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ラジカル解離について

ある論文で、樹脂表面にレーザ光を照射すると、「樹脂を構成している分子のラジカル解離による発泡現象と、樹脂のラジカル解離が発生せず炭化が進行する2つの現象がある」とありました。 ラジカル解離というのがピンときません。 ネットでキーワードを入れて検索するのですが、「H20がH+OH・になるのがラジカル解離、H+OH-がイオン解離」とあります。 イオンにならずに解離するのがラジカル解離なのかもしれませんが、では、イオンでない解離したものは、一体何なのでしょうか? また、根本的なことですが、「ラジカル」とはなんですか?ネットで2重結合してあるやつは、「ジラジカル」ですという表現までは、見つけたのですが… 全くの初心者なので、わかりやすい回答をお願い致します。

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  • DexMachina
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回答No.2

すみません、わかりやすくしようとしたら、えらく長文になってしまいました(汗) かえってわかりにくくなってしまったかもしれませんが、最後までお読み戴ければ幸いです。 それでは、まず、最も簡単な共有結合性物質である水素分子(H2)から説明させて戴きます。 水素原子は、+1の正電荷を持つ陽子1個からなる原子核と、-1の負電荷を持つ電子1個からできています。 この電子は、原子核のまわりのある距離の範囲を飛び回っています。この飛び回っている場所が電子軌道です。 (正確には「飛び回っている」は「非局在化している」といいます) 水素原子では、正電荷+1×1個と負電荷-1×1なので、電荷としては釣り合いがとれています。 ただ、電子には「正電荷と引き合い、負電荷と反発しあう」という性質と同時に、「2つが1組になることで安定化する」という性質もあり(→フェルミ粒子と分類されるものの特徴(余談))、このままでは安定化できません。そのため、2つの水素原子は、それぞれの電子を共有することで安定化します。 これが「共有結合」で、その結果できるのが水素分子です。  H・ + ・H → H:H (= H-H)   (「・」は電子1個、「:」や「-」は電子2個(=電子対1組)を表します) 次に、イオン解離とラジカル解離を、ご質問と同じ水を例に説明します。  1) H:O:H → H:O:^- + H^+  <イオン解離>  2) H:O:H → H・ + ・O:H  <ラジカル解離>  (「^-」「^+」はそれぞれの電荷を表す。なお、酸素上にある非共有電子対は省略) 「1)」では、より電子を引きつけやすい原子(ここでは酸素原子)が、共有していた電子2つを電子対のまま占有することで負電荷を帯びて陰イオン(水酸化物イオン)になっています。 また、それより電子を引きつける力が弱いもう一方の原子(ここでは水素)は、電子を奪われることで正電荷を帯びて陽イオン(プロトン)になっています。 これが、「イオン解離」です。 一方「2)」では、共有していた2つの電子(=電子対)を、再び1個ずつに分け合っています。 このときできる「H・」を水素ラジカル、「・O:H」をヒドロキシラジカルといいます。 つまり、「ラジカル」とは、「組となることによる安定化をしていない電子(「・」)を持つもの」の呼び名ということです。 このラジカルをつくる形の解離が、「ラジカル解離」になります。 できたラジカルは、他のものと反応して電子対をつくって安定化しようとするため、一般に不安定です(但し、例外もあります)。 そのため、場合によっては既に電子対をつくって安定化していたものと反応して、別のラジカルを生成したりもします。  R-O-O-R → R-O・ + ・O-R  R-O・ + R'2C=CR'2 →R-O-CR'2-・CR'2   R-O-CR'2-・CR2 + R'2C=CR'2 → R-O-CR'2-CR'2-CR'2-・CR'2  (「R」や「R'」は水素やフェニル基などの各種置換基) この連鎖反応を利用したのが、ラジカル重合という樹脂合成法です。 なお、 > 2重結合してあるやつは、「ジラジカル」です というのは不正確で、正しくは、「二重結合の一方の結合がラジカル開裂することでつくられるラジカルがジラジカル」ということになります。  ~C=C~ → ~C・-・C~ 水の場合では、水素ラジカルとヒドロキシラジカルという2つのラジカルに別れていました。 しかしこの例では、二重結合の一方は切れてラジカルを生成しますが、もう一方は単結合として残っているため、1分子内に2つのラジカル電子(「・」)を持っています(ラジカル電子はそれぞれの炭素C上にあって、対になっていません)。 このように、1分子内に2つのラジカル電子を持つものを「ジラジカル」と呼びます。 (「ジ」というのは「2個」を意味する接頭語です)

en228
質問者

お礼

お礼が遅くなり申し訳ありません。 図付のわかり易い回答ありがとうございます。 また、わからないことがありましたら、宜しくお願い致します。

その他の回答 (1)

noname#62864
noname#62864
回答No.1

分子における基本的な結合というのは共有結合であり、単結合の場合には2個の電子が共有されています。 結合が切れると言うことは、共有されている2個の電子(これを電子対と言います)を2個の原子が分け合うことです。 仮に一方の原子が電子を2個とも取ってしまえば、その原子は陰イオンになり、電子を失った方の原子は陽イオンになります。これをイオン解離(イオン開裂)と言います。 それに対して2原子が電子を1個ずつ分け合う形で結合が切れるのをラジカル解離(ラジカル開裂)と言います。このとき2原子上には、対になっていない電子(不対電子)が存在することになります。これがラジカルです。 すなわち、不対電子を有する化学種をラジカルと呼びます。 イオン開裂 A:B → A:^- + B^+ ラジカル開裂 A:B → A・ + ・B (A・,・Bはラジカル) ジラジカルというのは2個の不対電子をもつ化学種です。たとえば、酸素分子(・O=O・)はジラジカルとなっています。 冒頭の「ラジカル解離による発泡現象」の件ですが、どうやら、光硬化性樹脂には光重合開始剤が添加されているようです。 この詳細についてはわかりませんが、この手の反応には、R-N=N-Rの構造をもつものが使われることがあります。Rはアルキル基等です。 これに光を照射すると、R-N結合が切断され、下式のように窒素ガスが発生します。発砲現象というのはこのことかもしれません(必ずしも自信はありませんが)。 R-N=N-R → R・ + ・N=N-R ・N=N-R → N2 + ・R 上記反応で生じたR・が反応開始のきっかけ(ラジカル開始剤)になります。

en228
質問者

お礼

お礼が遅くなり、申し訳ありません。 とてもわかり易い回答ありがとうございます。 参考にさせて頂きます。