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受精卵から個体になるまでのプロセス
- 多細胞生物は細胞の分裂によって数を増やし、遺伝子の発現が調節され異なった機能を持つようになる。
- 発生の進行により細胞が分化し、神経や骨などの組織を形成し、個体が形成される。
- 受精卵から個体になるまでのプロセスでは、細胞の分裂と分化、遺伝子の発現調節が重要な役割を果たす。
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http://www.cdb.riken.jp/jp/05_development/0501_development01.html たった1つの細胞である受精卵が、細胞増殖、分化、形態形成といった過程を経て組織化された多細胞体である成体をつくり上げる過程を発生と呼び、その仕組みを明らかにする学問を発生生物学と呼びます。発生プログラムはそれぞれの種によって異なるため、多様な形と機能をもった様々な生物が生じます。しかし発生生物学の研究により、発生プログラムの多くは共通であり、わずかな違いが種間の差を生じることが分かってきました。この生物の多様性とその背後にある共通性が発生生物学者を魅了してきました。 ここでは受精卵が成熟した個体になるまでの主なプロセスについて解説します。ここに挙げる生物メカニズムは多くの生物で共通ですが、生物の多様性ゆえにある生物種における現象を正確に記述しているものではありません。また、これらの生物現象は単独で起こるものではなく、それぞれの現象が複雑に相互作用しながら協調して進んでいきます。自然は現存する状態を無限に変化させる能力をもっている、ということを発生生物学は教えてくれます。 フランシス・ヤコブは、「細胞はどれも2つに分裂することを夢見ている」と言った。細胞は核内の遺伝情報を複製し2つに分裂することで新たな細胞、異なる機能をもつ細胞を生み出し体に供給する。1つの細胞が分裂してその内容物が2つの細胞に分配されるこの過程は細胞周期と呼ばれ正確に制御されている。たった1つの細胞である受精卵が細胞分裂によって約60兆もの細胞からなるヒトの体を形成するメカニズムを解明するうえで、細胞分裂の研究は重要な位置を占めている。 多くの場合、細胞分裂によって元の細胞(母細胞)に似た性質を示す2つの細胞(娘細胞)が生じる。一方で母細胞とは異なる性質、機能をもった娘細胞を生み出す細胞分裂もあり、これにより体を構成する多種多様な細胞が形成される。細胞が神経細胞や皮膚細胞といったように特定の性質、機能をもつようになることを分化と呼ぶ。体を構成する大多数の細胞はこのように分化した機能と構造をもっているが、幹細胞や前駆細胞といったいくつかの細胞は未分化、もしくは分化の程度が低く、細胞分裂によって異なる機能をもつ娘細胞を生じる能力を保っている。たとえば造血幹細胞と呼ばれる幹細胞は赤血球や血小板といったすべての血液細胞を生み出すことができる。また、胚性幹細胞(ES細胞)は全能性、つまり体を構成するすべての種類の細胞を作り出す能力を備えている。このように複雑な構造と機能をもつ生物の発生は、細胞の分裂能力と分化能力に支えられている。 細胞同士は多様な分子機構によりお互いを認識、識別することができる。これにより異種の細胞が不適切に混合することなく同種の細胞が集合し、皮膚や肝臓といった組織や臓器を形成することが可能となっている。 細胞認識と細胞接着は密接な関係にある。ある種の細胞は細胞表面に接着分子を発現し、同種の接着分子のみと結合することで細胞の認識と接着、集合を行っている。このような細胞接着の分子機構により、特定の組織や臓器の形成に必要な細胞同士の集合が起こる。多くの細胞接着ではカドヘリンと呼ばれる分子ファミリーが機能していることが知られている。接着分子であるカドヘリンは他の細胞が発現する同種のカドヘリンに選択的に結合することで細胞の選別と接着を行っている。