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飛行機主翼断面の形状についての初歩的疑問
初期の複葉機などでは上に湾曲した平板のようなものが多いと思いますが、のちに出てきた層流翼などは上下に膨らんだ形になっています。竹トンボの断面は層流翼のような形より複葉機時代の上に湾曲した平板状の方がよく飛ぶように思うのですが、何か根拠があるでしょうか。
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No.4・5です。No.5にお礼の後補足を頂きましたが、 >紙を上面に湾曲させると見違えるように上昇性能が向上するのは、空気を >押す効率が増すからではないかと想像していました。 「効率」という表現を使っていいかは疑問ですが、湾曲(キャンバー・矢高、 これは本来翼厚の中心をつないでいった線で、これが翼弦線から離れている程 「キャンバーが大きい」ことになります。厚みのない、薄い平板から作った翼の 場合は上面の湾曲がそのままキャンバーに相当します。)が大きい方が発生 揚力は得られます。これを実験的に体感されているものと思います。 先回答で使ってきたサイトデータからも言えます。 ここでは「紙」を想定して近くなるような極力薄い翼型を選んでみます。 湾曲のあるエップラー367では、 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=e376-il Re=50000でも迎え角5°で「1.0」の揚力係数が得られます。 一方キャンバーの無い「対称翼」では、 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=naca0006-il http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=goe443-il 同じ迎え角5°でもCL「0.6」に満たず、10°に達する前にそれ以上 伸びない、つまりは「失速」に入っていくことが解ります。これ以上 には増やせないのです。 しかしキャンバーの大きい翼型というのは同時に低Re数領域での抗力 増加も大きく、「効率が」いいと言っていいかは解りません。 飛行機の主翼・翼型で効率というのは「いかに少ない抵抗(抗力)で いかに揚力を得るか」、実用粋あるいは最大で揚抗比が大きいかという ことになり、延いては航続率につながるのですが、「竹トンボの上昇」 に関しては、回転が減らない内に高度獲得をする目的ではより揚力発生 の大きいものが有利なのかもしれません。 竹トンボでなく継続的に回転を得る実機ヘリコプターの例ですと、 (ベル社AH-1コブラ) 前々回理由も書いた様に対称翼です。 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=b540ols-il しかしこれは、多分1000rpmに満たない、直径も10~20cm程度と 思われる非常にレイノルズ数の低い竹トンボにそのまま適用出来ない のは前述のとおりです。想像では、竹トンボにはより剛性のある薄い 材料で前回の低レイノルズ数向きの翼型を模倣するのが好結果なの ではないかと考えます。
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- funflier
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No.4です。元が「竹トンボ」の話なのでこの方向で再度考えたいと思います。 ついでに前回のグラフデータの見方を通して今回の件を考えます。 先にご紹介したサイトには翼型を選ぶと(複数表示された状態から右の 「Airfoil detail」を選ぶと)詳細ページが表示されます。ここでの グラフは4つあり、 左上「Cl/Cd」は 揚力係数と抗力係数の比を 右上「Cl alpha」は 迎え角と揚力係数の関係を 左下「Cm alpha」は 迎え角変化における風圧中心変化の関係を 右下「Cd alpha」は 迎え角と抗力係数の関係を 表しています。またその上の「Max Cl/Cd」は各レイノルズ数においての 最大揚抗比(=滑空比)を表しています。 ここで見逃せないのがレイノルズ数の問題で、これも翼型に関わってきます。 単順に「cm単位(0.1m)の大きさで人間が歩く速さ程度(1m/s程度)」 ならレイノルズ数は約7000、10の3乗オーダーです。