電気代が二倍と企業の海外移転という質問者様の前提を受け入れたうえで回答しますと、わたしの意見は「原発事故を繰り返すよりマシ」です。
いまだに福島第一の事故に関して真相究明に及び腰な東京電力の姿勢と、充分な安全対策もないままに「安全だ」として大飯原発を再稼働させた政府の対応を見るにつけ、現状で安全は確保されていないと判断しています。これまでは原発を稼働させるために「原発は安全だ」としてきた安全神話がまかり通ってきましたが、もはやそのようなことは許されません。「福島第一をくり返してはならない」のが譲れない一線です。
原発の稼働賛成・推進派の方の中には誤解している向きもありますが、原発反対派は経済的コストがないと思っているわけではありません。その認識は個人ごとに違うので、どこまでその厳しさをわかっているかは一概に言えませんが。
討論型世論調査の全体集会の動画が公開されていますが、それを見ると、意外なほど原発比率0%の場合の経済的なコストの大きさ、再生可能エネルギーの厳しい現状が説明され、同時に原発の安全性の確保が難しいことと核廃棄物の処理に目処が立たないことも明かされています。全体集会自体はとても冷静な雰囲気で進行していましたので、ネットでいわれる「プロ市民」に乗っ取られたものではないと見なしています。
これらの説明を踏まえて、原発比率20~25%案と0%案の人は意見を変えず、それ以外の中間派が0%案へと意見を変えています。普通の人は賛成・反対の両方の言い分を聞かされると、反対に傾くのです。賛成派が安全を軽視する姿勢に不安をおぼえるからだろうと推測しています。
一昨日の朝日新聞『原発とメディア』で、電力会社の普及開発関係費(一般企業でいう広告・広報費)が年間およそ1000億円だった実態が紹介されています。電源三法交付金は毎年800億円超であったことは公開されています。加えて、地元自治体や政治家への寄付金はいくらなのでしょうね。自治体によっては収入の半分近くが電力・原子力関連の寄付金だったという報道もありました。自民党への個人献金の72.5%が電力会社の役員・OBからのものであったことも周知のものとなっています。
こういうデタラメな金の使い方がなくなるだけでも、日本にとっては良いことでしょう。単なる金の問題だけでなく、わが国ではみんなが反対しにくいもっともらしい理由をつけては国を喰いものにする行為が横行してきました。電力会社の場合は、結局はすべて利用者の電気料金でした。独占企業であるかぎり、払う側にとってこれは選択の余地のない税金と変わりません。
目的と行動が対応しないことが多すぎるから、無駄も積み上がるし、解決すべき問題自体がいつまでも残ってしまうのでしょう。
先ごろのNHKスペシャルで紹介されていた、復興予算が被災地と関係のない事業に山ほどつぎ込まれている事実など、「相も変わらず」としか言いようがありませんでした。
原発の稼働に賛成する人たちは、こういう構造も込みで原発を維持したいのだと見なしています。わたし自身がこの構造に組みこまれた利益享受者だったら、どんな理由をつけてでも原発を稼働させようとするかもしれません。
じつはわたしは今年の春ごろまで、原発に必ずしも反対しておりませんでした。まさに電力供給の安定性や燃料費の問題を考えれば、必要な安全対策を講じたうえで原発を稼働させることは致し方ないと考えていました。しかし、口先の反省に終始している電力会社と政府の頼りなさ、そして原発稼働賛成・推進派の論調に接して、すっかり反対派になってしまいました。
要するに、討論型世論調査の中間派と同じ推移をたどったわけです。
被災者の苦難を聞くにつけ、「このようなことは何があろうとくり返してはならない」と考えます。そのために質問者様が前提にしていることがあったとしても、です。もっとも、この前提自体が極端だと思っていますが、それはご質問に含まれませんので問題にしません。
あと、核廃棄物の問題を考えても、原発はすでにオワコンだと悟るべきと心得ます。
というわけで、いま考えるべきは原発を維持するか否かではなく、原発を停止させたときのコストをいかにして減らすかだと考えています。
お礼
ありがとうございます!120%安全なんて、この世にないですもんね。二度と福島のような事故が起きてはならないです。貴重な意見ありがとうございます。