- 締切済み
日本における生命科学系研究職の実態
はじめまして、英国で生命科学系のポスドクをしているものです。研究所で10年ほど勤務しており、それなりの実績(論文)と特許を複数点発表しております。大学との契約もパーマネントになり、永住権もとって英国での生活にそれほど不安と不満はありません。 勤務当初から日本の大学などから当研究所にポスドクの応募をしてくるヒトの相談にのったりしているのですが、彼、彼女らの現状を伺うと最近日本でのポスドク事情が思っている以上に酷いのかな?と感じる事が多くなってきました。例えば時給制で最低限の生命保険や退職金や年金もつかないとか、休日も規定に無いとか、契約も6ヶ月だとか1年だとか、特認とか何とか、どれもハッキリしないような感じに聞こえます。私もボスや所長などに彼らの履歴書のいい点をできるだけ細かくアピールしたり、英訳したり、フェローシップの申請などできる限り協力してコチラでの職を得られるようサポートしていますが、残念ながら当然全員は採用されません。でも気の毒でなりません。なぜこちらでの扱いとこんなに差が生まれる(た?)のか解りません。 また私の周りでは7割ほどの日本人ポスドクが5-8年の勤務後、日本(もしくは諸外国)の研究職(PI)について帰っていく方々がおりますが、3割ほどの方々は私やその人たちより遥かに優秀な実績を出しているのに日本での研究職に応募しても面接にすら呼ばれないと絶望しており、日本のアカデミックにはもう職は残っていないと嘆いております。もちろん実績だけ良ければいいとは思いませんが、彼らの採用されるのと採用されないのの差はなんなのでしょうか? 現に職を得て帰っていっているヒトが複数いるので職が本当にないという事は無いと思うのですが。 日本でポスドクをやっている同年代ぐらいの近しい友人がいないので現実がどういうものか想像つきません。私のこの分野での日本の知り合いは恩師にあたる年代の人々か、共同研究者のPIなのでこういった砕けた質問がちょっと聞きづらく、今回利用してみようと思います。 詳しい方、詳しく無い方、よろしければ幅広いご回答を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
- みんなの回答 (3)
- 専門家の回答
みんなの回答
- browntraut
- ベストアンサー率72% (72/99)
原因その1:受け皿が小さすぎる。 大学のポストには限りがあり、また、国家予算の削減対象となっており、最近は教授が退官すると その部屋ごと取り壊しになるケースが多いです。そうなってしまうと、パーマネントの筈の准教授も野に放たれることがあります。結果、流浪人口が増えていきますね。 原因その2:ドクターは資格ではない。 ドクターは資格ではないので、持っているからといって就職が楽になる訳ではありません。 現に一般企業からの研究職の募集はマスターまでが主です。要は、ドクターまでいって専門が変に固まってしまったり、3歳余計に歳をとると、融通面がなくなるということなのでしょう。 原因その3:ねたまれる存在。 ドクター=高学歴な訳ですから、意外とねたまれます。同じドクターからでさえ、出身大学とか論文の種類、数が優秀すぎると採用側から「我々のところでは勿体ない」と本心ではないことを言われて、採用を断られます。この場合は、採用元のボスの大学、業績よりも多い場合によく起こると思います。鼻っぱしが強い奴が来て、全うな事を言われ、舵取りを奪われても困るというのが本心です。OB大学への採用率が高い理由はそこです。 原因その4:理系の能力だけでは生きていけない。 こってこての理系しか知らないでここ10年程生きてきたけど・・・なんて人は要注意です。実験だけうまくてもダメです。理系で生きていくためには、実験はそこそこうまければよく、そこから出てくる実験データを考察する能力、文章を書く能力、対人能力、プレゼン能力が同等以上存在しないとアホ扱いされます。特に業績がいくらよくても、プレゼンで滑舌が悪いと、能無し評価されます。今まで、実験ばっかりやってきた人にはとんでもない猫だましとなります。 原因その5:教授は人格者ばかりではない。 ラボとは小企業のようなもので、大学(研究課長)などの意識が浸透しづらい環境にあります。かなりの上下社会であり、おしとよしな教授は私の知っている限りほとんどいません。大体は猜疑心が非常に強い人が多いです。逆におしとよしな人は教授にはなりにくいでしょう(1人いますが、うだつがあがらない教授として有名です)。教授会では異端児にならないようにし、常に社会にさらされている訳ではなく、下々にはへりくだる必要がないので、傲慢になりがちです。下からは持ち上げられぱなっしですからね。そんな教授(採用元)に正しいことを言って対立しても、自分の意に沿わないと良い顔はしません。要は、教授は従う人が好きなのです。要は、同調できる人材が望まれるということです。ポスドクはそういう能力を培っていないので、日本ではやっかいなのです。海外では比較的、実力があれば認めてくれそうですけどね。 こんなところでしょうか。
- hiddenleaf
- ベストアンサー率63% (42/66)
アカデミックに関してはNo.1様のおっしゃる通りです。 生命科学系でしかも日本でやりたい研究をしたいのなら、この現状を受け入れるしかありません。 民間への就職に関しては、私からしたら甘えに思えます。 民間企業に就職するということは、やりたいことを捨てるということです。 企業の歯車となり、自分の属する企業の発展こそが至上の喜び。 なんてことは言い過ぎかもしれませんが、、 それくらいの意欲がなければ弾かれるのも仕方ないと言わざるを得ません。 あなたはなんの為に就職したいのか、一度聞いてみてはいかがでしょうか。 「安定した金を貰って興味のある研究をしたい」ではきっと企業は振り向いてくれません。 ポスドクまで行っている方は大まかに3つに分類されると考えています。 1. 研究が好きで好きで仕方ない人 2. 就職したくなかった人 3. 就職できなかった人 質問者様の周りは恵まれているようですが、今の日本には3が多い印象を受けます。
