おっしゃる様に海洋に放出するよりも安全で費用のかからないアイデアは出ていません。蒸発させる手もありますが(問題になっている汚染水に含まれるトリチウムは水素の同位元素なので酸素と結びついて水なり、蒸気として空気中に放出されます。トリチウムだけが残ることはありません。)費用がかかるだけで海洋放出と結果は対して変わりません。地中に封じ込める案もありますが、もし地下水に漏れてしまうと、海洋に比べて高濃度のトリチウム水が同じ場所にとどまり、飲料水や灌漑用水として取り込まれるリスクが高まります。かと言って、微妙な問題であり、この問題の担当大臣でも無く、科学者でも無い大臣が持論で語るのは失言だと思います。風評被害や地元の人々の感情、世界から日本を見る目など含めて総合的に判断して責任のある人が適切な発言をするべきでしょう。
トリチウムは比較的安全な放射性物質で、放射される放射線はβ線のみ。β線と言うのは要は電子線なのですが、電荷を持つので水や空気などの物質を通過しようとしても非常に短距離で消滅してしまいます。特にトリチウムから放出されるβ線はエネルギーが弱く、空気中を5mm, 水中では殆ど進む事が出来ません。だから、例えばあなたがトリチウム入りの汚染水が蓄積されたタンクに頬ずりしたとしても、安全は保証します。また、トリチウム入りの汚染水から生成した水があなたのディナーテーブルの上に置いてあったとしても問題ありません。ただそれを飲むことを喜んで飲む科学者はいないと思います。トリチウムは体内でも蓄積される事なく、取り込まれても水分として体を通り抜けて排泄されてしまいます。そうは言っても粘膜に近いところでβ線を放出すれば粘膜が突然変異を起こす確率が上がることは間違いないし、どれくらいの影響があるかは大量の人体実験をしない限り確かなことは言えないでしょう。基準値以下の濃度のトリチウム汚染水を海洋に流すことは実は正常稼働している原発でもやっています。海洋に流しても海から被曝する可能性は限りなく少なく、また海産物に蓄積されることもありません。ただ、放射線の影響を受けたり、僅かながらでもトリチウム水を含んだ海産物を人が摂取する確率が上がることは間違いない。そもそも国の定める放射性物質の濃度や被曝量の基準は、人がガンなどの健康被害を受ける確率がどこまでなら上がってもOKにするか見たいな判断で決められていて、ここまでだったら絶対安全だなんて言うことはありません。また、どれだけ被害の確率が上がるかも、大量の統計を取れるのはチェルノブイリやまさに福島の事故の様な時しかなく、環境に与える影響を正確に予測することはできないです。多分タバコを吸ったり、その副流煙を吸ったり、大気汚染の悪いところに住むよりははるかに影響が無いかもしれないけれど、それでも影響がゼロと確信できなければ必ず騒ぎは起こるので、とびっきり発言に注意すべき問題です。
#そうは言っても、いつか破綻するので、責任省庁の経産相はきちんとした作戦を持っていて欲しいです。大臣がコロコロか割りますが、ロシアンルーレットじゃ無いので自分の時に決断せずに先送りと言うのはやめて欲しい。