戦略というのは英語のstrategyのことです。これに対応して戦術:tacticsという言葉もあります。さらに戦略の上位概念として教義,理念:doctrine, philosophyというものあります。
これらは基本的には「国家」がどのように生き残るか、というテーマを検討するときに利用される言葉ですので「国家戦略室」という名称は(原則的に)日本国がどのように今後世界の中で生き延びていくか、を考えてる部署、だといえます。
もちろん「生き延びる」ためには戦争も含みますが、それは一部分だけです。
たとえば第二次世界大戦後のアメリカ合衆国のdoctrine, philosophy、それを実現するためのstrategy、その中で個々の問題に対応するためのtacticsを見てみましょう。
概況としては、第二次世界大戦に参戦したアメリカはそれまでのdoctrineである「孤立主義」をやめて世界に大いにかかわる方向に転換していきました。なぜならアメリカのphilosophyである「自由主義」を脅かすソ連が台頭してきたからです。
そのため、対日戦争に関しても「日本を無条件に降伏させると共に、ソ連は戦後処理に参加させない」という方針を決定し、原爆投下などでソ連の対日参戦以前に日本を無条件降伏させることに成功します。
この「日本の降伏とソ連の排除」が戦争終了後の戦略であり、原爆投下はそれを実現させる為の戦術(手段)になります。
そしてソ連が崩壊し、現在に至るのですが、アメリカのphilosophyは戦後から一貫しています。
それは「自由主義を守り共産主義やその他の主義(イスラム原理主義など)からアメリカを守ると共に、世界中にある自由主義国家と協力して、世界の安定に寄与する」ということです。
このphilosophyを他の国が見ると「世界の警察=アメリカの軍事力」ということになります。
またこのphilosophyを実現する為にアメリカは全世界を視野に入れたstrategy(戦略)を取るようになっていきます。軍事的には日本などの同盟国に米軍基地を配置することや、世界中の海に空母や潜水艦を展開することなどです。ただしこれらの展開は戦略に基づいた戦術という立場になります。
それ以外にも戦略を実現する為に、外交的に同盟を強化したり、進攻した地域に親米政権を樹立したりもしますし、民間技術や資本の投資などで発展途上国が親米でなおかつ経済的に発展するように、努力したりもしました。
これらはすべて「自由主義を守る」という理念を実現する為の戦略であり、戦術であるわけです。
アメリカはこれらの原則理念はすべて独立宣言書に書かれており、それを憲法に投影して理念を代々継承しているといえます(もちろん、時代によって解釈は異なります)
日本の場合も憲法によって日本国の理念を規定しているといえ、特に9条は世界的に見てかなり異質なphilosophyであるといえます。
そしてこれらの国家理念は明文化されているのですが、時代に合わせてそれを実現する為の方策を考える必要があります。これが「国家戦略室」の意味です。
もっともそのような仕事を実際にしているかどうかは分かりません。。
お礼
奥深い回答を頂まして 大変勉強になりました。 国家戦略の見え方が ずい分変りました。有り難うございました。 日本の外交を眺めていて 「尖閣」 「竹島」 「北方」etc ヤレヤレいつも やられっぱなしのように見えるのは 私だけでょうか。 期待はしていませんが「国家戦略室」が うまく機能すると良いですね。