お礼
回答ありがとうございます。私の周りの日本に帰ろうとしている方々は日本の民間企業には応募していないのでアドバイスする機会が無いかもしれませんが、日本の企業に就職するにはそういう側面もあるかもしれないという事は参考になりました。 確かに私の周りで就職したく無かった人、就職できなかった人は殆どいない様に思われます。むしろ、私のいる研究所に入れなかった人、ついていけなかった人が民間に就職していっている印象があり、研究する環境としては非常に恵まれているのでしょう。ただ、私のいる研究所も大学にありますが正確には民間に分類されるので、根本的に英国と日本の民間の感覚は異なるのでしょうね。
- Wakefield_Blan
- ベストアンサー率80% (4/5)
すごく詳しいわけではないですが、少しだけ回答させていただきます。 まず、日本では2000年代にポスドクの職を量産しすぎて、受け皿となる助教や准教授などの大学のポストが不足していると聞いています。アメリカではベンチャー企業もそういったポスドクの受け皿になっていますが、日本ではそんなにベンチャー企業が発達していませんので、余ったポスドクが大学のポストに群がるような状態になります。さらにこの不況ですから、今更大学のポストもそんなに増えることはありません。どの社会でもそうですが、応募人員がたくさんいると、採用する側は余裕ができて劣悪な条件での応募が行われます。特任といった中途半端なポストは一つの解決策なのかもしれませんが、応募者にとっては劣悪な条件で採用されることになり非常に残念なことです。 >彼らの採用されるのと採用されないのの差はなんなのでしょうか? 業績だけでなく、コネも日本では非常に重要だからではないでしょうか。 政府は留学に行け行けと勧めますが、日本に帰るときの受け皿は不十分で自分の望む場所と異なる場所に帰らなければならないことも多々あると思います。
お礼
回答ありがとうございます。私も当事者ですしポスドク問題は人並みに把握しておりますが、難しい事は抜きにして結局需要と供給のバランスが崩れているという事でまとまるのかもしれませんね。 確かに、こちらでは基礎医学系、製薬系のベンチャーからマッサージ師まで幅広く転職していく方を見かけますが、日本国内の知り合いなどでは博士取得後、IT関係や公務員、教職など専門性を完全に変えなければいけない傾向があるように思えますのでNo1様のお答えは現実の感覚と合っているように思われます。 英国などではグラクソスミス、ウェルカムトラストなどを始め製薬系の企業、財団が非常に強いので色々なバイオ系企業の下地になっているのかもしれません。日本の様に政府一辺倒の基礎医学研究は業界そのものに限界があるのかもしれませんね。とはいえ、このような事態を招いてしまったのが政府の政策なのならばその分は責任を持って雇用を捻出していくべきなのでしょう。 また、英国などでは歴史上弱い立場の労働者が権利を色々勝ち取ってきた背景がありますので、ポスドクにかぎらず最低限の雇用条件のようなものが比較的高い水準で維持されるよう法律が整備されていると感じます。日本には派遣従業員の問題などをみてもこのような運動がおきにくい社会背景があり、雇用側がギリギリまでやれてしまうのかなとも感じます。 生命科学系での民間の力不足、労働者の権利の向上、少なくともこの二つが改善しないと根本的には改善が見込めないのかな?と考えさせられました。 コネに関してはでは根回しが足りなかったと理解することにします。 回答ありがとうございました。
お礼
回答ありがとうございます。やはり需要と供給の問題に行き着きますね。コレに関してはNo1様へのコメントで書きましたので割愛します。 2に関してはでは日本の民間企業では博士は資格として役に立たないと理解します。なぜなら海外の企業、研究所へ応募するには博士号は資格としての役割を果たし、分けないと誤解を生みそうですので。 3はなるほど、意外と気がつかない事かもしれませんがそういう側面があるのかもしれませんね。とても参考になりました。業績があっても謙虚に行く事が大事かもしれないと友人にはアドバイスしてみます。 4は全くその通りですね。海外では特にプレゼンの能力、コミュニケーション能力は日常評価の対象になり、個人的には海外で生きていくには最も力を入れるべきところと考えます。逆に業績たいした事無くてもこういった能力が優れている人の方が重宝されてチャンスも良く巡ってきます。ちなみに昔恩師に私は99%のハッタリと1%の勢いだと言われた事を思い出しました。つまり後者ですね、、、。 5もなるほど、思い当たる節が多々X2あります。では友人にも日本のアカデミックへ行くのであればひかえる様にアドバイスしてみます。残念なのはその少数にあたるであろう私の知っている人格者であり、表彰されたりする優秀な研究者でもある、一言で言うなら”頼もしい”教授、恩師達が近年ドンドン退官していっており、個人的には寂しい限りです。また海外では逆に実力が無くても同等に扱われてしまうので、長年論文もなにも発表しないようなポスドクが教授と対等のつもりで高校生並みの議論を話したり、大きな顔をして優秀なポスドクに先輩づらしてくるという問題もあります(笑)。 色々楽しく参考になりました。回答ありがとうございます。