まず、Fed(米国の中央銀行)の目的は、
http://www.federalreserve.gov/generalinfo/mission/default.htm
に記されています。Fedは、金融政策の目的として、
雇用の最大化(maximum employment)
物価の安定(stable prices)
適度な長期金利(moderate long-term interest rates)
の3つを挙げています。用語上の問題ですが、full employmentと言うと違った概念になるので、maximum employmentの方が良いと思います。
一方、欧州の中央銀行の目的は、
http://www.ecb.int/ecb/orga/tasks/html/index.en.html#skipnavigation
の“Objectives”で、
"The primary objective of the ESCB shall be to maintain price stability".
And: "without prejudice to the objective of price stability, the ESCB shall support the general economic policies in the Community with a view to contributing to the achievement of the objectives of the Community as laid down in Article 2." (Treaty article 105.1)
The objectives of the Union (Article 2 of the Treaty on European Union) are a high level of employment and sustainable and non-inflationary growth.
と述べられています。
確かに、欧州の中央銀行の第一の目的は、物価の安定を維持する(maintain price stability)となっています。ただ、その後で、「物価の安定のみではなく、欧州各国が第2項に書かれているような目的を達成するための政策を、欧州の中央銀行は支持する」と書かれています。
そして、その第2項には、欧州各国の目的として、高水準の雇用(high level of employment)と、インフレの加速しない持続可能な成長(sustainable and non-inflationary growth)が挙げられています。
つまり、欧州の中央銀行も雇用の促進を考える、ということです。
このFedとESCBの書き方がどれだけ違うのかを表現することは難しいと思います。
では、なぜ、欧州の中央銀行の目的がこのように回りくどい言い方になったかですが、政治の介入を避けたかったことがあるのではないでしょうか。
雇用促進、持続的な成長は、政治家が得意とする分野です。中央銀行の目的にこの2つが入ると、中央銀行が政治家の道具になってしまう、という危惧があったのではないでしょうか。だからと言って、雇用や経済成長を全く無視するわけにもいかない。それで、このような書き方になったのではないでしょうか。
ただ、これは私の推測です。EUの成り立ちを政治的な駆け引きの面から描いた本が既に何冊か出ていますので、そちらで確認されることをお勧めします。
お礼
ありがとうございます。 なかなか難しいですね。 言葉の表現って難しいです。