※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:炭素鋼炭鋼品の機械的性質)
炭素鋼鍛鋼品の機械的性質
このQ&Aのポイント
JIS-G3201には、製造方法としてG0306が規定されています。その要点は、「・・などによって熱間加工し、通常、所定の機械的性質を与えるために熱処理を施したもの。」つまりG3201は、冷間鍛造品ではありません。
鍛鋼品は鋼材切削加工品に比べて、鍛流線方向の機械的性質が優れています。鍛流線は圧延鋼材にもあり、同様に機械的性質の異方性があります。
冷間鍛造品では、鍛流線の影響があります。加熱による再構成はされますが、低温焼きなまし程度なら加工硬化が残留します。また、冷間鍛造は加工なしで製品表面まで効果が活用できます。
質問ではなく過去ログに対する回答と助言です。
暇に任せて過去ログを見ておりましたら、疑問のある質疑が見つかりました。
(A)No.33982「炭素鋼鍛造品について」
(B)No.34004「冷間鍛造の機械的性質改善とその後の熱処理の効果に関して」
1. 最も誤解されている重要なポイント。
JIS-G3201には、製造方法としてG0306が規定されています。その要点は、「・・などによって熱間加工し、通常、所定の機械的性質を与えるために熱処理を施したもの。」つまりG3201は、(A)(B)で議論している冷間鍛造品ではありません。冷間鍛造品は鍛鋼品とは呼びません。また冷間鍛造品にはJISはありません。
2. 鍛鋼品は鋼材切削加工品に比べて、機械的性質が優れているのか。熱処理により結晶粒は再構成される(加熱により全面オーステナイトになり、冷却時に新たなフェライト、パーライトが形成される)ので、鍛造時の結晶粒形状は残りません。しかし鍛流線(ファイバーフロー)は残るので、熱処理後であっても、鍛流線方向の機械的性質は、直角方向よりも延性、靱性、疲労強度が優れています(強度、硬さはほとんど変わらない)。その理由は、破壊起点にもなる介在物も鍛造作用を受けて微細化や鍛流線方向に伸び、整列します。すると鍛流線方向断面よりも直角方向断面の介在物面積が多くなるからです。鍛流線は圧延鋼材にもあり、同様に機械的性質の異方性があります。
4. 冷間鍛造品ではどうか。冷間鍛造品の場合も、上記と同様の鍛流線の影響があります。通常の熱処理をすると、やはり結晶粒は再構成され、加工硬化は消滅します。しかし低温やきなまし(応力除去)程度ならば、加工硬化が残留するでしょう。さらに加工硬化を積極的に利用するために、冷間鍛造ままで使用する場合もあるものと思われます。切削加工仕上げ代は、熱間鍛造よりもずっと少なくできるので(加工なしもあり)、製品表面まで冷間鍛造効果が活用できます。製造工程は、メーカーとユーザーでその都度、決めていると思われます。
「加工硬化が熱処理により消滅する」ことは、「焼きなまし」の目的効果を考えれば納得できると思います。
追加説明します。回答(2)を読んで調べていたら気づきました。小生は焼入焼戻材で考える癖がついているので、「焼きならし鋼での繊維組織」のことを忘れていました。
亜共析鋼では、フェライトとパーライトで形成された圧延方向の縞模様を繊維(状)組織と呼びます。この場合、介在物の分布以上に、組織そのものが機械的性質に異方性を与えます。その理由を簡単に言うと、亀裂が進む際に、繊維組織を横断して進むより平行に進む方が楽だからです。このため、硬さは変わらないものの、強度、延性、衝撃値は縦方向の方が優れています。詳細は回答(2)へのお礼の文献を見て下さい。
タイトルは「炭素鋼鍛鋼品の機械的性質」でした。
追加説明。
(Q)「熱処理により結晶粒は再構成される」のに、「亜共析鋼焼きならし材に鍛流線(フェライトとパーライトの縞模様)ができる」のはなぜか。
この「熱処理」は、変態点以上に加熱する熱処理のことで、高温焼戻や応力除去焼きなましは除外します。加熱時には全面オーステナイトになるので、冷却後には、熱処理前とは別のフェライト/パーライトが生成されます。
(Q)に答えるために、少し詳しく説明します。
鋼の組織の中で、(A)熱処理により変化するもの、(B)鍛造でしか変えられないもの、(C)熱処理でも鍛造でも変えられないもの、は何か。
(A)いわゆる熱処理組織(焼なまし組織、焼入組織など)。結晶粒度(一度オーステナイトにして急冷すれば微細組織にできる)。など。
(B)介在物の形状や分布。元素の偏析形態(例えば凝固時の樹枝状が、鍛造により伸長して繊維状になる)。一次炭化物(熱処理では変化しない炭化物)の形態や分布。など。
(C)成分で決まるもの(フェライト/パーライト比など)。介在物総量。など。
(Q)の答え。フェライト/パーライト縞模様になるのはCのミクロ偏析(上記凝固偏析に起因)が原因です。C量が少ない帯はフェライトが多く、多い帯はパーライトが多くなり、何度熱処理しても縞模様が残ります。焼入れすると全面マルテンサイトになり縞模様は消えますが、再度焼きならしをすると、また現れます。高温長時間加熱によりC偏析は消滅しますが、実用的ではありません。合金鋼の合金元素も偏析します。
なおSKD11のように多量の一次炭化物を含む鋼では、介在物と同じように一次炭化物もファイバー方向に並ぶので、一次炭化物のない鋼以上に機械的性質の異方性が強くなります。
なお鍛錬効果を説明した文献を紹介しておきます。
「鍛造法による鋼の性質について」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/denkiseiko1925/13/2/13_2_65/_pdf
お礼
鍛流線(ファイバーフロー、繊維(状)組織)の正体については古い文献を見ることになります。下記文献には機械的性質の異方性にも触れています。 質問追記に書いた亜共析鋼の繊維組織について。 「鋼の繊維状組織とその性質」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1915/17/1/17_1_36/_pdf 「繊維状組織鋼の研究(1)」https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1915/35/2/35_2_39/_pdf 「繊維状組織鋼の研究(2)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1915/36/1/36_1_13/_pdf 「繊維状組織鋼の研究(3」)https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1915/37/4/37_4_234/_pdf 介在物の分布による特性異方性について。 「非金属介在物と鋼の機械的性質の関係」の2.3項 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/57/13/57_13_1897/_pdf