「ジン」は、欧字では Jinn もしくは Djinn と書きます。
変化形には混乱した異説が絡むので大幅に割愛しますが、欧米では女性形を Jinni もしくは Djinni とし、「ジニー」と読むようです。
「ジン」の語源は、「目に見えず、触れ得ないもの」であるとされます。
アラブ文化圏で古くから信じられている諸々の霊体の、謂わば総称であり、精霊とも魔人とも称される一大グループを形成します。
アラブもイスラーム教化される以前は多神教の世界であり(て言うか坩堝)、神やそれに準じる者、不可思議で近寄り難い物の怪、悪意に満ちた邪霊などが信じられていました。
それらの多くは、唯一神アッラーの時代になって名と信仰を大きく失いましたが、完全に否定されてしまう事は無く(一神教がこれを排除し切れず)、教義にも民間信仰にも存在し続ける事となりました。
キリスト教圏で古代の神々が妖精・精霊・天使・悪魔 devil ・魔族 demon ・堕天使などとして生き残っているのと、ある程度同じ経緯だと言えるでしょう(もっとも、キリスト教は実質多神教なので、その点かなり違うとも言えますが…)。
ジンには、西欧文化圏に見るゴブリンのような小者(無害ならフェアリー、有害ならゴブリンと呼ばれる存在)も居れば、高尚な者も居ます。
人と同じくその性格に善悪の両面を内包しており、人助けをする者もあれば、悪魔そのものと言うべき危険な者も居ます。
憑依して人を操る事もあるジンですが、それが善意によるのであれば憑かれた人は聖人に押し上げられ、悪意によるのであれば狂人に化せられると言います。
強大な者から順に、マリード、イフリート、シャイターン、ジン、ジャーンという階級があるとされ、キリスト教のサタンとも対比されるイスラーム教の魔王イブリースが、彼らの最高位であるともされています。
ロールプレイングゲーム(RPG)に親しんだ人には、水のマリード・火のイフリート・風のジン・土のダオが非常に印象深く、ジンと言えばこのイメージを真っ先に思い浮かべるでしょう(私もですけど)。
しかし、これらはテーブルトークゲーム『ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)』が西欧の四大元素精霊(ウンディーネ、サラマンダー、シルフ、ノーム)のキャラクター性をジンに当て嵌めて創作した設定が基となっており、神話・伝承とは全く関係がありません。
テレビゲーム『ファイナル・ファンタジー』の中で「炎の幻獣」との位置付けで登場し、プレイヤーズ・キャラクターを助勢するイフリートも、D&Dの影響下で生まれています。
お礼
とっても詳しい説明、本当にありがとうございました! だいぶイメージがわかってきましたよ! 欧米の絵画にもよく見られる「天使」の元祖は中東の土着宗教(とくにゾロアスタ教)に出てくるSPIRITだと聞いたことがあります。 中東=イスラームのイメージは強いものの、いまだに唯一神アッラーだけではないのですね。。。 中東の文化ににわかに親しみを感じました!