通りすがりのものですが、この度は義父様の手術後の経過が思わしく無い由御心痛の程お察し致します。
一般人の自信無しの者なので書き込むのが躊躇われるのですがちょっとだけ・・・。
さて、鼡径部切開後のリンパ漏についてはdeltanさんの立派な御回答があるので特に言う事は有りません。
腹部大動脈瘤に対してステントグラフトを留置しようとなされた様ですので大腿動脈か外腸骨動脈を露出して人工血管を縫い付けてそこからワイヤーやカテーテルを出し入れする必要があったのでしょう。実際この部分のリンパ管は細くて見えませんし特別注意しても避ける事はでき無いですから・・・。ではどうしているかと言うと切開する組織を糸で結紮しながらいくか電気メスで細かい血管やリンパ管を凝固しながら切開していくと言った方法がとられます。結紮すると確実ですが多少時間がかかって手間な事と糸が異物として多数組織に残ってしまうので感染のリスクが多少増える事が考えられます。特に人工血管の断端が残ったりするこの手の手術の時は感染が恐いですし・・・。
電気メスの場合手術中は止血されておりリンパも漏れていない場合でも時間が経ってから出血してきたりリンパが漏れてくる場合が稀に有りますが手術の後から起こってくる事なので防ぎ様が無いのが実際の所だと思います。ですから術後の合併症としてのリンパ漏や血腫はゼロにはなりません。では本当に1%の確率か?と言われるとあまりこの手の細かい合併症の確率を論じた論文を読んだ事が無いので解りませんが僕自身に付いて言えば実際に何百人かの鼡径部を切開された方々の中でリンパ漏をおこした方を数人見た事が有りますので感覚的には納得できる数字では有ります。
次にステントグラフトについてですがこの治療はまだステントグラフト自体は保険の適応になっていないと思いましたが・・・。
ですから100万円位するはずの材料費が大学の研究費から出ているか患者さん自身の買い取りになっているかで負担すべき金額が違ってくるかと思われます。
またこのようなある意味先進的治療の為、合併症や成功率、死亡率に至まで御本人や御家族の方は術前にかなり詳しく説明を受けているはずだと思います。
ちなみに2004年の心臓血管外科学会の発表ではステントグラフトのパイオニアでもある東京医科大学で腹部大動脈瘤のステントグラフト留置術は2種類のステントグラフトを用いて各々初期成功率85%、95%と述べています。同じ学会で山口大学ではステント留置後遠隔期に再手術を要したのは25.8%であったと述べています。また日本心臓外科学会誌33巻2号81~86(2004)の石丸先生による5施設のPower Web という出来合いのシステムを使ったType 1のエンドリーク(グラフトの端と血管壁の隙間から直接動脈瘤の中に漏れの有るもの)を認めない、かつステントグラフトを目標の部位に運搬できたというステントグラフトの技術的成功率は93.3%であったとのべています。さらにType2のエンドリーク(動脈瘤からでている枝である腰動脈や下腸間膜動脈などからの逆流で起こり技術的に防ぐ事は困難)にいたってはWhite,J.Endovasc.Surg.4152-168,1997では10ー44%に起こると言われておりその対処法に至っても明確なコンセンサスを得られていないのが現状です。
まあ一言で言えば「ステントグラフトを留置しようとしても10人に1人はうまく行かないしうまくいったとしても再手術が必要になる人も稀ならずいますよ・・・」と言った所です。まあこれも一種の運と言えなくも有りませんね。取りあえず御質問の文章からは医療事故と思われる記述は見当たりません。
ステントグラフトの留置がうまく行かなかった以上義父様のとれる次なる手段は開腹による人工血管置換術か追加ステントグラフトになると思われますがその辺は主治医の先生がよく検討して下さっていると思われます。
今後の対応に付いては御本人がどうしたいかによると思われますが主治医に対して結果が思わしく無い事から不信感が有る様でしたらセカンドオピニオンを求めても良いでしょうし他の病院で手術する事も可能ですが個人的には大学病院でもあり主治医の先生を信頼してお任せするのも一つの方法だと考えます。
義父様の御回復をお祈り致しております。
それでは。
お礼
丁寧な回答ありがとうございます。 やはりリンパ管を避けて手術するということは非常に難しいものなのですね。 担当医も同じような説明をしていたと思います。 手術前は日常生活にまったく問題がなく、退院してみたら普通に生活もできないぐらい体調がわるくりました。 また、カテーテルもうまく入らず、腎臓も調子が悪くなり、私たち家族は担当医及び病院に対しての不信感が大きくなり、素直に担当医の話が聞けなくなっておりました。