契約は当事者の合意で決まり、契約内容以外の事項について相手がどのように対応しようと、所詮契約外の事項ですから、契約は有効です。請負契約の準拠法は民法ですから、相手が契約違反の場合は民法に即して違反かどうか判断することになるでしょう。
書面契約が無いという前提では、契約相手本人が請負契約と認識していても、上司や経理部が強権を発動して短期有期限の雇用契約(要するにアルバイト)として社内処理を進めたと私は推定します。
なぜかというと、税務署の視点では、請負契約は役務・成果物の対価に対する支払いが大原則ですから、これが契約書とか具体的成果物が無ければ、「本契約は実質、雇用契約であって、所得税の源泉徴収を行うべきを、怠っているものである。」とこの会社は厳重注意を受けあるいは追徴金をとられる可能性もあると考えられるからです。
法人と個人事業主と交わした請負契約について、その個人が事業として継続的に行っている場合は、個人事業主が事業所得税の納入義務を負い、法人は源泉徴収義務はないでしょう。その個人が事業として行っていない請負契約であれば、その個人は雑所得として課税され納税義務を負いますが(但し年間20万円以下なら非課税)、法人は「報酬、料金、契約金、賞金」についての源泉徴収義務が生じるでしょう。
税務署の視点では、個人事業主の契約書が無い事業所得に課税することは極めて困難でしょう。その個人が確定申告で正直に申告してくれるのを祈るだけです。でしたら絶対「契約書の無い請負契約は、雇用契約とみなして税法上の処置を行うように」と法人を指導するのは、税務署としての合理性はあるでしょう。
ただし、この税務署の合理性は契約外事項ですから、元の契約には関係しないことは最初に書いたとおりです。