カドヘリンによる細胞接着のメカニズムは、最も複雑と考えられている神経ネットワークを含むより高次な構造を形成するのに役割を果たしている。 細胞は様々な方法によって受動的にまたは能動的に移動することができる。発生過程で最初は扁平もしくは球形といった単純な細胞の塊が細胞移動によって複雑な構造をもつ組織を形作っていく。発生生物学者は、細胞の鞭毛による移動や床を這うような移動、さらにはシート状の細胞の集合体の移動など、多様な細胞移動の様式に注目して研究を行っている。 発生過程の体をみると、細胞がまるで意思をもつかのように長い距離を方向性をもって移動している様子が観察される。例えばヒトの神経系では、神経細胞が1メートル以上も軸索を伸ばし、手や足の特定の位置に神経終末を形成している。これらの背景には誘引分子によって特定の細胞を適切な方向に移動させ、さらに目的地に細胞を維持する誘導システムが存在している。 細胞は様々な方法によって受動的にまたは能動的に移動することができる。発生過程で最初は扁平もしくは球形といった単純な細胞の塊が細胞移動によって複雑な構造をもつ組織を形作っていく。発生生物学者は、細胞の鞭毛による移動や床を這うような移動、さらにはシート状の細胞の集合体の移動など、多様な細胞移動の様式に注目して研究を行っている。 発生過程の体をみると、細胞がまるで意思をもつかのように長い距離を方向性をもって移動している様子が観察される。例えばヒトの神経系では、神経細胞が1メートル以上も軸索を伸ばし、手や足の特定の位置に神経終末を形成している。これらの背景には誘引分子によって特定の細胞を適切な方向に移動させ、さらに目的地に細胞を維持する誘導システムが存在している。 胚発生では上述のような様々な生物現象が協調的に働いている。生物はその複雑さにかかわらず、例えば比較的単純な線虫とより複雑なマウスを比較しても、胚発生の過程では動物界に共通する多くのメカニズムが存在している。受精や初期の細胞分裂、原腸形成や、さらには体を形づくるための青写真となるボディープランの出現などがその例である。それぞれの生物種がもつボディープランに基づいて体軸や体節、器官の形成、神経系の構築が行われる。胚発生は分子、細胞、組織あらゆるレベルで絶妙なバランスと相互作用の元に成立している。発生生物学者を魅了し続けているのは、蝶やサメ、ヒトに至るまで 生物種にかかわらず、たった一つの細胞である受精卵に体を形成するためのすべての情報が入っているということかもしれない。 近年の分子発生生物学の進展やゲノムに関する知識の蓄積により、私たちは動物の進化のシナリオをより現実的に描けるようになっている。多くの遺伝子が種を超えて保存されていることに加え、発生プログラムの実体となる分子カスケードのレベルでも重要な共通性が見出されてきた。こういった発見は、パターン形成のメカニズムが分子レベルで保存されていることを示し、種間における構造の相同性や類似性と関連付けることが可能になっている。例えば、コウモリの羽とヒトの腕は発生プログラムのわずかな違いによって生じ、どちらも多くの動物で見られる肢の発生を基礎としている。一方で、カメの甲羅のように他の生物と相同性が見出せない全く新しい構造が、動物の進化の過程で頻繁に出現したようである。発生は多くの事象が階層的にプログラムされたものであり、そのキーステップを担う分子の機能がわずかに変化することで過激な構造変化が生じることを発生生物学は明らかにしている。またストレスタンパク質をコードする遺伝子の進化のおける重要性も示唆されている。ストレスタンパク質は、発生に必要な他のタンパク質に起きた変異を緩衝する役割を果たし、結果的に膨大な数の対立遺伝子を生じることで新たな表現型の起爆剤となっているようだ。 このようにして、発生生物学は集団遺伝学などをも取り込みながら、進化の理論的側面を明らかにするとともに、新たな表現形を生じた遺伝情報の変化を分子レベルで指し示そうとしている。
お礼
ありがとうございます。200字程度で簡略に説明したいので概要を把握してみます。