障害者に係る日常生活用具の定義は、そもそも厚生労働大臣が法令で定めています。
平成18年9月29日付けの厚生労働省告示第529号です。
改正を経て、現行内容は平成25年4月1日から適用されています。
(改正後:平成25年1月18日付け厚生労働省告示第6号)
日常生活用具はまず、以下の3つの要件を満たす必要があります。
1) 障害者等が安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの
2) 障害者等の日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められるもの
3) 用具の製作、改良又は開発に当たって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般には普及していないもの
その上で、以下の6つに分けられています。
聴覚障害者の場合は、以下のロとニが相当します。
イ 介護・訓練支援用具(特殊寝台・特殊マット 等)
ロ 自立生活支援用具(入浴補助用具、聴障者用屋内信号装置 等)
ハ 在宅療養等支援用具(電動痰吸引器、盲人用体温計 等)
ニ 情報・意思疎通支援用具(点字器、情報伝達用具 等)
ホ 排泄管理支援用具(ストーマ装具 等)
ヘ 居宅生活動作補助用具(小規模な住宅改修を伴うもの)
具体的な運用については、障害者総合支援法に基づいた地域生活支援事業における日常生活用具給付等事業(市町村事業)として、市町村が条例で定める要綱に拠ります。
給付品目は、ほとんどの市町村で、障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)成立以前の厚生省通達「重度身体障害者に対する日常生活用具の給付及び貸与について」(平成13年5月15日付け障発第213号通知)を踏襲しています。
聴覚障害者において対象となるものは、以下のとおりです。
なお、障害者総合支援法に基づき、所得の状況に応じた自己負担額が発生します(基準額の一部を自己負担)。
■ ロ 自立生活支援用具
聴覚障害者用屋内信号装置(例:パトライトやサウンドマスター)
・標準耐用年数:10年
・標準基準額:87,400 円
携帯用信号装置(商品名「合図くん」)
・標準基準額:18,000 円
■ ニ 情報・意思疎通支援用具
聴覚障害者用通信装置(例:テレビ電話やFAX)
・一般の電話に接続して、音声の代わりに文字等を使用するもの
・標準耐用年数:5年
・標準基準額:71,000 円
聴覚障害者用情報受信装置(商品名:アイドラゴン)
・字幕・手話通訳付きの聴覚障害児・者用番組を受信するもの
・テレビ番組への字幕・手話通訳映像の合成出力機能を有するもの
・標準耐用年数:6年
・標準基準額:88,900 円
文字放送ラジオ
・FM文字多重放送の受信が可能なもの
・標準基準額:23,000 円
情報・通信支援用具(PC用アプリケーションソフトおよびジョイスティック)は、視覚障害者および上肢障害者のみが対象で、聴覚障害者は対象となりません。
そのために、音声を文字に即時変換できるアプリケーションソフトを聴覚障害者が日常生活用具として受けることはできません。
> 役所で把握している製品以外で該当品があるか情報収集‥‥
製品名で考えていても意味がありませんので、上述した目的を満たす給付品目となっているか否かを見て下さい。
目的を満たすような製品であれば、給付品目として認定される可能性は十分にあります(市町村の判断に拠りますが‥‥)。
市役所の説明(「品目に該当し、仕様を満たすものであれば良い」との説明)が言わんとしているのはそういうことです。
実際問題として、聴覚障害者用情報受信装置(アイドラゴン)はTV放送のデジタル化によって字幕付き放送が標準となったために、ほぼ意味を成さなくなりました。
一方、FM文字多重放送は、現在、実施されていません。
さらには、固定電話でのテレビ電話はほとんど普及に至らず、スマホアプリでのビデオ通話等に置き換えられてしまっています。
つまり、聴覚障害者にとってほとんど意味のない製品ばかりになっています。
せいぜい、FAXやパトライト、サウンドマスターぐらいしか役に立ちません。
> 自分で探して該当品で仕様の満たすものの見積を提出しても構わないとの事でした。
そのとおりです。
既に説明させていただいたとおり、製品名ではなく、給付品目としての目的を問うことになっているためです。
> ちなみにiPadなどのタブレットは対象外と確認しています。
前述した「情報・通信支援用具」に該当してしまうためです。
アプリケーションソフトの一種として判断されるので、聴覚障害者は対象になっていません。
> 使えそうなものはFAXだけでした。
あなたではなくとも、聴覚障害者の場合、現在、これぐらいしか対象にならないのが現実です。日常生活用具の意味がありません。
> 家電量販店で販売しているものであれば特に問題ないとの事‥‥
そのとおりです。
市販のFAXであっても「一般の電話に接続して、音声の代わりに文字等を使用する」という目的が満たされるからです。
お礼
ありがとうございました。
補足
障害者総合支援法に基づく日常生活用具給付等事業による物品の件です。 質問の意図は役所で把握している製品以外で該当品があるか情報収集したかったです。認定品があまりにも時代遅れの製品で用途も限られている為です。 市役所からの資料の品目に該当し備考欄の仕様を満たすものであればメーカーはい問わないと言われました。 しかし職員から言われたのは該当するものは現在各々1社しか対象(質問に記載のメーカー)にならないとのようです。ただ品目に該当するもので仕様を満たすものであれば対象にします。と言われました。 職員もよく分かっていない様子でした。今まで職員の勘違いなど、職員によって対応の違いがありました。 更に管轄している大本の部署で質問したところ同じ様に言われました。自分で探して該当品で仕様の満たすものの見積を提出しても構わないとの事でした。 ちなみにiPadなどのタブレットは対象外と確認しています。理由については分からないが過去に対象外と判断済みとのことでした。 結果として私の等級で給付対象品で使えそうなものはFAXだけでした。これについては家電量販店で販売しているものであれば特に問題ないとの事です。