専門家で無いので分かる範囲でお答えします。
>アラブにとって十字軍の真の目的を把握できず
と書かれていますが、真の目的とは何だったのでしょうか?
「異教徒イスラム教国からの聖地エルサレム奪還」というのは大義名分で、真の目的は、当初はカトリック教会の勢力を東方正教会(ギリシア正教)圏にまで広げる思惑があったと思われます。
つまり、東西両教会の統一を目指す教皇の意図が反映された結果が十字軍派遣の目的でした。
(ご存知かもしれませんが、十字軍派遣を決定したのはカトリックの教皇であり、教皇に派遣をお願いしたのがギリシア正教のビザンツ帝国でした。これは別に聖地がどうこうと言うのではなくて、トルコの度重なる侵入に悩んだ帝国が救いを求めてきただけです。
正確に言えば「十字軍の派遣」を求めたのではなくて、ビザンツ帝国内へ傭兵の派遣を求めたのですが。)
これを東西両教会の統一、覇権を狙う教皇は好機ととらえ、先の大義名分を掲げ、十字軍の派遣という形にしてしまいました。
ですから極端に言えばエルサレムだの、聖地だのという理由は何でも良く、結果的には「暴力的な侵入者」であった事は間違いありません。
ちなみに第4回の十字軍では、泣きついてきたビザンツ帝国の首都まで占領してしまい、もういろんな利害が複雑に絡み合って(教皇だけでなく、商人、諸侯、騎士、農民など)、訳分からない状態になってしまいました。
>現在も依然としてそのようにムスリムは考えているのでしょうか?
そうだと思います。
そして、そのように考えているのはムスリムだけではなく、東方正教会側もそうです。
(東方正教会のビザンツ帝国の首都を占領した事からも分かります)
>それに対して、西欧の人々は「十字軍は過去のこと」「ただの史実」として捉えているようですが、どうしてこういった違いがあるのでしょうか?
それは今述べたように、西欧の人(カトリックの人)は、十字軍なんてただの大義名分で、自分たちの勢力拡大や、私利私欲のためだけの軍隊であった事を知っているからではないでしょうか。
ですから、その話題にはあまり触れたがらないのでは、とも思います。
もちろん十字軍の意義と言うのもそれなりにあったかもしれませんが、やはりカトリックにとっては一つの汚点であり、侵略的行為であった事は明らかです。
十字軍の経緯などの説明になってしまい、質問者様の疑問にほとんどお答えできずにすみません。
お礼
ご丁寧にお答えいただきありがとうございます。大変参考になりました。