航空機有人実機のような 大きさなら「m単位の大きさ、秒速数十m~数百mの速さ」なので、これだと 10の6乗オーダーになります。ここで翼型のレイノルズ数での特性を見ると、 例えば層流翼、NACA6系列で最も厚い部類のNACA 63(4)-421では http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=naca634421-il グラフでも低レイノルズ領域(青い、Reynolds # 50000の線)では揚力係数 が極端に低くなり、抗力係数も高くなっています。最大揚抗比(Max Cl/Cd) も「3.7 at α=11.5°」と悪いです。 一方、同じ6系列でも最も薄いNACA 64-206 では http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=naca64206-il レイノルズ数(Re)に対し、各パラメーター変化がさほどありません。 これがラジコンでもインドアサイズ、レイノルズ数10の5乗オーダー程度では 厚みを持たない平板翼のほうが良い、等と言われる所以で、昆虫の羽根が平板 なのも同様理由によります。竹トンボの回転数も大きさも計ったことはあり ませんが、間違いなく10の4乗以下程度のレイノルズ数ですので、この領域 で性能の良い翼型でないとならないのは間違いありません。 と、なると竹トンボサイズに実機のような「厚み」を持たせるのは不適当 と言えます。これも「>何か根拠があるでしょうか。」の答えのひとつに なると考えます。 ただ薄い方が良いといっても、例えば揚力を重視すると、大きなキャンバーを 持つ翼型でゲッチンゲン462がありますが、 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=goe462-il 「Cl alpha」グラフから、通常使われる迎え角は0°~10°程度とすれば この時5°(横軸)で揚力係数(縦軸)は「1.6」あります。最大揚抗比も Re数10^6では100を超えます。しかしRe数が下がり50000領域では揚抗比 は 8.9 とかなり性能が悪化します。 ここで低レイノルズ数翼型(low Reynolds number airfoil)とつく エップラーE63を見ると、 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=e63-il 高~低Re数でも変化が少ないことが解ります。模型サイズでは揚力係数より こうした低Re数向きの翼型を選ぶべき、ということになります。 竹トンボに何が最適かは私は解りませんが、揚力係数の大きい方が最初 与えた回転速度、ブレード面積が同じなら L=1/2・ρ・V^2・S・CL の 揚力式から「CL」が大きいことになるので、竹トンボの発生推力は増して 上昇が良いように感じると思います。ただ同時に「抗力」が大きいことは 回転を減じるのも早い、ということになるので滞空時間と上昇力の妥協点 がどこにあるかを探る、という問題になってくると思います。 竹トンボは上昇時は「プロペラ」でもあり、こうなるとヘリコプターの ローターや飛行機の翼としてだけでなく、直径分布でのピッチ変化も持た せないと有効迎え角が均等にならないという問題も出るのではないかと 思います。
お礼
御懇切に説明いただきありがとうございます。私には猫に小判のような高度のお話と思いましたが、お礼の気持ちとして少し書かせていただきます。タケトンボのローターを紙を筒状に巻いたものをつぶして作ってみると上下に膨らんだものは、明らかに上昇性が悪いことがわかりました。恐らくご説明と一致した結果ではないかと想像しています。また回転軸近くのピッチと末端部のピッチの違いも重要であることはご指摘のプロペラであることと一致するものと理解させていただきました。
補足
紙を上面に湾曲させると見違えるように上昇性能が向上するのは、空気を押す効率が増すからではないかと想像していました。
- funflier
- ベストアンサー率80% (375/467)
