禁治産者とは、
1、心神喪失の常況に在る者で
2、一定の請求権者の請求により
3、家庭裁判所が禁治産宣告をした
者を言います。
これは平成11年法改正により廃止となり、
現在の制度としては成年被後見人がほぼ該当します。
成年被後見人とは、
1、精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者で
2、一定の請求権者の請求により
3、家庭裁判所が後見開始の審判をした
者を言います。
「心神喪失の常況」とは
成年後見制度の「精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況」と
内容的には同じです。
即ち、
自分の行為の結果を認識することができないような精神状態に在ることで
おおよそ7歳未満程度の精神状態です。
時々正常になることが在っても通常において事理弁識能力を欠いていれば
「常況」に当ります。
「一定の請求権者」とは
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(本人が未成年の場合)、補佐人、
検察官
です。
現在の成年後見制度では、
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補佐人、
補佐監督人、補助人、補助監督人、検察官
です。
少々人数が増えていますが、これは制度変更に伴うもので、
実質的には同じです。
禁治産宣告により原則として配偶者が後見人となり、
配偶者がいなければ家庭裁判所が後見人を選任します。
禁治産宣告を受け禁治産者となると
単独では一切の法律行為(*)を行うことができなくなります。
その結果、禁治産者の法律行為は常に取消しうるものとなります
(ただし、法律行為を取消すという行為だけは
例外的に禁治産者自身が単独でできます。
そうしないと、取消を取消すというややこしいことになるので)。
(*)法律行為とは、意思表示を内容とする法律要件。
意思表示とは、一定の法律効果の発生を意図してする内心の表示。
単なる内心の表白は法律用語としては、意思表示ではありません。
一方、成年後見制度では
後見開始の審判によって配偶者は当然に後見人とはなりません。
残念ながら配偶者が信用できるとは限らないのですね。
したがって、配偶者の有無に拘らず家庭裁判所が成年後見人を選任します。
また、必要とあれば
成年後見人を監督する成年後見監督人を選任することもできます。
後見人を全面的に信用していないのですね。
そして、原則として単独で法律行為を行うことはできなくなりますが、
禁治産者と異なり、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」
については取消すことができません。
この差は、従前の、
一般市民取引から完全に排除して禁治産者を保護するのではなく、
できる限り個人を尊重し、
自己決定を尊重しようという理念に基づいています。
なお、禁治産宣告あるいは成年後見開始の審判があった後に
能力を回復し1の要件を欠いたとしても
宣告あるいは審判の取消を経なければ
禁治産あるいは成年後見は終了しません。