ゲート絶縁膜の材料という観点から話します。ゲート酸化膜を薄膜化するにつれて、トンネル電流によるゲートリーク電流が顕在化します。トンネル電流は、マクロ的には、材料に依存せずポテンシャル障壁の厚さや高さで決定されるものと考えて良いと思います。しかし、近年High-k材料という高誘電率ゲート絶縁膜が注目されています。これは、SiO2の比誘電率は約3.9であるのに対して、一般的に使われるHigh-k材料のHfO2は比誘電率が約25と高いので、絶縁膜をトンネルリークを抑制することができる範囲の膜厚にしながらも反転層電子密度を改善させることができるという利点を持ちます。これは、最近になって等価酸化膜厚(EOT:Effective Oxide Thickness)という言葉で説明されるようになりました。簡単に例えて言えば、酸化膜の物理的な膜厚は5nmでも、1.5nmの膜厚を持つSiO2と同じ反転層電子密度をもたらすという意味です。MOSトランジスタの性能向上のためには、如何に小さなゲート電界で反転層に量子化した電子を数多く作ってやるかが重要なポイントであることを思い出して下さい。そのためには、やはりSiO2であろうとHigh-kであろうと同じことで酸化膜の膜厚は薄くしていくというスケーリングは基本になってくると思います。しかし、考え方によっては、ゲート酸化膜の膜厚を一定にして、比誘電率の高い材料を用いるという方向でも考えられると思いますよ。
お礼
材料の観点からですか。気がつかなかったですね。 確かにHigh-kなら膜厚を薄くせずにスケーリングができそうですね。SiO2に変わる材料として期待できそうです。 ありがとうございました。