じ視覚連合野で処理されることを「認知」といい、複数の情報や、異なる連合野での認知結果が脳内で統合されることを「思考」といいます。 このように、「認知・思考」といいますのは、脳内ではたいへん高度で複雑な情報処理ではありますが、その流れを整理してみますならば、質問者さんがご指摘をなさいますように、まず、情報といいますのは単純化され、対象化されなければ如何なる処理も行うことはできないということですね。そして、この視覚野コラムの選択的反応特性といいますのは、神経系の情報処理におけるモデルのようなものであり、これを考え方の規準としますならば、認知・思考・記憶といった、脳内の様々な情報処理を一貫した機序で整理することができます。 では、只今は視覚処理を例にご説明致しましたが、視覚野のコラムのような「選択的反応特性」という機能は、我々の脳内ではいったいどのような意味を持つのでしょうか。 神経細胞というのは入力の有る無しに対して「反応する・しない」という、必ずや「選択性」を持っています。神経系の情報処理といいますのは、基本的には全てがこれによって行われているわけですが、ひとつの神経細胞ではどうやっても「0,1」以外の結果を出力することはできません。従いまして、我々の脳内では、より高次で複雑な有意情報といいますのは、ほぼ例外なく複数の「0,1」が組み合わされた並列信号によってやり取りされています。 ですが、神経細胞といいますのは信号を受け取ったら次の細胞にそれを受け渡すだけですから、これではただ並列信号が川下に流れてゆくだけで、何時まで経っても意味のある情報にはなりません。ですから、これを意味のある情報として扱うためには、単に「0,1入力の有る無し」だけではなく、「並列信号そのもの」を分類し、何らかの判断を下す機能というものが必要になります。 ひとつの細胞では例え複数入力であっても「0,1の選択性」しか持ちません。ですが、脳内で特定の機能を持つ「コラム(細胞集団)」といいますのは、それぞれの細胞に同時入力された「信号のパターン」に対して「合致する・合致しない」という、「集団としての反応特性」を持っているわけです。 視覚処理と全く同様に、機能的コラムといいますのは、並列信号の中に自分の受け持ちの情報が含まれていなければ反応はしません。このような反応特性が脳内の至るところで機能するために、0,1の受け渡しによって伝達される並列信号は、これにより、初めて情報として分別されるわけです。従いまして、我々の脳内で「選択的反応特性」といいますのは、入力の有る無しではなく、並列入力に対して判定を行い、特定の結果を選択する機能であり、0,1しか扱えない神経細胞が並列信号という複雑な情報を処理するための原理ということになります。 ところで、機能コラムといえども神経細胞の集まりです。そして、神経細胞にできるのは、基本的には信号を受け取ったら次の細胞にそれを出力することだけです。では、コラムは並列情報の中からどうやって特定のパターンを見付け出し、はたまた入力パターンが違うというだけで、どうして個々の出力をキャンセルしてしまうなどということができるのでしょうか。これに就きましては、記憶の形成と想起を例に整理してみたいと思います。 記憶といいますのは、脳内では横の繋がりを持つ神経細胞のネットワークであり、そのパターンは過去の入力情報と対応しています。ある特定のパターンの並列信号が入力されますと、それに対応した複数の神経細胞が一斉に興奮状態になります。このとき、反応した細胞は横の繋がりにも信号を出力しますので、これが繰り返されますと、同時に反応した細胞同士の横の繋がりが特に強化されるという可塑的な変化が起こります。これによって強化され、固定されたネットワークが長期記憶ですので、当然のことながら、再び同じパターンの並列入力がありなすならば、ネットワークが一斉に興奮状態になり、記憶情報は再生されます。では、これに対しまして、異なるパターンの入力であります場合は、幾つかの細胞はそれによって興奮性入力を受けるわけですが、ネットワーク内での横の信号のやり取りが所定の閾値を超えませんので、反応は発生しないということになります。 これが、機能コラムが並列信号に対して特定の結果を出力できる理由です。そして、これがどういうことかと申しますと、つまり記憶回路が形成されるということは、そのネットワークが過去の体験入力に対して選択的反応特性を獲得するということなんですね。従いまして、我々の脳内では、記憶の検索・想起といいますのは、この選択的反応特性の原理に基づいて行われているということになります。ですから、過去と同様の入力がありますならば、それに対応した記憶情報がきちんと想起され、異なる情報に対しては「それは違う」、あるいは「知らない」といった結果を選択することができるわけです。 記憶を例に執りましたが、これが認知や思考といった、如何に高度な情報処理といえども、その原理が同じであることはこれ以上ご説明申し上げる必要はないと思います。我々の脳内には情報の因子や媒体というものは存在しません。「情報の有意性」といいますのは、それを受け取る側の「選択性」によって必然的に発生するものです。さもなくば、それはただの並列信号でしかありません。そして、ここに働くのが並列信号に対する「選択的反応の原理」です。 「手ニューロン」や「顔ニューロン」といったものは存在が予測され、注目されていますが、「おばあちゃん細胞」や「黄色いフォルックスワーゲン細胞」といいますのは、論議に客観性を持たせるための極論であり、実際にそのような機能が存在するというわけではありません。ですが、何れにしましても、それは「おばあちゃん情報」や「黄色いフォルックスワーゲン情報」に対して選択的反応特性を持つものであるという点では、これまで整理してまいりました並列情報処理の原理に反するものでは全くありません。「おばあちゃん細胞」が「おばあちゃん入力」に対して選択性を持つために、それが「おばあちゃん情報」として成立するわけですね。我々の脳内では、並列信号という複雑な情報は、このようにして処理されています。
- rabbit_cat
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はっきり言えばまだ分かってないです。 どのようにモノを認識するかという問題にしても、おばあさん細胞仮説(「おばあさん」を認識する神経細胞、「りんご」を認識する神経細胞、みたいに、いろいろなモノに対してそれを認識する細胞が存在する)とか、細胞群仮説(いろいろなモノに対応して、それを認識する神経細胞群が存在する)、あるいは、ネットワーク仮説(神経細胞がある特定のパタンで発火することが、ある特定のモノに対応する)とか、いろいろあるんですが、まだなんともわかっていません。 また、情報の担い手として、発火のパルスの密度に情報がのってるとか(割と古典的な考え方、現在はあんまり流行ってないか)、パルス間の時間間隔(interspike interval)に情報がのっているとか(数年くらい前に流行していた考え方。)、そもそもパルス列には情報はのっていなくてパルスを介して神経細胞群同士が相互作用すること(カオス遍歴)に情報がのってるとか、いろんな説があります。まだ、全然、決着はついていません。
お礼
回答ありがとうございます。 そうなんですね、色々な仮説があるみたいで驚きました。 では、ニューロンが難しい・複雑な情報を処理するために、どんな準備が必要かっていうことも、まだ分からないのでしょうか?