「子供をたくさん生む」のと、「子孫をたくさん残す」事は別の話です。
生態系の恒常性において、「たくさん生む」種は、弱くてたくさん食べられるから、たくさん子供を生んでいるのです。
ただし、この「子供を生む」というのは、一回に生む数ではなく、一生の間に生む数です。
少ない子供を生んで確実に育てる種もありますが、それを何年もくり返せば「たくさん生む(=たくさん食べられる)」事を示唆します。
地球上の生態系の本質は、日光によって励起された化合物の合成(光合成=植物)と分解(消化=動物)の連鎖反応です。
植物が成長(合成)するためには、二酸化炭素と水、窒素などの、化合反応の材料が必要であり、動物抜きの分解(紫外線による分解や大気中の酸素による酸化)より、動物による能動的摂食と生化学反応的酸化による、高速の分解の方が、有効なのです。
つまり、生命の進化とは、いかなる“強い種”の創出でもなく、地球に降り注ぐ日光が輻射によって再び宇宙に還って行くプロセスに於ける、生態系としての多様化=地球上の熱容量(物質循環量と速度)の増大だと言えるのです。
生物は、エントロピー増大に抵抗して、成長したり、増殖したりして、エントロピー減少しているように見えます。
しかしそれは、生物にしても、社会的な要素にしても、「開放系」だからです。
生物は、自分のエントロピー増大を新陳代謝するために、環境のエントロピーの低い物(食物、燃料)のエントロピーを増大させて放出(排便、廃棄)する事で、環境も含むトータルな閉鎖系におけるエントロピー増大を加速しています。
それでも、生態系全体の進化は、エントロピー減少だと言えますが、それも太陽の核融合というエントロピー増大の一環である、「日射>光合成>摂食>消化>酸化>輻射」という一時的な地上の熱滞留としての、開放系ゆえのもので、結果的にはエントロピー増大を加速するものです。
先にあるのは太陽光=植物による光合成であり、動物はその有機物の分解を加速して植物の光合成の原料にする(物質循環の加速)ための寄生的な存在です。
人類は「食物連鎖の頂点」とか言いますが、裏返せば、他のあらゆる生き物に依存して生きている寄生生物だということです。