まず、再販制度について調べてみてください。
これに基づいて、神保町の出版社がお金を出し合って作ったのが取次です。ギネスに載ったことがあるほどの安価な全国流通の仕組みです。海外の人は私たちのような価格では本は買えません。特に地方の人たちは。
ハガキと本が全国一律の価格で買えるのは法律で守られているからです。
本屋は、お店さえ持っていれば、ほとんど元手ナシで始められます。本屋にある本は本屋さんのものではありません。本屋に並んでいる本は、出版社が取次経由で本屋に貸している本です。本屋は、売れたり、万引きされるなど失くしたら、その代金を取次に払います。汚れたり売れなかった本はノーペナルティで取次に返します。これが返本です。
また、借りる立場ですから、借りたい本や冊数を指定できません。要望できるだけで、実際に何冊入るかは届くまで分かりませんし、他の本が届くことも良くあります。
本屋はノーペナルティで返本できるので、売れるぞっと思った本は大げさに要望を出します。全国数万の本屋が大げさに要望してくるので、出版社が要望通りに刷ったら、返本の嵐で潰れてしまいます。小さな出版社が大ヒット作を得て潰れることは良くあります。本屋の店頭に山と積まれた本が、ブーム終了時にどっと返ってきて不良在庫になります。
出版社にとって、この印刷部数予測と返本が悩みの種になります。取次は、どの本屋で何冊売れたかの情報を出版社に渡しません。
ここまでが、前提だと思ってください。
さて、すごくいい加減に書くと、本の定価の3分の1が原価、3分の1が販促費で、定価の3分の2で取次に引き渡します。これが大手の出版でのケース。中小の出版社だと取次に2分の1になります。なので、小さな出版社は広告はほとんど出せないんです。
この取次の取り分の中から、流通の費用、本屋の取り分が払われます。
本屋は流通経費も仕入れ費もかかりませんから、取り分の中から、人件費と店舗運営の費用を出せればいいんです。書店の利益率を、売った本の値段を基準に出すと、10%ありません。
ただ、実際はタダで仕入れているわけなので、かかる経費は店舗が自前なら人件費がほとんどになるので、利益率の高い商売ですが。
この、全国どこでも成り立つ商売が、取次の存在価値です。
ちなみにAmazonの取り分は、4~7割くらいと言われています。出版社にとって、取次経由より厳しい条件です。でも、返本なし、買い取りのようです。また、売れ筋の本は、取次もAmazonに卸すようになりました。おそらくAmazonからゆるい条件を引き出せたのでしょう。取次にとっては流通もせずに返本もない簡単な商売になります。
こうなると売れ筋の本は街の本屋に入らなくなります。これにキレたのが紀伊国屋なわけです。
出版社というか、村上春樹と組んで、取次を通さずほとんどの部数を紀伊国屋に卸すことに成功しました。売れ筋の本を中小の出版社が抱えるリスクを先に書きましたが、紀伊国屋が買い取ってくれるなら、損のない商売になるわけです。ただし、取次には卸せなくなるでしょうから、社運をかけての決断です。
あと、出版業界のトップ2社は、ほとんど取次を通さない商売をしています。取次の欠点は、小売や買い手と直接繋がれないので、流行に弱いんです。
また、角川はいまはドワンゴと経営統合して、単なる本を売るだけではないところに狙いを持ったのではないかと思います。
お礼
ありがとうございます。