ドップラー効果、特殊相対性理論の端緒となった話。
木星の周囲をまわる衛星イオを地球からみると、木星に隠されて見えなくなる現象である「食」が周期的に起きている。
観測される食の周期は一定ではなく定期的に長くなったり短くなったりしている。
17世紀末、れーマーは光が一定の速さで宇宙空間を伝わってくるものとして食の周期の変動を惑星の公転と関係付けて説明し、光の速さの値を初めて見積もった。かつて光は宇宙に充満しているエーテルという媒質によって伝わると考えられていた。ここでは光は静止したエーテルに対して一定の速さcで伝わるとしよう。話を一般的にするために、木星に置かれた正確な時計を地球で観測して地球の正確な時間と同時に読み取っていると考える。木星の時計の読みは木星と地球の間の空間の光によって運ばれてくる。これら2つの時計の読みはこれにかかる時間だけずれることになる。まず、簡単のため木星はエーテルとともに静止しているとしよう。図1には木星を出て地球に到達した2つの光が示されている。初めの光の出発時刻はt'_1 ,到着時刻はt_1であり、あとの光の出発時刻はt'_1+T' ,到着時刻はt_1+Tである。時刻t_1とt_1+Tの間に地球が動いて木星との距離がd_1からd_1+Dに変化したとする。光の速さはcであるからd_1=c(t_1-t'_1)などが成り立つ。地球の時計の経過時間Tと木星の時計の経過時間T'の比をc,D,TであらわすとT/T'=((1))となる。その導出の根拠は次の通りである。((2))
ここでイオの実際の食の周期をP'とすると、地球が木星から遠ざかる速さがVであるとき食の周期は地上ではP=((3))と観測されることになる。このことは光の振動の周期にも適用できるから、同じ状況のもとで木星にある原子から出た振動数f'の光を地球でとらえると振動数はf=((4))となる。地球に対する光の速さも変わる。一方,観測される光の波長はV=0の場合の((5))倍になる。
解答
(1)T/T'=cT/(cT-D),(2)d_1=c(t_1-t'_1),d_1+D=c(t_1-t'_1)+c(T-T) よってT'=(cT-D)/c ∴T/T'=cT/(cT-D)
(3)T→P,T'→P'とみなして,D=VPだからP/P'=cP/(cP-VP) ∴P=cP'/(c-V)
(4)1/f=c/(c-V)・f' ∴f=(c-V)f'/c
(5)木星での波長をλ',地球での波長をλとする。木星での光の速さはcで、地球に対する光の速さはc-Vである。
また、V=0の場合は木星での波長と同じである。
λ=(c-V)/f=(c-V)・c/(c-V)f'=c/f'=λ' ∴1倍
このように解説では説明されています。ここで質問が3つあります。
まず、(3)について、なぜT→P,T'→P'とみなすことができるのでしょうか?
また、D=VPとしていますがDは地球と木星が離れた距離、そしてVが地球が木星から遠ざかる速さ、そしてPはイオの周期ですよね。
なぜD=VPといえるのかを教えていただきたいです。
そして、(6)についてですが、地球に対する光の速さc-Vとありますが、光速不変の原理、どのような慣性系においても光の速さは常に一定である。ということですから地球が例えどれだけの速度で木星から離れていようが、光には全く関係ない話ではないですか?
例えば、光と車が同じ方向に、そして車は時速100kmで進んでいたとすると、その車の中から光を見ても地上に立っている人から見ても光の速さは一定にみえるということですよね。
ならば、今回のλ=(c-V)/fという式はなぜ成立するのでしょうか。
これらのことがわからず困っています。
もしわかる方がいらっしゃいましたら教えていただけると助かります。
よろしくお願い致します。
お礼
御回答ありがとうございます。 たいへん解りやすかったです。 ありがとうございました。