わるいけど、トレーニングソフトだけで長い文章の入力なんていうことは期待しないでください。
理由ははっきりしていて、そんなソフト、作れないからです。作りたくないといっていいかな。
絶対にないとはいいませんよ。誰かが紹介してくれるかもしれませんけど、役にたつとはおそらく言えません。
画面上に「エヴァ初号機だけが実働可能な状態においてなぜ弐号機を実験する必要があるのか」というような文章を出してタイプするソフト、考え付きますか。
「山道を登りながらかう考えた。 智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。意地を通せば 窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 」これタイプの勉強に使いたいですか。
こういう文章は陳腐化しますし、レベルを設定してだんだん複雑で漢字変換が困難なものにしていく例題をつくるとすれば徒労ではないでしょうか。
そもそも、この文章の訓練でさっさと入力できるようなビジネス文書ありますか。
「草枕」と同じことを書いてビジネスは成立しますか。
大体どこかで挫折するような教育ソフトだったら、誰も支持しません。
初心者レベルで達成感があるようなところで止めておかないと、売れないです。
やらなければならないのは実際のトレーニングです。
1行ずつで改行しているような文章をタイプするという訓練をする必要があります。
これはコツがあって、文章の意味を捉えながらやらないと、出来はよくなりません。
英文タイプだって、A quick brown fox jumped over the lazy dog.の練習だけで80ワードなんてできないでしょう。
これは全部の指を動かすトレーニングにすぎなくて、文章の意味はあると言っても何を言いたいのかわからない内容です。
英文タイプはケネディの就任演説だとかテニソンの詩で訓練する人が大量にいました。
私らの若いころは、まず英文タイプの練習をしたものです。そうしなければ論文なんて書けなかったから。
ケネディの演説だと、We observe today not a victory of a party・・・となりますが、このとき一呼吸でWe observe todayまでやることができなければ実力になりません。
まさかWe observeとやってtoday notとタイプしていたら、それは英語を理解していないということになります。
単語ではなく文章のタイピングは、その文章の流れを先読みしたりしてやることですので、同時通訳的訓練が要るのです。
速読の訓練とも似たことです。
一文字一文字みながら入力していたら、早くなんてなりません。
日本語のタイプの場合は、漢字変換がからまりますから、この意味は非常に強くなります。
「二閣僚の交代で停滞している国会再開のために重要法案に遅れがでていることを解消するため安倍首相は法案の優先度の考慮をする必要が発生した」
というような文を入力しようと思ったら、漢字変換の齟齬を起こさないためにはいくつかのスパンにわける必要があります。
漢字変換にミスをつくると、カーソルを戻したり変換枠を設定しなおしたり、最悪全部消してタイプしなおしをする必要がでてきます。
「ために安部首相は」というブロックを作ったら、事故がおこるかもしれないから、「解消するため」でひとつ、「安倍首相は」でひとつにしますよね。
こうなったらもう速いも遅いもなくなります。
だから、意味のスパンを捉えながら、タイプするわけです。この話は単純ですからいいですね。
昔のワープロの漢字変換機能はひどいものでしたよ。辞書に入っていないとなんだと思う漢字を勝手に組み合わせてやるものでしたから。
だから、清水義範さんなんかの小説で、誤変換だらけの文章で一作、なんていうものが成立したのです。
いまはそのレベルは異常にあがり、つい最近出てきた用語でも、かなりの精度で間違いなく変換可能です。
特に固有名詞系は軽業です。
おおともよしひで、とやって変換したら一発で「大友良英」がでてくるなんて言うのは、誰があの作曲家の名前を辞書に登録しただろうと思うくらい。
ちなみにさっきの文章ですけど、「かいしょうするためあべしゅしょうは」で変換すると「解消するため阿部首相は」となったりしますが、「あべしゅしょうは」、とやると「安倍首相は」が出る可能性が高い。
もちろん一度安倍首相というもので確定させれば次回は無条件で一番に安倍首相と変換する、学習機能はありますけど。
こういう、漢字変換の癖も手に覚えさせておくと、どんどん文章はタイプ可能になります。
そういう時代ですから、たとえば新聞記事でもざくざくタイプする練習をしてみてください。