まず、これは基本的なことなのですが、政治学の用語として「中選挙区制」というものはありません。
選挙区の区別というのは、「大選挙区制」と「小選挙区制」のどちらかであり、日本の衆院選でかつて行われていた「中選挙区」というのは、「大選挙区制」に該当します。
で、「大選挙区制」と「小選挙区制」の違いというのは単純です。
「大選挙区制」は、1つの選挙区から複数名の当選者が出る。
「小選挙区制」は、1つの選挙区から1人だけ当選する。
です。
かつて衆院選で行われていた中選挙区では、3人~5人が1つの選挙区から当選するシステムですので、これは完全に大選挙区制と言えます。
それなのに、なぜ「中選挙区」といわれていたのか、というと、参議院議員普通選挙の選挙区が、都道府県を1つの選挙区にして行う選挙であるのに対し、衆議院の場合は、1つの都道府県を複数の選挙区に分けており、どちらも「大選挙区」では紛らわしいから、という理由に過ぎません。
大選挙区制は、マイノリティ政党であっても、選挙戦術によって当選者を出すことが出来るが、少数政党が乱立してしまう、ということが言われます。
これは、中選挙区制でも全く同じです。
日本で、自民党が長期政権をとることができたのは、単に、日本社会党にやる気が無かったからです(1960年代から、日本社会党は衆院選に議会の過半数に達するだけの候補者を擁立しておらず、全員が当選しても政権を取れない、という情けない状況でした。そして、自民党だけが過半数を超えるだけの候補者を擁立していました。なので、自民党の単独政権が長期間続き、他の党との対立が無い代わりに、同じ政党の中で争っていたのです)