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ヘリセンの吸収極大について
ヘリセンは、π電子の数から本来予想されるところよりも短波長側に吸収があります。分子に歪みの負荷がかかっているせいだと思うのですが、この負荷から短波長シフトをわかりやすく説明する方法がありましたらご教授願います。
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> 歪んでいてもπ電子の数が減るわけはありませんし、分子が平面でなくなるとは言え > ベンゼン環の形もそれほど大きく変わっているわけではないと思います。 確かに、π電子の数は変わりませんが、軌道の重なりが小さくなると、各原子間での 電子の行き来(→共鳴による非局在化・共有)の効果が減少していく、ということです。 π軌道の元となるp軌道は、平面状態の時はベンゼン環に対して垂直に存在している わけですが、平面性が崩れるとp軌道も傾きます。 ― C ∧ ←p軌道 \ ∨ ∧ Cb ∨ / ∧ ― Ca ∨ ∧ ∨ 下図は、上図のCaから、Cbが重なるように見たものと思って下さい; (「・」はCa-Cb間のσ結合、「|」はp軌道、「――」はベンゼン環と重なる平面) <平面時> || ―― ・ ―― || <歪んだ場合> |/ ―― ・ ―― /| このように、ベンゼン環が歪むと、それに伴ってp軌道の平行性も小さくなり、 その分、軌道の重なりが小さくなります。 (なお、この場合、p軌道自体が歪んでいるわけではないので、そのエネルギー 準位は、環が平面だったときと同じままです。環が歪むことで変わるのは、 (p軌道の重なりによって生じる)π軌道のエネルギー準位です) > 共役系が伸びるよりも分子の歪みの方が、吸収スペクトルに与える影響が > 大きいと感じられますが…。 その点は、系によって違っていて、一般的には言えないのではないかと思います。 (例えば、ナフタレンの1,4-を何らかの置換基で結合(環化)させてベンゼン環を 歪ませた場合、ベンゼンに比べて吸収が長波シフトするか短波シフトするかは、 その歪みの程度次第でどちらもあり得るのではないでしょうか) で、ヘリセンの場合については、例えば1つのベンゼン環でのp軌道の重なりが 平面だった場合の99%に減少したとして、それが6つ縮合しているので0.99^6≒0.94と、 環の縮合分だけ歪みの影響が積算されて効いているのではないか、と想像します。 ・・・すみません、全然「わかりやすい説明」になってませんね(汗)
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- DexMachina
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ご質問にもある通り、ヘリセンは末端の環がぶつかるため、完全な平面ではなく わずかに歪んでいます。 この歪みは、個々のC-C結合についてみれば小さなものですが、共役系全体の 安定化に対しては若干大きめに効いてくる、ということだと思います。 これを、先のご質問 http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1875069 への回答で出したのと同様の図で説明させていただきます; 1)歪みがない場合(=π電子数から予想される状態) E ↑ π4 | / ̄\ | πa* ― ― πb* | \_/π3 ┼ | / ̄\π2 | πa ― ― πb | \_/ π1 (πa・πa*は、ヘリセンを構成するベンゼン環上の結合性軌道・ 反結合性軌道とお考え下さい) 2)歪みがある場合(=実際の状態) E ↑ | _ π4 | πa* ― < > ― πb* |  ̄ π3 ┼ | _ π2 | πa ― < > ― πb |  ̄ π1 環に歪みがない場合、結合性軌道同士・反結合性軌道同士の重なりに よってπ1-π2間、及びπ3-π4間の分裂幅は大きくなるため、 結果的にπ2(HOMO)-π3(LUMO)のエネルギー差は小さくなります。 (→上記「1)」を参照) 一方、環に歪みがあると結合性軌道同士・反結合性同士の重なりが 小さくなるためにπ1-π2間、π3-π4間の分裂幅も小さくなり、 π2(HOMO)-π3(LUMO)のエネルギー差は広がります。 (→上記「2)」) このため、縮合環に歪みがあると、吸収域が短波長側にシフトする、 ・・・という説明でいかがでしょうか。 *上記の説明は、「個々のベンゼン環上の結合性軌道・反結合性軌道 のエネルギー準位変化は無視できる」という前提になっています。 (縮合環の縮合数が多いこともあり、累積効果の方が大きいと推測) そのため、「t-ブチル基置換により歪んだベンゼン」などでの短波長 シフトに対して適用しようとすると矛盾を孕みますのでご注意下さい。 (個々のベンゼン環の状態も含めて説明しようとするとと、共役に関与する軌道 が純粋なp軌道ではなくs性を帯びてきて・・・等、(私には)簡潔に説明が できなくなってしまうので・・・)
補足
軌道の重なりが小さくなることによって分裂幅が小さくなることはわかるのですが、環に歪みがあるときにはなぜ軌道の重なりが小さくなるのでしょうか? 歪んでいてもπ電子の数が減るわけはありませんし、分子が平面でなくなるとは言えベンゼン環の形もそれほど大きく変わっているわけではないと思います。 これは平面であるp軌道が平面からずれるとそれぞれの結合の「p軌道性」が弱くなり、その結果として軌道の重なりも小さくなる(つまり分裂幅が狭くなる)という理解でいいのでしょうか? (でも歪みをもった結合同士ならエネルギー準位も近い気もするし…) また程度の問題もありますが、データ的には共役系が伸びるよりも分子の歪みの方が、吸収スペクトルに与える影響が大きいと感じられますが…。実際はどうなのでしょうか。
お礼
私の学力上、若干消化不良な感もありますが、 「軌道の重なりによる分裂幅の大きさ」が吸収波長に効いてくることが良くわかりました。 ありがとうございました。