現在の気候が続く限りは枯渇しません。なんとならば、くみ上げた分は供給されるからです。
アイスランドあたりで海水が凍るとき、冷たくて塩分の多い海水が下へ落ちていきます。
理屈はわかりますよね。氷は真水ですから、凍る時自分の中に含んでいた塩分を周辺に押し出します。周辺の海水はそれを受け取りますので、塩分は濃くなる。
また、氷水に塩を混ぜると温度が下がります(小学生のとき、試験管の中の液体を凍らせてアイスキャンデーを作るとき、外側の氷に塩を混ぜた)。
冷たくて塩分が多い液体は他よりも重いので落下していきます。余談ですがそのルートにいた生物は凍ったりします。
そうやってできた冷たく塩分の多い海水が、深層海流となって、何万年もかけて世界各地に散っていって、地球の海水を、ひいては地球の気温を一定枠内におさめているのだそうです。
海面近くの海水は風の影響を受けます。季節風や台風などの影響で、陸近くの海水が沖側へ流れると、空白部分を補うためにそこへ深層から海水がわき上がってきます。これが「湧昇流」です。湧昇流は海底の栄養素を含んで上がってきますので、植物プランクトンが大量発生し、それを食べて動物性プランクトンが大量に生まれ、それを・・・ 。そこが有効な漁場になります。
こういう過程で表面の海水(太陽の関係で熱い)と深層水(冷たい)が混じって、海水の温度を下げ、おかげで気温が一定枠に収まってきたわけですが、別な見方をすれば、湧昇流は、「深層水をくみ上げている」のと一緒の現象です。それも大規模に。それが古来あちこちで起きてきたわけです。
そうやって、湧昇流によって減った深層水の所へまた深層水が流れてきて補うというサイクルが定着して、問題がなかったわけですので、人間がくみ上げる程度の分量なら、深層水は枯渇はしません。
問題は、地球温暖化などによってアイスランドあたりの氷を作る能力が減ると問題になります。深層海流が途絶えます。途絶えれば、そのうち、湧昇流などの自然現象により、深層の海水温も表面の海水温も同じになるはずです。
昨今、北極の氷が溶けて、北極経由の航路ができつつあるらしいのですが、そんなニュースを聞くと、ヤバいなと思います。