>複葉機時代の上に湾曲した平板状の方がよく飛ぶように思うのですが ある意味ではその通りです。揚力は上面の負圧と下面の正圧で得られて いるので、上面は湾曲(キャンバー、カンバー)が強くて、下では空気が よりせき止められる様になった形の方が多く揚力は得られます。 実際、現在のジェット旅客機でも着陸時は主翼前縁は「スラット」、後縁 は「フラップ」を出し、特にフラップは40~50°程も折り曲げて翼全体の 湾曲を大きくして降りてきます。しかし、巡航中はそうではありません。 着陸時の可変して得られた翼型は、「揚力」は大きく得られますが、 (揚力係数が大きい、スラットとスロットの働きで迎え角を大きくとれる) 同時に「抗力」も大きい状態です。着陸前エンジン音が大きくなるのも そのためです。 >何か根拠があるでしょうか。 その用途に適した翼型という選択理由は多種多様です。旅客機の例ですと 高速で音速付近まで飛ぶので衝撃波発生を遅らせる、また抗力の少ない 翼型であることが求められます。同様理由で遍音速以下でも高速重視や 少ない抗力を目的とする機体では層流翼を採用したりします。 よく「揚力の簡易説明」に登場するクラークY型がありますが、 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=clarky-il これも上面だけが湾曲し揚力係数は大きいのですが、採用しているのは 実機でも軽飛行機の一部、ラジコン飛行機でも入門機くらいです。 ラジコン飛行機でも明らかに解りますが、この翼型は風圧中心移動と 揚力傾斜が大きく、速度(風の向きでの相対速度)でも勝手に上昇して いったりします。実際に多用されるのはこうした準対称などと言われる 翼型です。飛行時の特性も大きく関わってきます。 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=n2415-il またヘリコプターのローターブレードは対称翼が多く使われます。 http://airfoiltools.com/airfoil/details?airfoil=naca0010-il 一つの理由は風圧中心移動が少ない、つまりは迎え角を変えても「捻る」 力が発生しにくいことです。細長いローターではこうしたことも選択理由 になります。背面飛行前提の曲技機でも対称で、高いGに耐えるため 厚翼にする、前縁半径が大きく急に失速しない翼型を選ぶなどします。 このように、翼型の選択は用途(速度域、レイノルズ数、特性、等々)で 変わってきます。添付してきたサイトにも相当数の翼型があるのもそのため で、「揚力(揚力係数)」だけでは決まらないのです。 グライダーの様に、低速で飛ぶ用途には下面が凹んだ、代表的なエップラー E61-E62のような翼型も使われます。 http://airfoiltools.com/search/list?page=e&no=7
お礼
いろいろ勉強の材料を与えていただいたので少しずつ学ばせていただきたいと思います。ありがとうございました。
湾曲も上下に膨らむのも、ある程度速度が速くなると、あまり抵抗は変わりません。むしろなだらかになっているほうが乱流は減り、安定して飛べます。 翼に生じる乱流は厄介で、複葉機ですと上下の翼を丸くつないでしまっている設計の機体も見られます。翼端で大きくなる乱流を減らす狙いがあります。 さらに旅客機・貨物機なんかですと、膨らんだ主翼に燃料入れたりします。そういう設計上の必要性もあるでしょうね。 一撃離脱に特化した高速性重視の戦闘機ですと、手で触れたら切れてしまう、と言われてしまうような薄い主翼設計もあります(F104など)。この場合は、真っ直ぐ平板な主翼で、湾曲はありません。
お礼
いろいろ難しいことがあるようですね。ご教示ありがとうございました。
- mpascal
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実際の飛行で、乱気流等で、背面状態になった時に、湾曲型の翼断面では、一気に失速して立て直しが聞かない等の不都合もあるのでしょう。 それに湾曲型の約断面は高速の飛行には向かないと思いし、翼厚が薄いと強度も出せなくなります。
お礼
そういうものなのですね。ご教示感謝いたします。
- trajaa
- ベストアンサー率22% (2662/11921)
航空機の飛行速度(対気速度)が増大すると、翼表面の空気の流れに乱れが生じるようになる 複葉機とか竹とんぼの様に、速度が小さい場合はそう言った事を考慮する必要がなくて ソレよりも如何に揚力を効率よく発生させるか?と言う観点から翼の形状が考慮される 高速機になれば、揚力よりも抗力とか乱流とかそう言ったモノを無くす・減らして効率よく飛行する、又は安定した飛行を行うという観点で翼の設計が行われる
お礼
明快なご説明をいただきありがとうございました。
お礼
大変勉強になりました。ご教示を参考にさせていただいてよく飛ぶタケトンボを作っていきたいと思っております。