発端は試合中に選手にアドバイスをしてはいけないセリーナのコーチがボックス席からジェスチャーでコーチしたと審判が判断し、セリーナにコード・バイオレーションで警告を出したこと。それに対してセリーナがコーチングではなくただのサムアップ👍だと言いました。その時は抗議と言うほどの強さではなく、審判も一見セリーナの主張を理解したかのような態度を取りました。
次に、セリーナのサービスがダブルフォールトになり、感情的にラケットを叩きつけて折ってしまいました。その行為が2度めのコードバイオレーションとなり、規定によりポイントがナオミに与えられました。そのことでセリーナは最初のコードバイオレーションがカウントされていたことを知り、かなり感情的に審判に食ってかかりました。このときに、「自分はずるいことはしない。するくらいなら試合に負けたっていい」「私がずるするはずがない、一児の母よ」「あなたは私に謝罪しないといけない」とか執拗に抗議しました。
それはそれでとりあえず収まり、試合は続行されたのですが、ずっと感情的になっていて、セットの変わり目ごとに審判に執拗に同じクレームを付け続けました。結果審判がたまりかねて、3度めのコードバイオレーションを取りました。規定によりナオミに1ゲームが与えられ、4:3でナオミだったものが、5:3になりました。
ここで感情が爆発して泣きながらのな抗議。収まらず大会の委員まで登場してなだめたり調停したりする事態になりましたが、その時には「審判がポイントを盗んだ」と言う暴言も吐いていました。もはや試合に集中できるモードではなくなっていましたね。
セリーナに正当性があったか?無いと思います。他のスポーツだったら退場もの。コーチーは試合後のESPNのインタビューで、ジェスチャーでのコーチング(前に出ろと言う仕草をしたらしい)を認めています。ただ、これまでその程度のジェスチャーでペナルティを取られたことがなく、審判が厳しすぎると言う発言をしています。それに、そのことだけだったらポイントもゲームも失わず、またラケット折はそのこととは関係ないのですが、ポイントを失ったくらいなら我慢すれば十分挽回できたはず。
ただセリーナを少し擁護すると、彼女は昨年一歩間違えば死ぬような命がけの出産をしていて、その後復帰。今回の全米オープンは24度目のグランドスラム大会優勝への並々ならぬ意気込みがあったようで、自分には見の覚えのない、不正を働いたと言うコードバイオレーションが、ペナルティを取られたこと以上に自分に対する侮辱ととらえてどうしても許せなかったように思います。
敗戦後の審判との握手のときも放送では聞こえなかったですがなんかいっていましたね。
ただ、試合中や試合直後にセリーナを応援する観客からずっとブーイングが審判に浴びせられ、ナオミがずっとうなだれた状態で表彰式に望み、まだブーイングが続いていることで泣いてしまってサンバイザーを下げて隠したのを見て、ナオミの肩を抱き、準優勝インタビューでのインタビュアーの質問には答えず「みんなもうブーイングをやめて。彼女はよく戦った。良いセレモニーにしましょう。」みたいなことを言ってムードを一変させました。
アメリカでもこの決勝の様子は大きなニュースとして取り上げられていて、混乱気味ですが、セリーナが最後にスポーツマンシップを見せたことを称賛する論調もあります。
ナオミは優勝インタビューで「みんなセリーナを応援していたのに、こんな結果になってごめんなさい」と涙ながらに言っていましたが、最後にちょっとナオミ節が出て会場の笑いをとっていました。
なんか、後味が悪いようないいような、不思議な試合です。でもナオミが勝って良かった!あと、これを機会にナオミが憧れるセリーナと親交ができると良いと思います。
セリーナの態度は良くないのは間違いないですが、疑問が残るのは審判の最初の判断は本当に正しかったのかと言うこと。それと審判に対するクレームのペナルティですが、セリーナは同じことを言い続けていたので、印象としては「しつこい」ことに対するペナルティのように見えました。決定的な暴言の直後ならともかく、ちょっと不透明感を感じました。それと、セリーナを応援する観客のブーイングが審判に向けられたものであることは明らかなのですが、かなりひどくてナオミの受ける精神的ダメージを考えるべき。更には表彰式の時までそんなに大きくはなかったけれどブーイングが聞こえ、これは観客の態度としていかがなものかと思います。
お礼
本当に詳しくご説明いただきありがとうございました。(もしかして専門家?) 個人的には「一ゲーム」のペナルティは厳しすぎるように感じました。ラケットを叩き壊すのは男子なら珍しくないのですが、ペナルティをとられるのは知りませんでした。 このことが日本のニュースバラティ番組の格好の餌食にならないことを願っています。(民放のスポーツスキャンダルネタにはうんざりしています)